Z4 GT3に試乗。GT300クラス怒涛の走りとは?
掲載 更新 carview! 文:五味 康隆 /写真:BMWジャパン
掲載 更新 carview! 文:五味 康隆 /写真:BMWジャパン
走り出すと、その走りの愉しさと気持ちよさに感激した。
と言うのも、これまたドライバー仲間から「今のGTカーは何周でも安定して走り続けられるくらい運転が楽だよ」と聞いていたが、まさにその通り。速い旋回スピード、重心を下げる為にも低く座り前方が見えないレーシングカー特有の視点、そして音や振動などがダイレクトに体に伝わる感覚に慣れさえすれば、誰でも運転できるほど楽に乗れる。その楽が、愉しみや気持ちよさを得る余裕を生みしている。
参考までに、Z4 GT3の細かなスペックを伝えておこう。3サイズは4387×2010×1210mm。ノーマルのZ4と比べると、全長で約130mm長く、全幅は220mm広く、そして全高は70mm低い。まさにレーシングの基本であるロー&ワイドが突き詰められたフォルム。そこにレース規約での公表値を参照すると、515psを9000回転で発生する4.4LのV8自然吸気エンジンを搭載。価格は1ユーロ=142円換算で約3950万円。レースの世界は金銭感覚が麻痺する世界とも言われている理由が、この車両価格からも解る。
しかし、クルマを間近で見たら、その価格に誰もが納得せざるを得ないはずだ。それは何が凄いのかは解らなくても、見た事の無い作りや、見た事の無いモノなど、全てが特別であることは一目瞭然だからだ。そして、そこから生み出される走りは、一般車しか知らない人からすると異次元だ。
曲がっているのにクルマが傾かない感覚や、体の内蔵などがカーブの外側に偏るほどの旋回力。そもそもで言えば、クルマが地面に強力に吸い付くような感覚。さらに言うと、踏めば踏むほど止まる暴力的なストッピングパワー。よく「レーシングカーは加速が凄いんですよね?」なんて聞かれるが、今のレーシングカーは速くなりすぎた結果、エンジンに吸気制限を施して出力規制(この車両は515ps)を行っており、レーシングカーの凄さはむしろ、曲がる力や首が痛くなるほど止まる性能にこそあるとも言える。その絶対性能の高さが、攻め込んだレーシングスピードの領域でも、ドライバーの意のままに動く特性を提供するというわけだ。
逆に言えば、そのようなスピード領域でも安定と安全と運転のし易さを提供する自信がBMWにはあるので、ライセンス保持者とは言え、久々にレーシングカーに乗るメンバーを制限無しで自由に走らせたのだろう。
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