スズキ スペーシア 「3代目にして熟成したハイトワゴン」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

西村 直人
西村 直人(著者の記事一覧
交通コメンテーター
評価

5

デザイン
4
走行性能
4
乗り心地
4
積載性
5
燃費
4
価格
4

3代目にして熟成したハイトワゴン

2024.4.30

年式
2023年11月〜モデル
総評
初代が誕生したのは2013年3月。いわゆる“スーパーハイト系ワゴン”として認知が進み、代を重ねるごとに台数は右肩上がりに。現行モデルは2023年11月に登場した3代目だ。標準モデルのスペーシアと、華やかさを添えたカスタムの2バリエーション手法は従来モデル通り。3代目は後席シート座面に工夫を加え使い勝手を向上させた。
満足している点
歴代スペーシアがそうであったように、3代目となる現行モデルもボディ容積を最大限に活かしたアレンジが最大の特徴だ。この手のモデルはドライバーが単なる運転手になってしまいがちだが、スペーシアは単純に運転が楽しい。ターボモデルはまるで登録車のコンパクトカー的なゆとりすら感じる。先進安全技術も最高ランクでそろえた。
不満な点
お客様に支持されているからこそ、デザインの方向性を大きく変えない、これには大いに賛同できる。ちょっとだけ残念だな、と思うのはデザインにしろ、色使いにしろ、ややソフトな方向でまとめられている点。カスタムモデルはラギッド感の強い外観を持つが、インテリアは標準モデルと共通してやや煩雑な印象も受けてしまう。ここが惜しい。
デザイン

4

スーパーハイト系ワゴンは背高ノッポな印象を受けてしまうが、それが見た目の安定感をそいでしまうとも言われている。その点、現行モデルはボディ側面に大容量のコンテナをイメージさせるリブ状のデザインを織り込んだ。これにより道具感が一気に増して、さらに丈夫さを視覚的に訴えることに成功した。ボディカラーのバリエーションも豊富だ。
走行性能

4

正直、走行性能には大きな期待を寄せていなかったが、NAエンジンであっても実によく走ることが確認できた。試乗は富士山麓。ここをベースにした周囲の急な山坂道が主体だったが、優秀なCVTとの連携で登坂時こそエンジン回転は高めを維持するものの、大人2名+荷物であれば不足なし。ターボモデルは言うことなしの満点だ。
乗り心地

4

昨今の軽自動車はどれも高い衝突安全性能を持ち合わせているが、背が高いスーパーハイト系は成立が難しい。その点、スペーシアは980Mpa以上の超高張力鋼板の使用率を18%に増やし、同時に環状骨格構造を強化。さらにリヤサスのバンプストッパーを変更するなどして、がっちりとしたボディと、しなやかな足を手に入れた。
積載性

5

ここはもう文句なくトップレベルだ。単に容積が確保されてるだけでなく、たとえば後席を前倒しにした際の床面は従来型と比較して40mm低床化され、床面角度を水平にしたことで積み込みやすさが大幅に向上した。地面から荷室までの高さは510mm、荷室開口部の高さは最大で1150mmと26インチの自転車も楽に積載できる。
燃費

4

スペーシアは全モデルがマイルドハイブリッド仕様。NAエンジンのFFはスーパーハイト系でトップクラスの25.1km/L(WLTC値)を獲得。ターボのFFでも21.9km/L(同)を達成する。実燃費も良好で、険しい山岳地帯を1時間ほど走らせてNAが16〜18km/L、ターボは15〜17km/Lほど。平地であればカタログ値の80%に届く。
価格

4

153万100円のFF/HYBRID Gから、上は219万3400円の4WD/HYBRID XS TURBOまでのラインアップ。実用性を考えればHYBRID G、そして降雪地帯であればその4WDモデル(165万6600円)で十分。後席の「マルチユースフラップ」が必要ならHYBRID X(170万5000円〜)がいい。
西村 直人
西村 直人
交通コメンテーター
WRカーやF1、MotoGPマシンのサーキット走行をこなし、4&2輪のアマチュアレースにも参戦。物流や環境に関する取材を多数。大型商用車の開発業務も担当。国土交通省「スマートウェイ検討委員会」、警察庁「UTMS懇談会」に出席。自動運転技術の研修会(公的/教育/民間)における講師を継続。警視庁の安全運転管理者法定講習における講師。近著は「2020年、人工知能は車を運転するのか」(インプレス刊)。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員日本自動車ジャーナリスト協会会員
スズキ スペーシア 新型・現行モデル

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