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日本郵便/ヤマト運輸 EVの配送トラック導入のワケ 商用車なら「もと取れる」か

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日本郵便/ヤマト運輸 EVの配送トラック導入のワケ 商用車なら「もと取れる」か

日本郵便に続き、ヤマト運輸もEV導入へ

text:Kenji Momota(桃田健史)

【画像】詳細 ヤマト運輸のEVトラック 全23枚

「なぜ、このタイミングで一気にEV導入なのか?」

日本の郵便事業や宅配事業でEV導入が相次いで決まった。

まず、日本郵便が11月13日、「2020年度末までに郵便物や荷物の配送用として1200台のEVを導入する」と発表した。

車両は、三菱自動車のミニキャブ・ミーブ・バン。導入するエリアは、東京などの大都市圏を中心として、まずは2019年度中に400台、翌2020年度には800台を追加して合計1200台とする計画だ。

その結果、2020年度末までに郵便物と荷物を配送する軽四輪自動車のうち、ミニキャブ・ミーブ・バンが全体の約3割を占めることになる。

そうした日本郵便の発表の6日後、11月19日に今後はヤマトホールディングス傘下のヤマト運輸が国内配送用にEVを導入すると発表したのだ。

ヤマト運輸の場合、使用するEVはドイツポストDHLグループ傘下のストリートスクーターと共同開発した。

導入する台数は初期段階で500台とし、一都三県(東京/神奈川/千葉/埼玉)に配備する。その後にも導入台数を全国レベルで段階的に増やし、いまから11年後の2030年までにはヤマト運輸が所有する小型集配車両の約半数にあたる約5000台をEV化する計画だ。

それにしても、物流大手である日本郵便とヤマト運輸がなぜこのタイミングで日本での集配用EV導入に踏み切ったのだろうか?

日本での乗用EV需要は当面伸びない

まず、EVの全体需要についてみると、2018年の実績で世界全体で約121万台。このうちの約6割を中国が占める。

これは2019年から始まったEVなど電動車に対する、事実上の販売台数規制へ対応したためだ。

中国で新エネルギー車(NEV)と呼ばれるもので、その主体がEVとなる。こうしたEVに対する厳しい姿勢を国として示しているのは、世界で中国だけだ。

中国に次ぎ、EV需要での世界第二位のシェアを持つアメリカでも、カリフォルニア州での環境車対策であるゼロエミッション車(ZEV)への対応が、アメリカ全体でのEV需要を支えている。

ここにテスラを筆頭とするプレミアムEVの需要が加わっているかたちだ。

そして日本だが、EV世界市場では2%程度に止まっている状況だ。2010年に日産「リーフ」と三菱「i-MiEV」が発売されたことで、世界の注目を集めたが、その後はEV量産車が増えず、EV販売で後発だった中国に抜かれて、その差は一気に拡大してしまった。

その上で、複数の日系自動車メーカーの幹部は「日本では乗用EVの需要は当面伸びない」と明言している。

充電インフラや航続距離など、ガソリン車に比べて不利な状況と言われてきた要因が改善に向かっているのだが、それだけではEVが一般に広まる可能性は低いとみている。

商用車ならEVは「もとが取れる」?

一方で、商用EVについては、以前から導入を考えてきた物流大手は数多くいた。

今回のヤマト運輸の発表にあるように、企業イメージとしての環境対策もさることながら、最も大きな要因は運用コストの削減だ。

今回導入する、ドイツポストDHLグループ傘下のストリートスクーターとの共同開発車両について、バッテリー容量や満充電での航続距離は公開されていないが、重要なことはヤマト運輸が日常業務のなかで効率的な運用ができる性能が確保されていることである。

つまり、そうした条件を大きく超えるような車両仕様は不必要。EVとしての性能を単純に追うだけでは車両の導入コストが上がってしまうだけで、ヤマト運輸にとってのメリットがなくなってしまう。

この点について、これまで約2年間に渡り、ストリートスクーターと協議を進めながら共同開発を行ってきた。

こうした運用面での出口戦略をしっかりと描くことで、EV導入の意義が生まれたのだ。

リチウムイオン二次電池、インバーター、充電器などのハードウエアについては、前述の中国NEV法による量産効果によって、EV車両全体としてコストが一気に下がってきたことも、今回のEV導入を大きく後押ししたと思われる。

集配車としての機能も徹底研究

さらに、ヤマト運輸が導入したストリートスクーター製EVは、EVであることはもとより、集配車としての機能を徹底的に見直して点が注目される。

配達担当者の身体の負担を軽減すること目的とした開発である。

第一に、乗降性の良いシートの設計がある。一般的に、日本国内での集配作業では1日あたり約200回も乗り降りする。

その際の足腰への負荷を減らすために、普通乗用車並みのシート高さを採用した上で、シート側面の凹凸も極力なくした。加えて、冬季での作業に対応して、シートヒーターを標準装備としている。

第二に、キーレスエントリーの採用だ。最近は乗用車では、コンパクトカーからミニバンまで標準装備され、家庭の主婦でもキーレスエントリーを当たり前のように使う時代だ。

両手で荷物を持った状態になる集配ドライバーにとって、キーレスエントリーの効果は図りしれない。

その他、荷室からの積み下ろしへの負担を軽減するために、荷室床面を日本人の体形に合わせた地上90cmとして設計。

また、360°のビューモニターを採用し、発進時や後退時などで車両周辺の様子をモニターで確認することで、事故の原因となり得るドライバーからの死角を大幅に減らした。

乗用EV市場が一気に成長しない日本だが、ヤマト運輸や日本郵便による集配EVの拡大により、一般ユーザーのEVに対する認識が変わっていく可能性もあるのではないだろうか。

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