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ハイソカーふたたび──新型トヨタ アルファード試乗記

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ハイソカーふたたび──新型トヨタ アルファード試乗記

なぜ、トヨタの新型「アルファード」は販売好調なのか? 今尾直樹が考えた!

つくり手の思惑通り

1980年代に採用されたマニアックな日本車の装備3選 Vol.3

トヨタの、否、いまやニッポンの高級ミニバンとして東アジアの富裕層の間でも高い人気を誇る、というアルファード/ヴェルファイアの4代目が発売されたのは2023年6月21日のこと。そろそろ1年になるいま、新型アルファードに試乗してみよう。ということで、もっとも高価な「Executive Lounge」のE-Four(電気式4WD)の広報車を借り出し、小1時間ほど、都内をウロウロしてみた。

簡単におさらいしておくと、4代目の開発にあたってプラットフォームを刷新、トヨタ「カムリ」からレクサス「RX」、レクサス「LM」から「センチュリー(SUV)」まで、エンジン横置きの前輪駆動とその4WD版用の「GA-K」をミニバン用に最適化して使っている。

フロントがマクファーソンストラット、リヤがダブルウィッシュボーンの足まわりは、可変ダンピングやエアサスペンションといった電子制御に頼ることなく、純機械式でまとめている。ブレースを追加してのボディの剛性アップや、機械式の周波数感応型ショックアブソーバーの採用のほか、シートの背もたれ、アームレストに低反発のパッドを用いるなどの工夫によって、振動を従来型比3分の1に低減しているという。ロードノイズや風切り音にも対策を施し、低騒音タイヤを開発してもいる。

パワーユニットは2.5リッター直4ガソリンと、2.5リッター直4ガソリン+モーターのトヨタ式ハイブリッドの2タイプ。ただし、Executive Loungeはハイブリッドのみで、駆動方式は試乗車のE-FourのほかFFの2WDもある。

ボディはでっかく見えるけれど、全長×全幅×全高=4995×1850×1935mmと、一般的な機械式駐車場に入るサイズに仕立てられている。ホイールベースはおなじGK-AプラットフォームのレクサスLMとおなじ3000mmと、おそらく国内で販売されているトヨタの乗用車で、ショーファードリブンのトヨタ「クラウン(セダン)」と、並ぶ長さを誇る。

「プレシャスレオブロンド」というイメージカラーをまとった新型アルファードは、わかりやすくゴージャスで、金満家っぽいムードが漂っている。外装デザインはプレスリリースにいわく、「力強さがテーマ」で、「全体的なカタマリ感を意識し、あたかも闘牛が躍動しているかのようなモチーフのデザイン」と、されている。街で遭遇するたびに畏怖の念を筆者が抱くのは、つくり手の思惑通りなのだ。

“バブリーな体験”「ミニバンから『大空間高級サルーン』へと進化」した、と、メーカーが自負する3代目に対して、4代目は「快適な移動の幸せ」を追求した、と同リリースにある。その幸せを味わうべく、編集者のススメで、まずは2列目に座り、エグゼクティブラウンジの贅沢な雰囲気を味わってみる。

ショーファー役の編集部イナガキがリヤのスライドドアを自動で開けると、瞬時にステップがフロアの下から出てくる。このステップに片足を乗せて室内に入り込む。「ニュートラルベージュ」というオフホワイトの内装は、まるで結婚式のように華やかで、シート表皮のプレミアムナッパ本革のソフトなタッチが心地よい。柔肌の熱き血潮に触れまくっちゃう感覚である。道なんか説いている場合じゃない。

着座位置の高い大柄なシートに身体を預け、足を組んで、流れる街の景色を眺めていると、昼間っからシャンパーニュを片手にシガーを燻らせたいような心持ちになる。筆者には喫煙の習慣はないけれど、19世紀から20世紀初めにかけてのイギリスのジェントルマン気分。あくまで気分ですけれど、あるいは、来日した不動産王時代のドナルド・トランプが都心の広大な緑地を見て、「あそこは買えないのか?」と、アテンドした人に聞いたそうだけれど、そういう会話が車内でされていそうなイメージがある。

ある種の“バブリーな体験”を、オプション込みの価格900万円ちょっとで味わわせてくれるところにアルファードの魅力はあるのだろう。あくまで外国製の高級ブランドのクルマと較べての話ですけれど。

一般道を走っていて印象的なのは室内の静かさである。それというのも、2.5リッター直4とモーターの組み合わせのハイブリッドシステムは、積極的にEV走行をしてくれるからだ。車載のコンピューターによる途中経過によると、EV走行の割合は65%におよんでいる。

前述したように電子制御サスペンションを持っていないのに乗り心地が快適なのは、ヨーロッパのプレミアムメーカーとは逆をいく、225/65R17という控えめなサイズのタイヤによるところも多いのではあるまいか。それに車検証で2310kgの重量級の上屋がソフトなスプリングの重しになっている。

だから売れているアクセルはなるべくそっと踏んで、EV走行をできるだけ心がけることが肝要で、そうしていればフロントのモーターが270Nmのトルクをレスポンスよく発揮して、2tを超える“闘牛”をスイスイ滑らかに走らせる。ピッチングが穏やかなのは、長いホイールベースにくわえ、リヤにもモーターを備えるE-Fourの場合、前後重量配分が52:48と、バランスがよいこともあるかもしれない。

おそらく大多数のひとびとが、この大空間サルーンに、「快適な移動の幸せ」というものを感じるにちがいない。そこにはジェントルメンズクラブや重役室、あるいは家電店に並んだマッサージシートにも似たリッパな革張りのシートがあり、少なくとも2列目にはひとりにつきカプセルホテルよりも広い、静かで快適な空間が確保されている。こんな幸せが900万円程度で手に入るのだから、アルファードのエグゼクティヴラウンジはお買い得というべきだろう。

実際、国民のみんながそう思っている。だから売れている。直近の一般社団法人日本自動車販売協会連合会のデータ、2024年4月の統計がそれを示している。新型アルファードは6704台、前年比164.6%で、「ヤリス」、「カローラ」、「シエンタ」、「ヴェゼル」に次ぐ5位の座に着いているのだ。先代でふるわなかった「ヴェルファイア」も、2.4リッター・ターボを専用とするなどの個性化により、同月は3114台、前年比なんと8650%を記録、20位に入っている。

令和の「マークII」、ハイソカーふたたび……なのかもしれない。540万円から始まるアルファードと、655万円からのヴェルファイアからなるミニバンの兄弟車が合わせて、ひと月で9818台も売れたのだから。新型アルファード/ヴェルファイアの発表時の月販基準台数8500台(アルファード約70%、ヴェルファイア約30%)は楽々クリア、トヨタのホームページの「工場出荷時期目処のご案内」に何カ月等の明示はなく、「詳しくは販売店にお問い合わせください」と、書かれているほど受注しているらしい。

アルファード/ヴェルファイアのエグゼクティヴラウンジが次に目指すべきはいかに……気になるところだ。

文・今尾直樹 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)

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