自動車業界で働くジャーナリストの多くは、当然ながらこれから出てくる新型車たちの概要を正式発表前に知ることができる。が、そうなるとなかには「…ん? お前…大丈夫か???」な点を持つクルマがでてくるのだが、ここではそんな、余計な心配を見事にブッ飛ばして人気者の仲間入りを果たした豪腕グルマたちをドドッとご紹介します!(本稿は「ベストカー」2013年3月26日号に掲載した記事の再録版となります)
■トヨタ アクア
アクア シエンタ CX-5 レガシィ でてくる前はけっこう心配されてたってマジか 前評判を覆したクルマたち
トヨタ アクア。先代プリウスのハイブリッドシステムとより軽量な車体の組み合わせで、JC08モード燃費は35.4km/L!
●ちょっと心配……スタイルはよかったものの、ヴィッツより広くない後席の居住性を心配する声があがっていたのは事実。また、メカニズムも先代プリウスのものを採用することで、イマイチ新鮮さがないといった評論家の声も……。
●それでも売れたワケ……ところが実際は大ヒット、納期は半年を超えた。やはり抜群の燃費性能はインパクトが強く、5ナンバーサイズのボディは、3ナンバー車のプリウスを敬遠する人のツボにハマった。プリウスと同様、トヨタ全店の取り扱いも売れゆきを押し上げた。
■前評判覆し度……☆☆★★★(2012年の年間販売台数=26万6567台)
■マツダ CX-5
マツダ CX-5。室内にいるかぎりディーゼルとは思わせない静粛性の高さも、人気を支える要因となっている
●ちょっと心配……全幅=1840mmの大柄なサイズながら、SUVとしては野性味に乏しい外観にまず不安が……。また、ディーゼルも登場前はX-トレイルのディーゼルが売れてなかったこともあり、売れゆきが心配された。
●それでも売れたワケ…いざ発売してみれば販売はご存じのとおり堅調。4Lガソリンエンジン並みの大トルクを誇るディーゼルは、欧州勢顔負けのデキを誇り、ガソリンモデルを大きく凌ぐ人気となっている。奇をてらわず、優れた技術力で素直によいクルマを開発すれば、軽自動車やコンパクトカーでなくても堅調に売れる。CX-5は「諦めるのは早い」と教えてくれた名車なのだ。
■前評判覆し度……☆☆☆☆★(2012年の年間販売台数=3万5434台)
■日産 ノート
日産 ノート。1.2Lスーパーチャージャー仕様は98ps/14.5kgmを発生。JC08燃費も24.0~25.2km/Lと優秀。最近はメダリストが人気だとか
●ちょっと心配……まずは統合されたティーダの後釜たりえるのか、というのが心配された。また、ウリのスーパーチャージャーも、燃費仕様ということで、そこにガッカリする評論家もいた。
●それでも売れたワケ……が、発売されるやアクアやプリウスシリーズに次ぐ売れゆきを見せている。これはもちろん低燃費など商品の魅力もあるが、過去4年間、日産が売れ筋のコンパクトカーを投入していなかったことも影響した。膨大に溜まっていた代替え需要がノートに集中したのだ。本当の人気がわかるのは、発売後1年を経た9月頃からだろう。
■前評判覆し度……☆☆☆★★(2012年の年間販売台数=8万5330台)
■スバル レガシィ
スバル レガシィ。300ps/40.8kgmのエンジンを積む2.0GT DIT。レガシィに痛快な加速の復活を実現させた
●ちょっと心配……現行レガシィは2009年5月に登場したが、直後の売れゆきは精彩を欠いた。北米市場を重視し大柄になったボディや、いまいちピリッとしない外観デザインも評価は高くなく、先代まで設定されていた2Lターボの不在も不安視された。
●それでも売れたワケ……2010年5月に10万5000円でアイサイトを追加すると、CMも奏功して急上昇。月別登録順位で30位以内に食い込んだ。まさにアイサイト効果だ。また最近では2012年5月に行なったマイチェンで外観デザインが改善され、300psを発生する2Lターボも追加されたこともあり、その存在感をさらに増すことに成功した。
■前評判覆し度……☆☆☆☆☆(2012年の年間販売台数=2万6010台)
■マツダ デミオ
マツダ デミオ。人気の中心は13-SKYACTIV。内燃機関のまま25.0km/Lの燃費を達成し、HV偏重ムードに一石を投じた意義は大きい
●ちょっと心配……欧州車風でカッコイイけど、イマドキ背の低いスタイルって主流じゃなくない? 今はフィットがブレイクする時代なのにねぇ……、と心配する評論家も多かった。
●それでも売れたワケ……という大方の予想とは裏腹に、デミオは堅調に売れた。中途半端にカッコを追求して狭いのはダメだが、デミオは思い切りがいいと受け取られ、「クルマは実用性よりも個性」と考えるユーザーに受けたようだ。そして登場後4年を経て人気が下降し始めた2011年に、13-SKYACTIVを投入。フィットHVと同等の燃費で免税対象となり、人気も復活した。
■前評判覆し度……☆☆☆☆★(2012年の年間販売台数=5万7820台)
■トヨタ ポルテ/スペイド
トヨタ ポルテ/スペイド。個性的なクルマであり、苦戦に陥る要素もあるが、優れた室内空間を評価されたのか、意外に人気者なのだった
●ちょっと心配……全高が1700mm近いコンパクトカーで、空間効率は抜群に高い。売れ筋路線だが、左側は先代型と同じく1枚のスライドドア。また価格は主力グレードが164万円とやや高めで、そこに不安要素があった。
