「BMW ALPINA B3 Touring」(BMWアルピナB3ツーリング)と、ヤマハ「TRACER9 GT(トレーサー・ナイン・ジーティー)」を並べると、どこか似た思想に満たされている気がする。ともに、ロングツーリングでドライバーを、そしてライダーを快適に目的地に運ぶ術を秘めていながら、ドライビングの、あるいはライディングの楽しさを与えてくれるように思えるのだ。
アルピナは、BMWをベースに特別にチューニングすることで独特の世界観を構築している。それはもう“改造屋”などではなく、自動車メーカーとして独立していることからも想像できるように、アクや粗さを徹底的に排除した乗り味を提供してくれるのだ。紳士的なその走行スタイルは、本家であるBMWがヤンチャで活発であるのとは対象的に整っている。
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出自がレースであることでもわかるとおり、パフォーマンスは熱く、激しい。アルピナ史上最強の直列6気筒3.0リッター、ビ・ターボ・エンジンは最高出力340kW(462PS)、最大トルク700Nmを発揮し、0-100km/hは3.9秒に達する。
それでいて、乗り心地がとても紳士的だというのだから驚きである。速いけれど快適。いかにもアルピナが開発したロングツアラーらしい。
ヤマハ「トレーサー9 GT」も同様に、快適なロングツーリングを可能にしながら、目的地までの道中、気の利いたワインディングを軽快に走る。電子制御のKYB製サスペンションは驚くほどしなやかで、停止した状態で体をゆすれば、ダンパーが優しく沈み、伸び上がる。それでいて、コーナーでの強い入力では減衰力を高める。ロングツーリングでも疲労が少なく、それでいてワインディングもご機嫌なのである。
フロントスクリーンは手動で10段階に高さ調整が可能だし、ハンドルグリップ前方に装備されたブラッシュガードは走行風による手指の疲労をガード。ライディングポジションは2段階から選べる。クルーズコントロールまで装備する。なによりも、両サイドとリアキャリアに装備された3つのケース(専用アクセサリー)は中身を保護するのみならず、サイドケース取付ステーには高速走行時の振動を減衰するダンパーも組み込まれている。高速域でも車体が安定するよう、空力性能にも配慮が行き届いているのだ。ただ荷物を積めればいいということではなく、ここにも快適に目的地へ移動するという思想が感じられるのである。
快適な長旅が可能であり、それでいて峠道が楽しい。「アルピナB3ツーリング」を日本メーカーのバイクに例えれば「トレーサー9 GT」であり、「トレーサー9 GT」をクルマの輸入車に置き換えれば「アルピナB3ツーリング」になる。
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