現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 【コンパクト・クロスオーバーの新基準】フォード・プーマ STラインに初試乗

ここから本文です

【コンパクト・クロスオーバーの新基準】フォード・プーマ STラインに初試乗

掲載 更新
【コンパクト・クロスオーバーの新基準】フォード・プーマ STラインに初試乗

待ち望んできたコンパクト・クロスオーバー像

text:Matt Prior(マット・プライヤー)

【画像】フォード・プーマ 全80枚

translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)


わたしたちは長い間、コンパクト・クロスオーバーという分野で、新基準を設定するモデルを待ち望んできた。遂に登場したフォード・プーマは、その基準をそっと示したのではなく、大きく超えてきたといっていい。

フォード・プーマは、フィエスタをベースにした背の高いSUV風クーペ。先代の車高の低いプーマの存在も懐かしいが、時代に合わせて変化した。自動車メーカーの稼ぎ頭は、ステーションワゴンやサルーンからクロスオーバーへと交代している表れだ。

ボディはひと回り大きくなった。フィエスタと比べると54mm高く、146mm長い。ホイールベースも96mm伸ばされ、全幅は71mm広げられている。

クロスオーバーの場合、活発な運動性能を得ようとすると、サスペンションを引き締めるために乗り心地で難が出ることが多い。プーマは全幅が広がり、トレッドは58mmもフィエスタより広げられた。全幅を広げることで伸びた全高を補い、重心高が上がることを打ち消している。

メカニカルな構成はシンプル。すべてのプーマには、当面1.0Lのガソリン・ターボエンジンが搭載される。追って1.5Lのディーゼル・ターボエンジンも追加になる予定。またフォードらしく、ホットモデルも登場するだろう。

3気筒の1.0Lエンジンは、4種類の選択肢から選べる。通常の最高出力95psと124psに、マイルドハイブリッドの付く125psと155psが用意される。

電動化の進化を匂わせる空き地

マイルドハイブリッドはフォードが「mHEV」と呼ぶシステム。スターター・ジェネレーターが、ターボラグを埋めて低回転域でのトルクを太くする。二酸化炭素の排出量を減らし、ほんの少しプーマを速くしてくれる。

スターター・ジェネレーターのモーターは15psと5.1kg-mの性能を持つが、基本的には低回転域で有効となる。「mHEV」と聞くとEV寄りのハイブリッドに思えるが、マイルドな内容のクルマには合っていない名前に感じる。

ギャンブル依存症を止めるキャンペーンのスローガン、「楽しく(FUN)感じなくなったら止めよう」の、FUNが太文字で書かれていることを思い出してしまった。

プーマは電気だけの力では走れない。それでもフォードが掲げる、2022年までに販売する半数以上のモデルに何らかの電動化技術を搭載する、という半数にプーマも加えることはできる。今のところ、プーマのEV版やPHEV版の話は聞こえてこない。

しかし、荷室のフロア下には、このプーマに積まれている控え目なリチウムイオンバッテリー以上に大きいバッテリー用の空間が確保されている。フォードが次の一手に備えて確保した「空き地」だ。

この空間は、スターター・ジェネレーターを搭載するマイルドハイブリッド版では、メガボックスと呼ばれる。聞こえに興奮しそうになるが、実際は大きな排水口の空いた、容量80L分のプラスティック製ケースが収まっている。

つまり、泥の付いた物を積んでも簡単に洗い流せる荷物おき。フォードは今後、バッテリーサイズの大きさに合わせて、このメガボックスの大きさを変えることもできるはず。通常のガソリンエンジン版の場合、スペアタイヤを積むことができる。

質感は良くても個性が薄いインテリア

今回の試乗車は、メガボックスが付くマイルドハイブリッドの155ps版。0-100km/h加速は9.0秒で、燃費は18.0km/Lとなる。STラインXというトリムグレードを装備し、価格は2万ポンドをわずかにオーバー。このクルマの場合は、2万3645ポンド(335万円)だ。

車内は特に強い個性を放つ部分はない。ダッシュボードには突き出るかたちで8.0インチのタッチモニターを搭載され、アップル・カープレイが無償で使える。ドライバーの正面には、フルモニターとなるデジタルメーターがレイアウトされている。

