新車試乗レポート [2024.02.14 UP]
【BYD ドルフィン】クセは強いがポテンシャルは感じる電気自動車
文●九島辰也 写真●澤田和久、内藤敬仁
BYD “黒”をテーマに「ドルフィン」「シール」を展示 東京オートサロン2024
東京モーターショーから名称とコンセプトを変えた昨年のモビリティショーを覚えているだろうか。入場者数が示すようにかなり盛り上がったのは言わずもがなだ。既存のカーブランドやサプライヤーの他に、未来を担うベンチャーも多数出展した。その意味ではとても門戸の広いイベントだったと思う。
そんな中で、一際大きなブースを構え来場者を集めていたのが中国からやってきたBYDである。市販のコンパクトカーから大型SUVのコンセプトカーまで日本でもウケそうなラインナップを展開した。コンパニオンも多く積極的に展示場所へ引き入れていた印象だ。
機械式駐車場にも収まる電気自動車
BYD ドルフィン
そんなBYDの日本市場における第二弾モデルに乗った。ドルフィンである。昨年9月に発表され、同日から販売を開始している。第一弾は昨年1月のCセグメントに属すATT03だったのはご存知の通り。そのタイミングで自動車専門誌はもちろん、新聞や経済誌でも取り上げられた。“中国の自動車”“BEV”“電気自動車販売台数世界一”など、キャッチコピーが並んだ。
さて、ドルフィンだが、サイズは全長4290、全幅1770、全高1550mmとなる。本国仕様の全高は1570mmだが、日本の機械式駐車場に入るよう20mm低くした。かつて某ドイツメーカーが日本専用のドアハンドルを付けて5ナンバー枠におさめたのと同じ発想だ。
縦型にも横型にもなるタッチスクリーンが目を引くインテリア
BYD ドルフィン
インテリアではダッシュボードセンターの12.8インチタッチスクリーンが目に付く。ドーンと設置するところが新興勢力っぽく新鮮だ。でもって、これが横型にも縦型にもなる。縦にすると車内が一気にテスラっぽいと感じたのは私だけだろうか。ただ、それ以外の部分をよく見るとかなりシンプル。大型トレーが中心にあって味気ないつくりだ。メータークラスターとなる小型デジタルモニターもそう。工夫の跡が見えなくはないが、文字が小さすぎて正直見えづらい。
パワーソースに関しては2つの仕様があり、それがそのままグレードとなる。バッテリー容量の違いで、“ドルフィン”と“ドルフィン ロングレンジ”となり、WLTCモードの一充電走行距離は、前者が400km、後者が476kmとなる。パワーはそれぞれ95ps、204psを発揮する。
BYD ドルフィン
そのバッテリーに自信があるのがBYDだ。彼らはそもそもバッテリーメーカーであり、それが国策のようにして自動車メーカーに転化した。床下に並ぶブレードバッテリーは自信作で限られたスペースに効率よく並べられる形状を開発した。その面でこの分野での競争力はありそうだ。
走りに関しては、驚くほど良くできている。「走る・曲がる・止まる」の基本性能が思いのほかいい。実はここが大事で、初期のテスラはその完成度が低かった。直線こそパワーで押し切っていたが、ワンディングを走るとどことなくギクシャクしていたのを覚えている。ハンドリングが良くなってきたのはモデルX以降で、今やコーナリング性能も高いレベルに達しているが。
少なくともドルフィンはそれがしっかりしている。ステアリング操作に対する動きは滑らかで、追従する足にクセはない。リアサスを見てもお金がかかっていないのがわかるが、これは立派だ。某国産メーカーのEV担当者が「BYDの感想を後で教えてください」と言った意味がわかった気がする。
ドルフィンの気になるところ
BYD ドルフィン
とはいえ、細かいところはまだまだで、これからの熟成を期待する。特に電子デバイス系は使い方が直感的でなく、思うように扱えない。それにウィンカーを出しても車線逸脱防止装置がキャンセルされず、ステアリングを戻されながら車線変更をしなければならなかったりもした。この辺はじっくり説明書片手に理解すればいいのかもしれないが、使い勝手がいいという印象は薄い。
気になったのはシフト操作のダイヤルで、センターコンソール上部にあるこれもまた使い勝手がいいとは思えない。独自性を出すのであれば、デザインと場所を再考した方がいいだろう。スーパーカーであればともかく、大衆車はあまり奇を衒わない方が好感度が高い。
まとめ
なんて感じなので、細部を煮詰めればBYDがクルマとしてレベルが上がるのは確か。あとは日本のマーケットとインフラがBEVを受け入れる土俵をどれだけ作れるかだけのような気がする。
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ブレーキは、まだ改良の余地あり
すでにテスラのプレミア感は、完全に無くなった