現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 【国内公道初試乗】マツダ3 スカイアクティブXの実力とは。思ったよりもSPCCI作動領域が広い!

ここから本文です

【国内公道初試乗】マツダ3 スカイアクティブXの実力とは。思ったよりもSPCCI作動領域が広い!

掲載 更新
【国内公道初試乗】マツダ3 スカイアクティブXの実力とは。思ったよりもSPCCI作動領域が広い!

やっと公道で乗れたスカイアクティブX

ついに乗れる! 内燃機関の新たな扉を開くガソリンエンジンの革新、「SKYACTIV-X(スカイアクティブ・エックス)」ことSPCCI(火花点火制御圧縮着火)。国内販売開始は、もともと2019年5月のマツダ3発表から約4カ月後の10月予定だったが、欧州仕様に倣ったハイオク対応変更でさらに2カ月を要したから、その感慨もひとしおである。

乗り心地に課題あり。ダイハツ ロッキー/トヨタ ライズに乗ってみた

レギュラー仕様で開発が進められた15.0の圧縮比はそのままに、ハイオク仕様で欧州と同スペックの180馬力・22.8kgmを発揮。同じ2Lのガソリン「SKYACTIV-G(スカイアクティブ・ジー)」に対し、パワー・トルクともに約15%の向上を見ている。燃費のよさも特徴で、WLTCモード17.2km/L(FF・6速AT)と約10%アップを実現。すべてはSPCCIによって燃焼効率が大幅に高められた結果だ。

搭載グレードは、その名もズバリ「X」。試乗車のファストバックX Lパッケージ(FF・6速AT)は、すでにエンジンが掛かっていた。アイドリングは車外でも「G」より静かな印象。エンジンを吸音材で囲んだカプセル化の効果だろう。

センターディスプレイにはパワーユニットの「システム作動状態」が表示可能だ。発進でアクセルを踏み込むと、燃焼状態にすぐ「SPCCI」の表示が現れた。つまり、アイドリングは通常のガソリンエンジンと同じ火花点火(SI)である。

ディーゼルに近い圧縮着火(CI)をSPCCIで可能にした目的は、リーンバーン(希薄燃焼)の実現にある。リーンバーンといえば、かつては各メーカーが低燃費に特化したエンジンを模索したが、「X」はさにあらず。「G」より全域で10%以上トルクアップというとおり、トルク感は走り出しの1000回転台から2L・NAとは思えない力強さだ。旧聞に属するが、初代アクセラに設定のあった2.3L・NAは171馬力・21.8kgmで、今ではパワー・トルクともに「X」が上まわる。

SPCCIは軽負化領域のみならず!

しかも、SPCCIの作動領域がじつに広い。負荷の低い平坦路の巡行だけでなく、上り勾配でアクセルを全開にしてもSPCCIの表示はついたままだ。「X」は運転状況に応じて燃焼状態をCIとSIのどちらかに切り換えるのではなく、両者の割合を変化させる。CI(=リーンバーン)の割合がSI(=ストイキ)に対して多いほど、燃費がよくなるという具合。

ワイドバンドなCIには、マツダ初搭載のMハイブリッドも一役買っている。CIが難しい低回転域の高負荷ではISGのモーターアシストで動力性能をカバーし、CIをキープしているという。ISGはアイドリングからのエンジン再始動にも威力を発揮。その速さと滑らかさはフルハイブリッド車(HV)並みで、発進・停止における上質さも身につけている。

そして、フル加速を続けると約5000回転でSPCCIの表示が消え、SIに遷移。エンジン音とともにパワーがグンと盛り上がり、約6800回転のレッドゾーンまで一気に吹き上がる。その速さはスペックどおりで、シビック ハッチバックと日系Cセグメント最速の座を争う(同タイプRを除く)。スカイアクティブG 2.0の20S系や同D(1.8Lクリーンディーゼル)のXD系ではパワーにもの足りなさを覚える場面もあるが、Xでは期待どおりシャシーの速さに見合う動力性能を獲得している。

そのシャシーは20S系より硬質感を増した印象だ。ステアリングに感じるフロントの重さは、XD系に共通するフィーリング。車重は20S系より80kg重く、サスペンションは相応に引き締められている。ハンドリングはもちろん初期から正確で、Xの速さを十分に受け止める実力を備える。ただ、タイヤサイズは20S系やXD系と同じで、競合のスポーツモデルより1~2サイズ細い。このあたりの力関係については、あらためて比較試乗で確かめたいところだ。

X+MT+4WDの出来に驚きを隠せず!

