大幅アップグレードの裏側を探る
’20モデルで大幅なモデルチェンジを行なったCRF1100Lアフリカツインシリーズ。フレームの刷新、6軸IMUの採用、電子サスペンションのESモデルなど多くの内容が盛り込まれているのは前稿まで詳細にお伝えしてきた通り。本稿ではラストとして、アフリカツインシリーズに込められた思いとこだわりについて、ホンダの開発者から直接話を聞いた。
ホンダ アフリカツイン開発者に聞く「排気量が増しても、車体が重くなってしまえば意味がありません」〈動画あり〉
●文:谷田貝洋暁 ●写真:関野温
YM:新型アフリカツインのADVには、電子制御サスペンションが装備されましたが、どうしてこの電子制御サスペンションを搭載しようと思ったのでしょうか?
開発者(以下:開)弊社でいうとCBR1000RRで初搭載した電子制御サスペンションですが、最大のメリットは相反する特性を成り立たせられることです。そういう意味ではアドベンチャーモデルにこそ必要な機能と考えました。
YM:車両重量が重く、高速道路からオフロードまで走らなければならないからですか?
開:そうです。アドベンチャーモデルは走るフィールド、使い方も色々です。ワインディングや高速道路も走れば、オフロードも走行し、時にはジャンプもする。それでいて荷物をたくさん積んでロングツーリングするような場合でも快適でなければなりません。
YM:他のジャンルのバイクに比べて求められる性能の振れ幅がとても広いわけですね。
開:それにアドベンチャーモデルは、サスペンションストロークがロードスポーツよりも長めに確保されている。そんな長めのサスペンションストロークと電子制御サスペンションを組み合わせると、本当にいろいろなことができる。〝どこにでも行ける〟〝どこまでも行ける〟というアフリカツインのキャラクターにマッチした機能だと思ったことが採用の最大の理由ですね。
YM:サスペンション的に、より過酷な環境にさらされるアドベンチャーツアラーだからこそ必要で、有用な機能だったわけですね。
開:アフリカツインを買ったら、オーナーは1台でなんでもするはず。ただシチュエーションごとにサスペンションのセッティングを変えるのはとても負担だと思うんです。それがボタン一つでセッティングが変えられる。道の状況が変わっても、それだけで同じように走り続けられるんです。
YM:4種類の走行モードで、それぞれソフト、ミディアム、ハードの基本設定がされていますが、そこからさらに細かく減衰力をセッティングできるようですが、素人考えでいろいろいじってしまってもいいのでしょうか?
開:CBRのような限られた場所での走行性能を突き詰める使い方とは違い、アフリカツインは、様々な場所を走ることを重視しています。そのために設定を容易できるようなところを目指して作り上げています。ですので設定を変更しても大きくバランスを崩してしまうようなことはありません。
YM:それは安心して楽しめそうです。
―― 新生アフリカツインの開発者たち。DCTやトラクションコントロール、電サスなどの電子制御をはじめ、新採用のタッチパネル式モニターにアップルカープレイとチャレンジ要素は多岐にわたる。
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