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「いいクルマ」でも・・有能なEVといえる? レクサスRZ 長期テスト(最終) 航続距離が最大のネック

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「いいクルマ」でも・・有能なEVといえる? レクサスRZ 長期テスト(最終) 航続距離が最大のネック

積算1万2699km 想像以上に市街地でも扱いやすい

バッテリーEVは、従来以上に軽量化と空力特性が重視される。航続距離へ大きく影響を及ぼすからだ。しかし最近は、それへ背を向けるように、体積や質量が大きくなりがちなSUVやクロスオーバーへ人気が集まっている。

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レクサスRZも、悩ましい問題へ対峙したモデルの1台だ。ただしこのクルマの場合、少しでも軽くし、少しでも長く走れること以上に、贅沢さを優先したように思える。

トヨタbZ4Xと深い関係性を持つ、RZを初めて運転した時、非常に強く印象付けられた。バッテリーEVであることを、あえて前面には主張していないように感じたためだ。実力の高い、BMW iXなどとガチンコで戦うモデルでありながら。

これまで筆者は、約1万kmを一緒に過ごしてきたが、初めに掲げた疑問への答え合わせをしてみよう。長期テストの締めくくりとして。

ミドルサイズの電動クロスオーバー、RZは、ロンドンの中心部でも扱いやすいのか? 答えはイエスだろう。見た目と裏腹に、想像以上に扱いやすかった。

とはいえ、ディフェンダー 110より僅かに長い全長と、僅かに狭い全幅を持つため、多少の妥協は必要だった。設計の古い立体駐車場は、諦めざるを得なかった。

そのかわり、荷室は522Lと大きい。大人4名でロックフェスを楽しむのに必要なキャンプ道具などを、リアシートをたたまずに積むことも余裕だった。

レクサスの水準を満たす 航続距離は不充分

レクサスというブランドの水準を満たす仕上がりか? この答えも、概ねイエス。

車内はとても居心地が良い。内装はアルカンターラで覆われ、フロントシートにはニーウォーマーも備わった。14.0インチのインフォテインメント用タッチモニターも、機能的で優れていた。トヨタの既存モデルからの流用と思しき部品も、散見されたけれど。

カタログ値の405kmという航続距離は、どの程度の真実味があるのか? 筆者の往復約200kmの通勤には充分か?

答えは、ノーへ限りなく近い。実際の電費は、気を使って運転して4.5km/kWh。エアコンを動かすだけで、航続距離は50kmから80kmも短くなってしまう。

高速道路の巡航では、走れても最長290km。容量65kWhの駆動用バッテリーへ優しい気象条件で、低い速度域が中心の市街地でも、350km以上走れたことは1度もなかった。

上級バッテリーEV市場で、善戦できる能力はあるか? これは主観的な感じ方もあるから、回答が難しい。しかし、際立つ強みは多くないだろう。

BMW iXの英国価格は、約7万1000ポンド(約1342万円)から。航続距離は最長614kmが主張され、実力の高さは間違いない。電動のレンジローバーが2024年後半に登場すると、この市場の競争は本格的なものになるだろう。

ライバルの主要な価格帯は、確かにRZより少し上にある。だがiXのように、レンジローバーも洗練されているはず。レクサスには、定番ブランドが存在感を示すカテゴリーで競い合うという、簡単ではない戦いが待っている。

高めの価格に見合う価値はある

最後の疑問は、7万4000ポンド(約1399万円)の価格に見合う価値はあるか? 筆者の答えは、イエス。

当初から感心し続けてきたが、高速道路でのしなやかな乗り心地や、アルカンターラ仕立てのシートまで快適性に優れ、理想的な相棒といえた。長期テスト最後のドライブまで、心地良かった。

ただし、普段使いする中で気を揉む部分も存在した。誤作動するため、速度標識の読み取り機能をオフにすることが出発前の日課になった。検知する速度が正しくない場合が多く、毎回大音量で警告音が鳴るためだ。

ドライバー監視機能にもひとこと。センサーがステアリングコラムに付いており、ドライバーが運転に集中しているか、システムが常に監視している。理屈としては素晴らしい機能なのだが、現状では理想とする水準に届いていない。