Xは、6速MT車にチョイ乗りする時間も設けられていた。シフトは意外とユルい感触だが、エンジンのピックアップのよさや駆動力のダイレクト感は、やはりAT車をさらに上まわる。加速感も迫力を増し、これもまさにシビック ハッチバック・MT車の好敵手。

だが、じつはそれ以上に驚いたことがある。シャシーフィールが明らかに違うのだ。AT車より操舵力がすっきり軽く、サスペンションは路面に対していっそうしなやかに追従する。旋回中や立ち上がりにおけるアクセルとステアリングの連携も、じつに自然。クルマが自分の手足のように動く、これぞ人馬一体!の走りなのである。

ナゼこんなに違うのか。足まわりの味付けはAT車と変わらない。トランスミッションの重量差はMT車が20kg軽いが、それだけでこれほどの違いが出るものか……。

そんなギモンを開発陣にぶつけると、要因として浮上したのは駆動方式だ。MT車の試乗車は4WD。マツダ自慢のi-ACTIV AWDもマツダ3でさらに進化し、旋回時におけるヨーレートのフィードフォワード制御を加えている。後輪を駆動する領域はオンロードまで拡大し、今回試乗したワインディングでも「駆動トルクの2、3割は後輪に配分されているはず」(開発担当者)という。その分、前輪はタイヤグリップを旋回に使うことができ、言われてみれば立ち上がりの感触には思い当たるフシがある。また、前後駆動力配分の積極的な制御は車両の姿勢にも好影響をもたらす。

そういえば、筆者はマツダ3の4WDをXDの6速AT車で一度経験している。ワインディングは走っていないが、Xのような印象は特に受けなかった。パワーユニットとの組み合わせによってフィーリングが多少なりとも異なる可能性は、もちろんある。

1.5Lの実力も侮れない

今回はマツダ3で残るもう1つのエンジン、SKYACTIV-G 1.5にもチョイ乗りできた。この1.5Lガソリンはファストバックのみの設定で、試乗車はXなどと同じ18インチが標準の15Sツーリング(FF・6速AT)だ。エンジンスペックは基本的に先代アクセラを踏襲する。トルクバンドは排気量を意識させないほど頼もしく、吹き上がりも相変わらず快活。1.5L同士の新旧を比較すると車重は大人1人分ほど増えているが、ふだん使いには十分な加速性能が確保されているに違いない。タイトコーナー続く下り勾配では、フロントの軽さを利して20S顔負けの速さを秘める。

15S系は手ごろな価格と低燃費が最大のウリだが、WLTCモード燃費はXがさらに上。マツダが試乗会拠点の箱根・十国峠周辺で計測したデータでも、20S系の15.1km/Lに対してX系は18.2km/L(ともにFF・6速AT)と、約20%上まわる数値をマークしている。燃費が1~2割いいため、ハイオクを使ってもトータルの燃料代はレギュラーと変わらないというのが、マツダのアピールである。

その実力はぜひ自分でも検証したいところ。ほかにも、さまざまな走行シーンにおけるSPCCIの実力、Mハイブリッドの効果、さらにはATとMTの違い、FFと4WDの真相など、Xにはまだまだミステリアスな部分が多い。そして、20S系より70万円近く、XD系に対しても約40万円高いだけの魅力があるかどうかも。

果たしてXは何者なのか。その解明にこれほど心引かれるクルマはそうそうない。

◼マツダ3 SKYACTIV-X搭載モデル価格帯
ファストバック:319万8148(FF)~368万8463円(4WD)
セダン:319万8148円(FF)~361万6963円(4WD)

◼マツダ3 SKYACTIV-X搭載モデル主要諸元
グレード:ファストバック X Lパッケージ(FF・6速AT)
全長×全幅×全高:4460mm×1795mm×1440mm
ホイールベース:2725mm
車両重量:1440kg(4WD:1510kg)
総排気量:1997cc
ボア×ストローク:83.5mm×91.2mm
圧縮比:15.0
エンジン最高出力:132kW(180ps)/6000rpm
エンジン最大トルク:224Nm(22.8kgm)/3000rpm
使用燃料・タンク容量:プレミアム・51L(4WD・48L)
モーター最高出力:4.8kW(6.5ps)/1000rpm
モーター最大トルク:61Nm(6.2kgm)/100rpm
駆動用バッテリー種類・容量:リチウムイオン電池・10Ah
WLTCモード燃費:17.2km/L(4WD:16.2km/L)