●それでも売れたワケ……その後の販売実績は予想以上。スペイドだけでも充分に健闘し、ポルテも加えればフィットの台数に迫る。販売店では「ミニバンから小さなクルマに代替えするお客様と、1.3Lクラスからの上級移行が重なった」と言う。根底にはコンパクトカーの高人気があり、多様化するニーズを巧みに取り込んだのが成功の要因だ。
■前評判覆し度……☆☆★★★(2012年の年間販売台数=5万6706台)
■日産 ジューク
日産 ジューク。日本のみならず海外でも存在感を主張するジューク。ジュークRの登場は……、ムリか
●ちょっと心配……そりゃやっぱり開発担当者も「好き嫌いがわかれるスタイルなんで……」と弱気になるほどの外観でしょ。いっぽう内装はやたらと凝ったデザインが採用されたが、逆にそれが「外観に自信ないの?」と思わされた。
●それでも売れたワケ……予想は200%の大ハズレ。ヒットの理由は年齢構成比にあり、発売直後は半数近くが50歳以上だった。この年齢層にはクルマ好きが多いが、近年のサイズが適度な車種はいずれも実用一辺倒。個性派の需要がジュークに殺到した。50歳を超えるとクーペでは気恥ずかしいが、普通のコンパクトカーは退屈。見て乗って楽しい小さめのクルマはまだまだイケる。ジュークはそれを教えてくれた。
■前評判覆し度……☆☆☆☆☆(2012年の年間販売台数=3万3648台)
■スズキ ソリオ
スズキ ソリオ。より若者を狙ったバンディットも追加され、さらに販売が安定傾向になったソリオ。言葉は悪いが中途半端なボディサイズがユニーク
●ちょっと心配……スライドドアとレールはパレットから流用。全幅はパッソより狭く、全高が1700mmを超えるボディのため軽自動車のように見えるといわれた。それでいて価格は充実した装備によって高めと思われた。
●それでも売れたワケ……厳しいと思ったが着実に売れている。姉妹車のデリカD:2も人気を得た。理由はクルマの選ばれ方にメリハリが付いたこと。面白さを求めるならジュークのような個性派を選び、実用志向なら、見栄えに左右されず機能を確実に見極める。ソリオの高人気は市場が熟成された証といえるかもしれない。
■前評判覆し度……☆☆☆☆★(2012年の年間販売台数=3万8877台)
■トヨタ シエンタ
トヨタ シエンタ。トヨタの貴重なコンパクト7シーターとして、存在感を発揮するシエンタ。これからも頑張ってほしい
●ちょっと心配……2003年の登場時は評判も上々。モビリオの対抗車種として開発され、薄型燃料タンクを備えていた。ただ2011年にダイスを追加して復活した時は、「まだ売るつもりなの!?」的な空気が流れたのも事実だったりする。
●それでも売れたワケ……シエンタの存在感が増したのは、2008年登場の後継車、パッソセッテがチト残念だったから。3列目は狭く価格は割高で販売は低迷した。そこでシエンタは、2010年8月に生産を終えながら2011年5月に復活した。2003年登場のシエンタが売れるのか? と心配されたが販売は堅調。もはや今のトヨタでは作れそうもない、合理的で優秀なミニバンであるからだ。
■前評判覆し度……☆☆☆☆☆(2012年の年間販売台数=2万9926台)
■スバル インプレッサ
スバル インプレッサ。一見特徴がないようにも思えるが、素のクルマとしてのデキがいいのか、シブとく売れる大事なモデルに成長した
●ちょっと心配……先代インプレッサは5ナンバー車から3ナンバー車に拡大し、販売は低調に終わった。現行型も基本は同じ路線。好き嫌いが出そうなデザインでもあり、そこも不安視された要因。
●それでも売れたワケ……が、登場後は堅調に売れ、時間が経過すると小型&普通車の月別登録順位を高めた。2012年初頭は20位前後だが、年末以降は10位以内に入っている。アイサイトが人気を支え、10月に発売されたXVも堅調で、さらに伸びたのだ。現行レガシィのボディ拡大で、従来型のユーザーがインプレッサに流れた事情もある。クルマの性格を考えれば快挙だ。
■前評判覆し度……☆☆☆☆☆(2012年の年間販売台数=4万3108台)
■トヨタ 86
トヨタ 86。確かに外観はオーソドックス。今後の動向は、どれだけ話題を振りまき続けられるかにかかる
●ちょっと心配……今の時代にスポーティクーペが売れるのか? という不安は発表当時から囁かれていた。加えて86は外観も’80年代風で、やや地味。好調を保つのは難しいという意見も多かった。
●それでも売れたワケ……2012年2月に発表され、10月までは初期受注の納車も続き、月販3000台前後を保った。その後はやや下降気味だが、著しい落ち込みではない。購入するのは中高年齢層で、AE86の現役時代を思い出すのだろう。その意味では少し機敏な操舵感は彼らのツボを突くものだったといえる。
■前評判覆し度……☆☆☆☆★(2012年の年間販売台数=2万2456台)
* * *
以上、囁かれた不安要素をものともせず、販売で健闘する強者をドドッと紹介してみた。が、もし今後販売台数が低下すれば「それ見たことか」と言われがちなので、続けて頑張ってほしい。
(内容はすべてベストカー本誌掲載時のものです)
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みんなのコメント
前評判は良かったんじゃ無いの?
CXー7はろくに売れなかった、その二番煎じなのにデザインが野暮ったく退化
心臓のディーゼルも前世代は欧州で受け入れられてるとは言え日本はディーゼルアレルギーな状態
果たして新世代低圧縮ディーゼルが理解されるのか?
などなど経営危機でもあり皆不安がっていたとか
これが当たらなかったらどうなるか…