アウトドア・ウェアをまとったアウディA1
text:Lawrence Allan(ローレンス・アラン)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)
アウトドア・ウェアをまとったアウディA1が、A1シティカーバー。SUVやクロスオーバーの人気は高まる一方だが、大きなボディサイズがゆえ、狭い街路での移動や駐車場探しはコンパクトカーと比べると簡単ではない。どんなドライバーでも楽しいと思える時間ではないだろう。
そんな前提もあって誕生したのが、完成度の高いA1をベースにした、A1シティカーバーだ。ホイールアーチや前後バンパーの下部にプラスティック製のカバーが付き、アウトドア・スタイルを明確に主張する。
フロントグリルにはアウディのSUV、Qシリーズと共通する6角形のものが与えられている。地上高は50mm嵩上げされ、岩場ではなく、歩道の段差を超えることも容易になった。見た目によらず、4輪駆動のクワトロの設定はない。
エンジンは1.0Lの115psと、1.5Lの150psの2種類のガソリンターボが用意される。アウディとしては初めてのコンパクトカーとSUVファッションとを融合させたクルマだが、他社にはライバルモデルが控えている。
英国にはかつてローバー・ストリートワイズというクルマがあったが、現行でもフォード・フィエスタ・アクティブや、キアXシードなどが存在する。どちらもA1シティカーバーよりかなり安価。アウディとしては、プレミアムさで差別化を図りたいところだろう。
走り味や乗り心地はA1と同等に良好
クルマの中身としては、標準のA1と大きな違いはない。1.0LエンジンはA1 30TFSIに搭載されるものと同じで、試乗ではA1との相性は最適だと感じたユニット。低音を響かせながら、シティスピードまで力強く加速するし、高速道路での巡航走行にも不足のない粘りがある。
試乗車には7速デュアルクラッチATが搭載されていたが、急発進時の不要なためらいも殆ど感じられなかった。アウディ製モデルの中には、発進時に気になるクルマがあるだけに好印象だった。
お洒落をしたぶん、A1シティカーバーは標準のA1と比べて40kgほど重くなっている。しかし走行性能に与えた悪影響はほぼないといって良いだろう。0-100km/h加速をA1 30TFSIで比較すると0.4秒ほど遅いが、極わずかな差だから多くのドライバーは気づかないと思う。
乗り心地も通常のA1とほぼ同じ。フォルクスワーゲン・ポロと並んでクラス最高の乗り心地を備えていただけに、嬉しいところ。引き締められたサスペンションが付いてくるSラインの設定もない。無用に選んで、乗り心地を悪化させてることもないはず。
大きな起伏やスピードバンプでも、長さを増したサスペンション・トラベルのおかげで衝撃の吸収性も良い。ミニと比較しても快適だと思う。コーナリング時のボディロールは通常のA1よりも多めだが、運転を邪魔しない、充分に煮詰められた範囲に留まっている。
ステアリングの操舵感もグリップ力が感じられ正確。狭い道やカーブでも、不安感なくクルマを進めていける。狭い都市部でも充分軽快に操れるはず。ただし、フロントタイヤの状況はほとんどステアリングに伝わって来ない。
スタイルが気に入れば満足感は高い
車内には、A1シティカーバーとA1との違いは殆どない。着座位置が若干高くなっていることくらいだろう。操作性に優れたタッチモニター式のインフォテインメント・システムも付いてくる。フォード・フィエスタ・アクティブに装備されているものより遥かに上等品だ。
前後ともに乗員空間はクラス標準で見れば優れている方。180cmを超えるような高身長の大人でも、フロントシートなら快適に座れるはず。リアシートは広々とはいえないかもしれないが、ミニよりは空間が確保されている。
荷室も大きく、形状も使いやすい。しかし、規格外に広いホンダ・フィット(欧州名:ジャズ)には敵わないけれど。
客観的にいえば、車高を持ち上げたメリットは現実世界では殆どないだろう。4輪駆動のクワトロの設定がないから、クロスオーバーはファッションに留まる。機能的な部分でのプラスは少ないのに、価格はA1と比較して2000ポンド(28万円)も高い。
フォード・フィエスタ・アクティブやフォルクスワーゲンTロックの方が、コストバリューで優れて見えてしまう。よりSUVらしいスタイリングだし、見晴らしも良い。
それでも写真を見て気にったのなら、A1シティカーバーを選んだ満足感は高いだろう。運転の質感も良く、車内の広さもほとんどの用途で不足はない。快適性にも優れ、インテリアの設えもアウディらしい仕上りだ。
アウディA1シティカーバーのスペック
価格:2万3580ポンド(333万円)
全長:4046mm
全幅:1756mm
全高:1483mm
最高速度:197km/h
0-100km/h加速:9.9秒
燃費:16.3km/L
CO2排出量:117g/km
乾燥重量:1170kg
パワートレイン:直列3気筒999ccターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:115ps/5000-5500rpm
最大トルク:20.2kg-m/2000-3500rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック
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