どんなクルマ? どんなサイズ?
text:Shigeo Kawashima(川島茂夫)
【画像】CLA 200 d/A250 4マティック・セダン【比較】 全75枚
photo:Keisuke Maeda(前田恵介)
源流にはクラウンやセドリックなどの4ドアHT(ハードトップ)人気があるのだが、4ドア・クーペの始祖といえば1985年に登場したカリーナEDだろう。
同車のヒットによりマツダからペルソナ、ニッサンからプレセアなどの同コンセプト車が登場し一大市場を築いていく。
そして30年の時を経て再興を迎えることになる。その火付け役となったのがメルセデス・ベンツCLSクラスである。ボディ形状は昔風に言うならピラードHT。深く傾斜しトランク部との連続性を持たせたリアピラーによるクーペフォルムを特徴とする。
他社から同コンセプトのモデルが続々と登場したことを考えれば、成功か否かは語るまでもない。
このCLS同様のコンセプトでAクラスをベースに開発された4ドア・クーペがCLAクラスだ。狙いは外観で一目瞭然だが、メルセデス・ベンツの真面目さを実感するモデルでもあった。
車体寸法をAクラス・セダンと比較すると全長が140mm長く、全幅が30mm拡大され、Cクラス・セダンとほぼ同サイズとなっている。
内装/後席 実用性も両立
セダンより格上の4ドア・クーペなら当然とも思えるが、不可解に感じられるのは全高である。
Aクラス・セダンと変わらないのだ。クーペフォルムと言えば実用系に対してワイド&ローが基本。「ワイド」は当て嵌まるが、「ロー」ではない。
後席に乗り込むと意外と広い。狭くないというのが正しいかもしれないが、レッグスペースはAクラス・セダンと変わらず、ヘッドルームは多少狭くなるが、実用性に決定的な影響を与えない。
サイド・ウインドウからの見晴らしや圧迫感は強めでも、同クラスのセダンと比較して大きく劣る部分はない。Bクラス・セダンとして展開してもいいくらいだ。
Aクラス・セダンから延長された全長のほとんどは、リア・オーバーハングの拡大に回される。ルーフラインから連続的な曲面を構成するリア・ウインドウまわりは、延長されたリアデッキへと繋がる。そのため、後席居住空間への悪影響は最小限となった。
クーペ的フォルムの実現のためキャビン後部を前側に潰すのではなく、後方に延伸させたことで実用性との両立を図ったわけだ。最新ファッションを着こなす品行方正な優等生といったモデルなのだ。
どんな感じ?
CLAクラスには2Lディーゼルと2Lターボの2仕様用意されている。試乗したCLA 200 dはCLAクラスのベーシック仕様に当たる。
とはいえ搭載エンジンは32.6kg-mの最大トルクを誇り、Aクラス(5ドア車)ではAMG車を除いたラインナップの最上位モデルに搭載される。上級志向の強いモデルに相応のパワートレインである。
4ドア・クーペのスペシャリティなキャラに実用性能と燃費が売りのディーゼルの相性も気になるが、これは心配無用。さすがにディーゼルでは「カムに乗る」ような高回転の切れ味はないが、4000rpmを超えても失速感はない。少なくとも高回転が苦手のエンジンではない。
もちろん、回さずに速いが身上。1500rpm前後の巡航回転数にしても、加速中の使用回転レンジの低さにしても太いトルクをそのままに感じさせてくれる。また、ペダルワークに対するトルクの増減もリニアであり、勾配の緩急が頻繁な山岳路での速度コントロールも容易。
エンジンフィールも軽く、振動や騒音も少ない。ガソリン車とエンジンフィールは異なるがノック音などディーゼル感覚も少ない。心地よく使えて頼もしいパワートレインだ。
ベンツ車らしさ
フットワークの評価は、ちょっと微妙。登り勾配の急加速で段差を乗り越えると前軸まわりがばたついたり、リアサスからの突き上げが目立ったりと、剛と柔の両面で気になる部分があった。
と指摘しつつ、少々重箱の隅を突いているような気もするのだが、同日に試乗したA250 4マティック・セダンの印象が良かっただけに気になってしまう。
ただ、CLAのキャラに不似合いとは思わない。
僅かに荒っぽいヤンチャな感じがスポーティ感や若々しさを演出。神経質な反応を抑え、揺れ返しなどの雑味が極めて少ない操縦感覚や、高速でうねり路に入ったときの姿勢の安定などの安心と扱い易さはベンツ車ならでは。そこを押さえた上での「外した」感じは悪くない。
凄みある走りと快適な走りの二元論で評価すれば中途半端と誤解されかねないが、上手に按配を付ければ楽しく心地よく走れる。
フォーマルを着崩す、正統のカジュアル、外観の印象もそんな感じだが、走りのまとまりも同様である。
「買い」か?
セダンと4ドア・クーペの定義は曖昧である。セダンに分類されていてもスタイル重視で後席を虐めているモデルもある。そう考えれば、CLAはセダンに分類してもおかしくないほど後席の居心地への配慮がある。
ユーザーの「4ドア」に対する実用性への期待を裏切らない、と言い換えてもいいだろう。
実用面で決定的な違いがなければAクラス・セダンとの比較検討は必須。もちろん、決め手はルックス。
同仕様のAクラス・セダンとの価格差は約50万円である。相応の嗜好的価値を見出せるかどうかが分岐点。ただ、これは投資効果の単純な比較でしかない。
試乗モデルのCLA 200 d相応のモデルはAクラス・セダンにはなく、CLAクラスにはA180セダン系に相当するモデルがない。ラップするのは上位設定となる「250 4マティック」のみである。ちなみにA&Bクラス(5ドアHB)には最上位仕様(除くAMG車)として「200 d」をラインナップし、CLA 200 dとB200 dの価格差は50万円だ。
欧州プレミアムの入口に
乗り心地にもう少し洗練感が欲しいが、動力性能もフットワークもプレミアムに相応。
最小回転半径が小さく、車体サイズのわりに車両感覚もつかみやすく、そういった状況での運転支援も充実しているので駐車場や狭い道での取り回しも良好。
先進の運転支援機能もインフォテイメントも充実。実質530万円がエントリーになる価格をして買い得とは言わないが、ベンツ車を選ぶ意義を実感。
その信頼感は初めて欧州プレミアム車を選ぶユーザーにも勧められる。予算建てに無理がなく、嗜好的に気に入ったならそう悩む必要はないだろう。
メルセデス・ベンツCLA 200 d スペック
価格:472万円
全長:4695mm
全幅:1830mm
全高:1430mm
最高速度:-
0-100km/h加速:-
燃費:18.4km/L(WLTCモード)
CO2排出量:-
車両重量:1590kg
パワートレイン:直列4気1949ccディーゼル・ターボ
使用燃料:軽油
最高出力:150ps/3400-4400rpm
最大トルク:32.6kg-m/1400-3200rpm
ギアボックス:8速オートマティック
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