交差点に侵入する際、横から来るクルマの流れを確認するだけでも、警告を受ける。3秒横を向いただけで。むしろ、筆者の場合は気が散ってしまった。オフにすることはできるが、タッチモニター内のメニューを4度もタップしなければならない。

良いクルマだが、優れるEVではない

というわけで、不満は確かにあったが、RZは良いクルマだと思う。それでも、筆者としては、有能なバッテリーEVだとは表現しにくい。

自分のように通勤距離が長くなければ、RZを最終候補に加えても疑問は抱かない。日常的な移動距離が短い裕福なユーザーにとって、魅力的な選択肢に映ることは理解できる。

英国では2000台しか販売されないという希少性も、訴求力を高めるものかもしれない。長距離ドライブ用に別のクルマがあるという人なら、快適なインテリアを気兼ねなく楽しめるだろう。

RZには、ちゃんと居場所がある。少なくとも、市街地のアパートに住む筆者には、適さなかったとしても。

セカンドオピニオン

RZは、想像以上にハンドリングが素晴らしい。だが、運転支援システムと航続距離が、印象を大きく下げてしまう。

特にエアコンを動かすと、残りの充電量で走れる距離は目に見えて短くなる。夜の雨天時など、フロントガラスの曇りを取りながら走るような場面では、不安が増大してしまう。

テストデータ

気に入っているトコロ

回生ブレーキの制御:運転中でも任意に強さを調整できるのが素晴らしい。加速も爽快。
積載力:ラグジュアリーなインテリアでありながら、荷室は広大。ドアポケットなど、収納も各所に用意され、驚くほど実用的。
褒められるデザイン:珍しいRZだが、知らない人からスタイリングを褒められたことは数しれず。本当に見た目が良いと思う。

気に入らないトコロ

短い走行距離:RZで最大の不満はこれ。高速道路を走ると顕著だった。
運転支援システム:本来は運転に集中させる機能だと思うが、むしろ気が散る。

走行距離

テスト開始時積算距離:1419km
テスト終了時積算距離:1万2699km

価格

モデル名:レクサスRZ 450E タクミ(英国仕様)
テスト車の価格:7万3945ポンド(約1398万円)
現行の価格:7万4000ポンド(約1399万円)

オプション装備

なし

電費&航続距離

カタログ航続距離:405km
駆動用バッテリー容量:65.0kWh(実容量)
平均電費:4.5km/kWh
最高電費:5.1km/kWh
最低電費:3.5km/kWh
実際の航続距離:354km

主要諸元

全長:4805mm
全幅:1895mm
全高:1635mm
最高速度:159km/h
0-100km/h加速:7.4秒
車両重量:2115kg
パワートレイン:ツインAC永久磁石同期モーター
急速充電能力:147kW(DC)
最高出力:313ps
最大トルク:44.1kg-m
ギアボックス:1速リダクション(四輪駆動)
トランク容量:522L
ホイールサイズ:20インチ
タイヤ:235/50 R20(フロント)+255/45 R20(リア)

メンテナンス&ランニングコスト

リース価格:763ポンド(14万2000円/1か月)
CO2 排出量:0g/km
メンテナンスコスト:なし
その他コスト:400ポンド(7万5000円/バンパー交換)、1000ポンド(18万9000円/ヘッドライト交換)
エネルギーコスト:1065ポンド(20万円/電気)
エネルギー含めたランニングコスト:1065ポンド(20万円/電気)
1マイル当りコスト:0.15ポンド(28円)

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みんなのコメント

45件
  • としりん
    せっかく、1万kmの走行をしたのに電気自動車の知りたいことが掲載されていないのは残念です。当初より満充電の時間がどの位長くなったのか、満充電での走行距離がどの位短くなったのか、また車重2tをこえてるので、タイヤの減り具合はどうだったのかなど、同車レポートでも触れてることが全くないため、何をレポートしたいのかわかりません。よっぽどファーストユーザーにアンケートを実施した結果を公開した方がましです。
  • ******
    やる気のないトヨタのどうでもいいクルマ
    もう生産終了でも問題ない
※コメントは個人の見解であり、記事提供社と関係はありません。

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