ううむ、強いて言うならば、濃厚な味を売りにしていた老舗ラーメン屋が、昨今の健康志向の影響を受け、やむなく薄味に変更し、それでも一生懸命昔の味を追求、研究している、といったところかも…… 今年のJAIAの一発目にシトロエンE-C4を乗りながら、原稿に書くべく内容を一生懸命生み出した言葉が上記のような陳腐さでなんとも申し訳ありません。と謝ったものの、とにかく内燃機関であろうがBEVとなろうが、シトロエンらしさが残ってなければ巨大ステランティスグループの中に、シトロエンというのれんが残っている意味はないではないか。ではシトロエンらしさとはなんなのだろうか?
まず失礼ながら、シトロエンにエンジンの良さなど求めてもあまり意味がないということは、BX、CX、2CVなどを所有していた「昔の」シトロエン愛好家からすればあまり意味がない。そんなことより大切なのは、乗り心地や、触れた時に心が和らぐような空間がそこにあるかどうか、そのことが大切なのである。
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だから逆説的にはなるが、BEVであっても乗った瞬間に、こりゃシトロエンだねと感じ、それが乗っている間も持続し、降りてからもああやっぱりシトロエンだわな、と思えたならば合格、そう思いながらシトロエンE-C4シャインに乗り込む。650万円以上の価格と聞くと、このダッシュボードのシボはなんだ、そっけないハードプラスチック素材なのか、天井素材は波打っていて、この仕上げはないだろう、という感想を抱く方も多いと聞くが、昔のシトロエン(例えばAXとかヴィザ)の内装からしたら、このシトロエンの内装に文句を言ってはバチがあたろう。シートももちろんBXやCXあたりと比べたら低反発素材の座椅子のようなレベルではあるが、ソフトな感じはするし、まったく文句のない座り心地ではある。
走り始めるとステアリングの感覚と路面をいなす挙動、そしてどこか慣れを必要とするようなブレーキのタッチは明らかにシトロエンであったし、1630kgというBEVとしてはまあまあ軽いほうの車重と相まって、スムーズになめらかに、十分以上の速さで加速する。
冬の朝なのでヒーター全開ということもあり、94%あったバッテリー残量はメキメキと減り、あっという間に80%を切ったためあわててヒーターを弱めたが、このバッテリーの減り方と、パドルがついていなかったことがやはり残念ではある。積極的にパドルでエネルギーを回生するべきだし、そうすればもう少し、残量の減りにドキドキしなくても良いのではないだろうか。
さてこのシトロエンE-C4はちゃんとシトロエンだったかどうか、と聞かれると、シトロエンらしさが確かにあったことと、シトロエンらしい快適な空間があったことは認めるが、まごうかたなきシトロエンであったかどうかは難しい。その追求や探求はまだまだこれからの課題だったからかもしれないが、最初にも書いたようになんとなく薄味だったようにも思う。早合点しなさんな、まだこれからが本番でっせ、というシトロエンのエンジニアの声が聞こえてきそうだが、電動化することでますます難解になるであろう独自性の中で、シトロエンらしさを一生懸命に演出しなくてはならないエンジニアのことを想うと、その大変さに同情を禁じ得ない。
Text & photo: 大林晃平
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シトロエンのエンブレムが付いたプジョーだね。