ドアパネルの上部にはソフト加工された素材が用いられているが、硬いままの部品も少なくない。組み立ての質感は高く、クロームメッキされている部品の一部は、実際に金属のように見える。だが、すべてのフォードマークを取り外したら、ヒュンダイの車内だと聞いても疑わないかもしれない。

シートはフラット気味ながら、人間工学的には良好。アイドリング時のエンジンは静か。試乗車には6速マニュアルが搭載されていたが、オートマティックも選べる。それは別の機会で確かめたい。マニュアルの場合、ペダルの重み付けが適度で、運転はしやすい。

フォード製モデルの多くは、ドライバーの気持ちをそそり、印象の良い一貫した操縦性を備えている。プーマにもしっかりそれが受け継がれ、クロスオーバーだとたかを括っていると、その良さに感銘するだろう。

走りと乗り心地とのオリジナルブレンド

ところが最初の驚きは、フォードとしてはステアリングが妙に軽いこと。軽く手に添えて支持する程度の操舵力で向きを変えられる。パワーアシストを弱めると、トルクステアが強く感じられるようになるためだろうか。

ドライビングモードはいくつか選択できる。スポーツモードを選べば、ステアリングは重くなり、印象は良くなった。筆者があえて重めのステアリング設定にしたい、珍しい1台といえる。

同じように、ブレーキペダルの踏み初めの感触が軽すぎる。ストットルも、クラッチを切ると反応が尖すぎるきらいがある。まるでスターター・ジェネレーターとエンジンとの調和が取れていないようだ。

それ意外の場面では、エンジンはスムーズで静か。感動的に良い。トランスミッションは歯切れ良く、乗り心地は全般的に落ち着きがある。フォードらしく安心できる部分だといえる。

コーナリング時のボディロールは、立ち上がりで若干鋭い。ミニ・カントリーマンのように、機敏さを強く感じさせるものなのだろう。しかし一旦落ち着けば、コーナリング時の姿勢は安定感が高く、不安感はない。

セアト・アローナの方が進行方向を変える鋭さは高いかもしれない。だが向こうは、どこかスケートボードのような乗り心地がある。ライバルモデルと、英国の道で比較試乗をして違いを確認したいところだ。

第一印象では、プーマの方が操縦性と乗り心地、機敏性とが融合し、秀でたオリジナルブレンドに仕上がっている。ライバルより優れているように思える。

多くのドライバーが納得できるクロスオーバー

筆者が新しいプーマに試乗する1週間ほど前、2016年モデルのフィエスタを運転する機会があった。型落ちのフィエスタは、完璧ではないにしても、どんな今のクロスオーバーより楽しいクルマだと感じた。このプーマよりも。

フォードには、コンパクトSUVとしてエコスポーツという冴えないモデルもある。2度目のモデルチェンジを経ても、背の低いハッチバックから乗り換えるドライバーのすべてを満足させる仕上がりではない。他メーカーの競合モデルも同様だといえるだろう。

新型フォード・プーマの運転は楽しい。正直、まだ夢中になれるほどではないけれど。だとしても、フォードはこのプーマで、多くのドライバーが納得できる楽しいコンパクト・クロスオーバーを完成させたといえそうだ。

フォード・プーマ 1.0エコブースト 155 STラインXのスペック

価格:2万3645ポンド(335万円)
全長:4207mm
全幅:1805mm
全高:1537mm
最高速度:204km/h
0-100km/h加速:9.0秒
燃費:18.2km/L
CO2排出量:126g/km
乾燥重量:1280kg
パワートレイン:直列3気筒999ccターボチャージャー+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:155ps/6000rpm
最大トルク:19.3kg-m/1900-5500rpm
ギアボックス:6速マニュアル

