五木寛之インタビュー・著書『雨の日には車をみがいて』で読み耽るレシプロ黄金時代の名車の魅力
掲載 更新 carview! 文:杉山 元洋/写真:望月 浩彦 27
掲載 更新 carview! 文:杉山 元洋/写真:望月 浩彦 27
その圧倒的な動力性能で五木さんの心を捉えて離さないのが、第7話『怪物グロッサーの孫娘』に登場するメルセデス300SEL6.3だ。
「元F1ドライバーで、自動車評論家のポール・フレール氏が試乗し“不気味にさえ思えるほど”と表現した車。V8エンジンを搭載した一見普通の4ドアセダンですが、たった毎分2800回転で発生させる51kgf・mという巨大なトルクに、僕も計り知れない妖怪のような魅力を感じた」と五木さん。
“まるでワグナーのよう”とも評する、合理性と非合理性を併せ持った悪魔のような魅力に人は魅了されるのだろうか。五木さんがイメージする300SEL6.3は漆黒のボディで、その色は安西水丸氏のイラストが装丁された『雨の日には車をみがいて』の表紙の黒にも活かされているのだそうだ。
「欧州車の大きな魅力は、ブランド創業者や造り手の生涯がステアリングを通して感じ取れること」と話す五木さんだが、日本車も最近は個性的で洗練されたモデルが増えていると感じているという。
「スカイラインの開発責任者を務めた、日産自動車の桜井眞一郎さんと対談したとき、『ナショナリズムではないが、丸い尾灯は日の丸のつもりでデザインしている』と伺った。“日本国の車”への深い想いを感じ、『ぜひ末永く丸い尾灯を背負って世に出してほしい』と伝えたんです」(五木さん)
外車への気後れもなければ、国産車に対するコンプレックスもない。フラットな目で車を選ぶことのできる現在は、車好きにとっていい時代だという五木さんは、国産・外車を分け隔てなく車に感心を寄せているようだ。
>>EVにはEVらしい個性が宿る
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