アウディQ5ハイブリッド 掟破りの速攻レポート
掲載 更新 carview! 文:木村 好宏
掲載 更新 carview! 文:木村 好宏
世界に冠たるドイツ・メーカーだが自動車の電化(EV やハイブリッド化)には遅れており、ここ2、3年の間にようやくメルセデス・ベンツがS400ハイブリッド、BMWはアクティブ・ハイブリッド7、そしてVWはトゥアレグ、そしてポルシェはカイエンとパナメーラにそれぞれハイブリッドを市場に送り込んできた程度であった。まあ日本と違ってハイブリッドよりも性能も燃費(特に高速巡航時)も良いディーゼルが普及していること、エコ減税がないなどの理由で、電池以外は必ずしも技術的に遅れていたわけではない。
そして今秋からはアウディもQ5ハイブリッドを送り込む。内燃エンジンは2リッターTFSIで最高出力211ps、最大トルクは350Nmを発生する。また電気モーターは45psと210Nmを発生、システム出力は245psと480Nmとなる。この数字がなぜ単純に2つの動力の最大値を合わせた和にならないのかといえば、両者のパワー特性が異なるのでピークがうまく重ならないためである。話を続けよう。変速機はZF製の8速で、トルクコンバーターの代わりに電気モーターと湿式多板クラッチが一体になったハイブリッド・ユニットが組み込まれている。また内燃エンジンの直後にはもう一枚クラッチが存在する。
メーカー発表の走行性能は0-100km/hが7.1秒、最高速度は225km/h、さすがにアウトバーン走行を考慮したハイブリッドだけのことはある。サンヨー製のリチウムイオン電池を搭載し、3km/h程度であれば電気モーターだけでエミッション・フリー走行することができる。しかも平均速度は60km/h、最高で100km/hまでと、かなり速い。また、比較的負荷の少ない平坦な道路でのクルージングでは、130km/h以下までならエンジンがカットされるコースティング走行を行う。その結果、EU定格燃費は100km走行あたり6.9リッター、リッターあたり換算で14.5km走ることになる。
スペインのパルマで開催された試乗会に現れたQ5ハイブリッドだが、エクステリアは小さなハイブリッド・バッジを除けばスタンダードと全く変わらない。ただし専用エアロダイナミック・デザインを持った19インチ・ホイールにはエコタイヤが組み合わされている。加えて床下の半分以上はカバーされ、車高は25mmローダウンされてCd値はスタンダードの0.33から0.32へと低下している。
インテリアも基本的にはスタンダードと同じだがタコメーターの代わりにパワーメーターが採用されている。同時にマルチディスプレイにはハイブリッド・ドライブのエネルギーの流れが表示される。
スタートはドライバーのスロットルペダルの踏み込み方で電気モーターだけ、あるいはブーストを効かせてのダッシュのどちらでも可能である。電気モーターとの繋がりも普通に走っている状態では気にならない。しかしエンジンが低回転(タコメーターが無いので想像するしかないが1500rpmくらい)の場合はやはりギクシャクする。トルコンに替えてに多板クラッチを採用した結果、シフト・ショックを隠しきれない。
エネルギー回生を行うブレーキはS400ハイブリッドのように不自然な感覚はなかった。その他の点も特に不具合はなく、ハイブリッドを意識することなくドライブすることができた。ただし燃費は軽く10リッター/100kmを超え、公称燃費には大きく届かなかった。また、Q5としては初となるEPS(電動パワーステアリング)はやや軽すぎる上にインフォメーション不足で、この日のテストコースにあった山間部のコーナリングでラインを探すようになってしまったのは残念だ。
アウディが最初のハイブリッドにQ5をベースに選んだのは、Q5が世界の多くの国に受け入れられていることと、26リッターの容量を持ったリチウムイオン電池をトランク下に押し込んでもそう目立たないことが挙げられる。
価格は5万3700ユーロ(約645万円)で、2リッター・ガソリン仕様よりも1万2350ユーロ(約150万円)も高い。これだけの価格差があると、ドイツを初めとするヨーロッパではディーゼル仕様に顧客は流れるだろう。3リッターV6TDIのクアトロ仕様でも4万8800ユーロ(約590万円)で買えるのだ。そのようなわけで欧州では余程のハイテク・オタクか物好きな金持ちたちにしかQ5ハイブリッドは売れないだろう。
故にアウディではディーゼルの普及が進まない国々、アメリカや中国にこのハイブリッドを提供しようと考えており、2020年までにはシリーズの20%をハイブリッドにしようと目論んでいる。日本へ輸入されるのは中国やアメリカのずっと後で、早くても来年の末になる。
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