こんな記事も読まれています

衝撃! ”空力の鬼才”エイドリアン・ニューウェイがレッドブル離脱か
衝撃! ”空力の鬼才”エイドリアン・ニューウェイがレッドブル離脱か
motorsport.com 日本版
インディカー初参戦のテオ・プルシェールが次戦も続投へ。「彼の戦い方に感銘を受けた」とチーム代表
インディカー初参戦のテオ・プルシェールが次戦も続投へ。「彼の戦い方に感銘を受けた」とチーム代表
AUTOSPORT web
粉っぽい空気に要注意!! クルマの健康寿命を縮める[粉]の正体と対処法
粉っぽい空気に要注意!! クルマの健康寿命を縮める[粉]の正体と対処法
ベストカーWeb
カブト、新グラフィックモデル『KAMUI-3 RIDGE』を追加。2024年4月から発売
カブト、新グラフィックモデル『KAMUI-3 RIDGE』を追加。2024年4月から発売
AUTOSPORT web
ニッサン・フォーミュラE、伝統のモナコへ。連続する好成績に「チームの士気は高い」と監督も期待
ニッサン・フォーミュラE、伝統のモナコへ。連続する好成績に「チームの士気は高い」と監督も期待
AUTOSPORT web
変なあだ名のクルマと言わないで! あだ名は[愛されキャラ]の証なんです
変なあだ名のクルマと言わないで! あだ名は[愛されキャラ]の証なんです
ベストカーWeb
メルセデスの「SL」の始祖は「300SL」だった。ル・マン24時間でも優勝したアイコンはなぜ生まれ、どのように発展したのでしょうか?
メルセデスの「SL」の始祖は「300SL」だった。ル・マン24時間でも優勝したアイコンはなぜ生まれ、どのように発展したのでしょうか?
Auto Messe Web
「4EVER Untamed」のキャッチを掲げた第6世代の新型トヨタ・4ランナーが米国デビュー
「4EVER Untamed」のキャッチを掲げた第6世代の新型トヨタ・4ランナーが米国デビュー
カー・アンド・ドライバー
フォルクスワーゲン「ポロGTI」誕生25周年!記念モデルを227台限定で発売
フォルクスワーゲン「ポロGTI」誕生25周年!記念モデルを227台限定で発売
グーネット
ヒョンデ 新型高性能EV「アイオニック5N」発売!50台限定の特別仕様⾞も設定
ヒョンデ 新型高性能EV「アイオニック5N」発売!50台限定の特別仕様⾞も設定
グーネット
日産 コネクテッドサービス「ニッサンコネクト」が進化!アプリから操作できる機能が倍増
日産 コネクテッドサービス「ニッサンコネクト」が進化!アプリから操作できる機能が倍増
グーネット
メルセデス・ベンツ 「GLCクーペ」PHEVモデル登場!電気モーターのみで118キロ走行可
メルセデス・ベンツ 「GLCクーペ」PHEVモデル登場!電気モーターのみで118キロ走行可
グーネット
マツダ、新型電動車セダン「MAZDA EZ-6」とSUVコンセプト「MAZDA 創 ARATA」を北京モーターショーで初公開
マツダ、新型電動車セダン「MAZDA EZ-6」とSUVコンセプト「MAZDA 創 ARATA」を北京モーターショーで初公開
月刊自家用車WEB
加藤陽平TD、転倒後も「表彰台にはチャレンジできるなと思っていた」。新加入ダン・リンフットの印象も/EWCル・マン24時間
加藤陽平TD、転倒後も「表彰台にはチャレンジできるなと思っていた」。新加入ダン・リンフットの印象も/EWCル・マン24時間
AUTOSPORT web
ダッシュボードは大改善 フォルクスワーゲンID.5 GTXへ試乗 「7」と同モーターで339ps
ダッシュボードは大改善 フォルクスワーゲンID.5 GTXへ試乗 「7」と同モーターで339ps
AUTOCAR JAPAN
「ミウラ」「カウンタック」「ストラトス」はガンディーニの作でした! オートモビルカウンシル2024で「追悼展示」が急遽開催
「ミウラ」「カウンタック」「ストラトス」はガンディーニの作でした! オートモビルカウンシル2024で「追悼展示」が急遽開催
Auto Messe Web
クルマの買取もグーネットアプリにおまかせ!相場価格がわかる新サービス、3つの便利なポイント
クルマの買取もグーネットアプリにおまかせ!相場価格がわかる新サービス、3つの便利なポイント
グーネット
「お金なさすぎて家賃払えなくて…」大阪出身“売れっ子芸人”が高級SUV「Gクラス」を納車! 東京で“人生初”の車購入「盛山さんがベンツ購入って感慨深い」「夢あるなー」と反響
「お金なさすぎて家賃払えなくて…」大阪出身“売れっ子芸人”が高級SUV「Gクラス」を納車! 東京で“人生初”の車購入「盛山さんがベンツ購入って感慨深い」「夢あるなー」と反響
くるまのニュース

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村