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昔のボルボを忘れられない人にもススメたい──新型XC90試乗記

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昔のボルボを忘れられない人にもススメたい──新型XC90試乗記

マイナーチェンジを受けたボルボのフラグシップSUV「XC90」にサトータケシが試乗した。

かつての四角いボルボを引き継ぐ

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「ボルボは昔の四角いやつがいい」みたいなことを言う人が、周囲には多い。

で、「850のエステートとかですか?」と尋ねると、「いえ、850はFF(前輪駆動)なので、できればFR(後輪駆動)の940か960が望ましい」という答が返ってきたりする。

なるほど、あの頃のボルボのスタイリングには味わいがあるし、荷物もたくさん載る。940とか960まったりとしたドライブフィールも、朴訥としたキャラクターのクルマだと思えば悪くない。

いっぽうで安全性や燃費は、いま使うとなるとどうかなあ……という感じだし、一番新しい年式でも1998年型だということを考えると整備にお金がかかるのも想像できる。

というわけで、四角いボルボをご所望の方には、XC90を推薦したい。どうです、これなら四角いし、キャラも20世紀のボルボっぽいでしょう。

「どないだー!」と、強くアピールする高級SUVが幅を利かせているいま、穏やかなボルボXC90エクステリアのデザインは貴重だ。乗っている人は頭が良さそうに見える、かどうかはわからないけれど、いい人に見えるのは間違いない。乗っている人がいい人ややさしい人に見えるという“性能”を、XC90はかつての四角いボルボから引き継いでいる。

スクエアなボディ形状から想像できるように室内は広々としていて、おまけに3列目シートも備わる。最近は3列目シートをウリにするSUVもいくつか登場しているけれど、ほとんどがお子様向けのスペースだ。対してボルボXC90は、大人でもギリ座れるだけの広さが確保されている。FRではないけれど、4輪駆動ということでお許しください。

クオリティの高いインテリア外観は四角いボルボの流れを汲んでいるものの、インテリアのデザインは好ましい方向に進化している。昔のボルボのインテリアはつくりが大雑把で、プラスチックの部品の見た目も手触りもザラザラだった。それがXC90は、すっきりと上品にまとまっているうえに、プラスチック部品もつやつや、レザーの手触りはふんわりやわらかい。

昔のボルボの内装が大雑把だった理由について、「めっちゃ寒いスウェーデンの冬に、手袋をしたまま乗り込むからスイッチやダイヤルがデカい」という説があったけれど、最新のXC90は手袋をはめたままだと操作が難しいかもしれない。というのも、縦長のタッチスクリーンで空調やカーナビを操作するインターフェイスが採用されているからだ。

ところがどっこい、実際に使ってみると、最新のボルボはもっと先を行っていた。XC90はGoogleのオペレーションシステムを採用していて、カーナビやオーディオもGoogleが制御している。

運転席から声を出してお願いをすると、目的地の設定も音楽の選曲もやってくれるから、タッチスクリーンに触れる機会が少ないのだ。さらには、自宅の部屋から指示をすると事前に車内を暖めておいてくれることも可能だから、乗り込んだ瞬間に手袋を外すことができる。手袋の問題は考える必要がなくなった。

動的な質感も向上今回の試乗車は、XC90のプラグイン・ハイブリッド仕様。XC90のプラグインハイブリッドは2022年にシステムが一新され、フロントに積むエンジンが前輪を駆動、リアに配置されるモーターが後輪を駆動、という基本的なレイアウトに変化はないものの、モーターの出力が大きくなり、バッテリーの容量が拡大している。

プラグイン・ハイブリッドとは、外部電源にプラグインして充電ができるハイブリッド車であるけれど、よりたくさん充電して、より強力なモーターで駆動する方向に進化している。より電気自動車に近づいた。

充分な電気があると、発進加速はモーターだけで駆動するEV走行になる。モーターのいいところは低速から充分な力を発揮することとレスポンスがよいことで、ストップ&ゴーが連続する都市部でもストレスなく走れる。

遠出をするときには、高速道路では充電を優先するモードを選び、市街地に入ったらEV走行を優先するモードを選ぶ、という乗り方もできる。

高速走行時にはエンジンが主体となり、加速時にモーターがエンジンをアシストする形になる。とはいっても、“いまモーターが駆動している”と感じるようなことはなく、その切り替えはいたってスムーズ。エンジンとモーターの連携は、インパネの表示を見なければステアリング・ホイールを握っているドライバーでわからないほどシームレスだ。

市街地ではモーターのアシストのおかげで静かで滑らか、高速道路ではモーターが電気ターボ的な役割を果たしてパワフルに走る。このクルマに乗っていると、エンジンとモーターは互いの弱点を補い、長所を伸ばす、格好の相棒だと感じる。横山やすしと西川きよし、というたとえは古すぎるかもしれない。

いずれにせよ、プラグイン・ハイブリッドは省燃費の技術というだけでなく、動的な質感を向上させる技術だ。

速度域を問わず乗り心地は快適で、特に高速道路では路面からのショックを上手に吸収してくれるから、長距離走行が楽ちんで疲れない。しかも昔の四角いボルボみたいにユルい感じはなく、フラットな姿勢を保ち、コーナーでもステアリング操作に正確に反応してくれる。

というわけで、昔の四角いボルボが忘れられない方にはXC90がお薦めで、予算に余裕があれば、このプラグイン・ハイブリッドを選びたい。

文・サトータケシ 写真・安井宏充(Weekend.)

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