使い方次第で、さまざまな表情を見せるグリルレスの意匠
東京モーターショーで公開されたホンダ フィットの新型モデルが間もなく発売です。デザイナー氏によれば柴犬をイメージしたという顔つきは、いかつい顔が増えているなかで新鮮なイメージを受けます。グリルレスの意匠というのが、そのポイントといえるでしょう。
さて、いまどきの視点でいえばグリルレスというのは、フレンドリーな雰囲気のスタイリングにつながると感じてしまいますが、必ずしもそうとは限りません。使い方次第で、さまざまな表情を見せることができるということを経験してきました。
そんなことを考えたのは過去にあったグリルレスの日産車を思い出したから。1989年にデビューした「インフィニティQ45」は、ラージセダンですが、あえてグリルレスとして新しいトレンドを生もうとチャレンジをしました。フレンドリーを目指したわけではないでしょうが、グリルによる威嚇感のない表情は、新しい高級車を表現しつつ、スマートに感じられたものです。とはいえ後期型ではフロントグリルが装着されました。結果的に、オーソドックスなスタイルを市場は求めたのです。
同時期の日産ラインナップには「プレセア」という小型セダンもありました。こちらもグリルレスのフロントマスクが印象的です。非常に美しいハードトップセダン(いまでいう4ドアクーペ)として女性ユーザーに支持されたものの、大きなトレンドにはならないまま二代目モデルではグリルレスというアイコンを捨ててしまった記憶があります。個人的には、新型フィットのスタイリングには、プレセアが目指したものと似た世界観を感じます。フロントグリルをなくすことで「凛」とした表情を感じるクルマです。
さかのぼると日産には「Be-1」というパイクカーが、グリルレスのスタイリングを採用していました。1987年に誕生した、この3ドアハッチバック車はベーシックカー「マーチ」のメカニズムを利用して、ユニークな外観という付加価値を与えたモデルで、スマッシュヒットとなりました。このクルマにつづいて、「パオ」や「フィガロ」といったパイクカー・シリーズが続いたのはバブル期の思い出です。それにしてもBe-1のグリルレスな顔つきをあらためて見ると柔和なだけでなく、面の張りがしっかりとあり強さも感じさせます。
グリルレスといえば「鉄仮面」が思い浮かぶベテランドライバーもいるのでは?
力強さのあるグリルレスといえば、1983年に「スカイライン」のマイナーチェンジで登場した通称“鉄仮面”マスクを思い出すというファンも少なくないでしょう。RSグレード系に採用されたグリルレスのフロントマスクは、ここまで見てきたようなやわらかさはなく、まさしく甲冑的なイメージでマッシブな表情を実現していました。いまになると冷却性能に逆行するようなデザインをなぜスポーティに感じたのか不思議に思うかもしれませんが、1980年代当時としては、とても新鮮でこれこそがスカイラインらしいスポーティスタイルと市場は受け止めていたのです。
このように、ごくごく一部の歴史をふりかえって見ても、グリルレスという挑戦はありましたし、さまざまな表現が可能なことがわかります。ホンダは新型フィットだけでなく、フリードのマイナーチェンジでもグリルレスのフロントマスクに変更しています。2020年代のグリルレスデザインがどのように評価されていくのか、とても興味深いといえそうです。
文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)
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