〈文=戸田治宏 写真=山内潤也〉

こんな記事も読まれています

ホンダ新型「SUV」世界初公開! 未来感スゴい新型「P7」登場! 24年末以降に中国で発売へ
ホンダ新型「SUV」世界初公開! 未来感スゴい新型「P7」登場! 24年末以降に中国で発売へ
くるまのニュース
初心者向け安全運転スクール! スズキが「U30スズキセイフティスクール」の開催日程を発表
初心者向け安全運転スクール! スズキが「U30スズキセイフティスクール」の開催日程を発表
バイクのニュース
カローラクロス対抗馬完成!? 欧州で新型キャシュカイ堂々発進 日本導入はマジであるのか
カローラクロス対抗馬完成!? 欧州で新型キャシュカイ堂々発進 日本導入はマジであるのか
ベストカーWeb
アルファロメオ『ジュニア』がミラノ・デザインウィーク2024に登場
アルファロメオ『ジュニア』がミラノ・デザインウィーク2024に登場
レスポンス
整備事業者に新展開!! オートバックスカーズのフランチャイズ加盟店を募集! 事業拡大で期待できることとは?
整備事業者に新展開!! オートバックスカーズのフランチャイズ加盟店を募集! 事業拡大で期待できることとは?
ベストカーWeb
ボッタス、ザウバーの”ピット作業問題”の解決はまだまだ先と示唆「できればイモラまでに」
ボッタス、ザウバーの”ピット作業問題”の解決はまだまだ先と示唆「できればイモラまでに」
motorsport.com 日本版
マツダがスゴい「ロードスター」お披露目! マツダ3も同時公開!? 「走る歓び」進化させるS耐参戦体制発表へ
マツダがスゴい「ロードスター」お披露目! マツダ3も同時公開!? 「走る歓び」進化させるS耐参戦体制発表へ
くるまのニュース
アウトビルトジャパン編集部流「オートモビルカウンシル2024」探訪記
アウトビルトジャパン編集部流「オートモビルカウンシル2024」探訪記
AutoBild Japan
スポーツカーでもミニバンでもOKだった! でも技能検定車には基準あり! 知られざる「教習車」の選ばれ方を元教習所教官が解説
スポーツカーでもミニバンでもOKだった! でも技能検定車には基準あり! 知られざる「教習車」の選ばれ方を元教習所教官が解説
WEB CARTOP
電動アシスト自転車、24年モデルが続々ラインアップ…新型ヤマハ『PAS』のバラエティ豊かな5機種を一挙紹介
電動アシスト自転車、24年モデルが続々ラインアップ…新型ヤマハ『PAS』のバラエティ豊かな5機種を一挙紹介
レスポンス
「本田宗一郎とともにホンダを創業した藤澤武夫の功績」【自動車業界の研究】
「本田宗一郎とともにホンダを創業した藤澤武夫の功績」【自動車業界の研究】
LE VOLANT CARSMEET WEB
金色”ド迫力”エアロが凄い日産「新型GT-R」実車公開へ! 極太センターマフラー&巨大ウィングで「最高の称号」も獲得!? ゴールデンな爆裂エレガントモデルとは
金色”ド迫力”エアロが凄い日産「新型GT-R」実車公開へ! 極太センターマフラー&巨大ウィングで「最高の称号」も獲得!? ゴールデンな爆裂エレガントモデルとは
くるまのニュース
運気アップなドライブがしたい人は要チェック!【週末ドライブ占い】2024年4月20~21日
運気アップなドライブがしたい人は要チェック!【週末ドライブ占い】2024年4月20~21日
月刊自家用車WEB
山形の「ヨコ軸」が延伸! 東北中央道につながる快走路「新庄古口道路」2024年度全通
山形の「ヨコ軸」が延伸! 東北中央道につながる快走路「新庄古口道路」2024年度全通
乗りものニュース
ハミルトンの後任候補アントネッリがメルセデスで初のF1テスト「F1のパワーとダウンフォースを味わえて最高の気分」
ハミルトンの後任候補アントネッリがメルセデスで初のF1テスト「F1のパワーとダウンフォースを味わえて最高の気分」
AUTOSPORT web
10年ぶりの全面改良で4代目になった「ミニ3ドア」はどう進化? EVの「クーパーSE」とガソリン車「クーパーS」はなぜサイズもデザインも微妙に違う?
10年ぶりの全面改良で4代目になった「ミニ3ドア」はどう進化? EVの「クーパーSE」とガソリン車「クーパーS」はなぜサイズもデザインも微妙に違う?
VAGUE
トヨタが全長5m「新型ラージSUV」発売! 17年ぶり復活エステートやランドスケープ実車展示! 全国でアクティブライフ発信へ
トヨタが全長5m「新型ラージSUV」発売! 17年ぶり復活エステートやランドスケープ実車展示! 全国でアクティブライフ発信へ
くるまのニュース
【インタビュー】元SBKライダーのチャズ・デイビス選手が解説する、電動バイクレースMotoEの戦い方
【インタビュー】元SBKライダーのチャズ・デイビス選手が解説する、電動バイクレースMotoEの戦い方
バイクのニュース

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

228.8349.6万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

132.2355.0万円

中古車を検索
MAZDA3 ファストバックの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

228.8349.6万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

132.2355.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村