スバル クロストレック 「【市販モデル編】見た目はワイルド系、でも中身は圧倒的なまでに上質」の専門家レビュー ※掲載内容は執筆日時点の情報です。

【市販モデル編】見た目はワイルド系、でも中身は圧倒的なまでに上質

2023.4.24

年式

2022年12月〜モデル

総評

2022年10月のプロトタイプ試乗を経て、今回は市販モデルでの公道試乗。先代に相当するスバル XVよりもワイルドでアグレッシブなイメージのデザインに変わったが、走行フィールや各部の使い勝手などは、よりジェントルというか「より上質」といった方向性で大きく進化を遂げている。走行フィールにおいて尖った部分が少ないことに不満を覚えるユーザーもいるかもしれないが、「きわめて上質なSUVを普通に使いこなしたい」と考えるのであれば、現状、これ以上の国産CセグメントSUVはそう多くはない。

満足している点

この車の価値は、スポーツカーのような人馬一体感とはもちろん異なるのだが、とにかくドライバーがイメージしたそのままの形で直進し、曲がり、止まることができるという点にある。派手なカタログスペックや加速性能の数値などはないのだが、「すべてが意のまま」といったニュアンスで動くため、結果として快感を覚え、逆に疲労は感じづらい。新たに採用された位置情報サービス「what3words」もかなり便利。

不満な点

不満な点は特になしだが、強いて言えば「燃費性能」か。車というのは「燃費が良ければすべて良し」では決してなく、そのほかにも大切なポイントがさまざまあることは重々承知している。だがそれでも、ユーザーとしては燃費がもうひと声延びてくれるとありがたかった。

デザイン

4

力強いヘキサゴン（六角形）グリルと黒い樹脂パーツによる飾り付けは、初見では「いささかアグレッシブすぎるか？」と感じる場合も多いかもしれない。しかしよくよく見てみれば、スピード感と躍動感のある全体のプロポーションとよくマッチしており、違和感や嫌悪感はすぐに薄れていくはず。またボディカラーによってずいぶん印象が変わるデザインでもある。11.6インチのセンターディスプレイが特徴的なインテリアデザインの質感もまずまず。

走行性能

5

ストロングハイブリッドや高圧ターボなどのわかりやすい“華”はないパワーユニット（2L水平対向4気筒ガソリンエンジン＋モーター）ではある。だがそのパワー感は車格にナチュラルにマッチしており、フルインナーフレーム構造となったスバルグローバルプラットフォームと併せ、ドライバーの意図とイメージにほぼ寸分たがわぬ形でこのSUVを走らせることができる。その結果として気持ちよく、楽しく、そして疲れにくい——ということになる。

乗り心地

5

乗り心地は比較的ソフト（というかしなやか）なのだが、走行中の姿形は常にほぼフラットで、どんな曲面でもどんな路面でも、上屋が大きくゆすられることがない。そして車内の静粛性は高く、新たに設計された「医学的アプローチに基づくフロントシート」も適切に乗員の身体を支えてくれるため、「抜群！」と言っても過言はないほど良好な乗り心地を堪能できる。18インチタイヤの「Limited（リミテッド）」も乗り心地良好だが、17インチを履く「Touring（ツーリング）」はさらに乗り心地良好だ。

積載性

4

CセグメントのSUVとしては標準的な容量のラゲッジスペースが用意されている。またカーゴフックやサブトランクなど、SUVに必要な一通りのモノは普通に付いている。

燃費

3

WLTCモード燃費はFWD車が16.4km/Lで、AWD車が15.8km/L。燃費性能の面ではやや難しい水平対向エンジンの宿命とはいえ、正直もうひと声ほしいところではある。

価格

4

最上級グレードのAWD車は乗り出し価格300万円台後半になるが、「ベーシックなTouring（ツーリング）でもOK」となればAWD車でも総額300万円＋αでも乗ることができ、FWD車であればさらに手頃。昨今のモノの価格と「SUVとしてのクオリティ」から考えると、バーゲンとまでは言えないかもしれないが、「けっこう安い！」とは確実に言える。