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レクサスRXがマイナーチェンジで達した領域とは。渡辺慎太郎が吟味する【国内テスト】

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レクサスRXがマイナーチェンジで達した領域とは。渡辺慎太郎が吟味する【国内テスト】

Lexus RX 450hL

レクサス RX 450hL

レクサスRXがマイナーチェンジで達した領域とは。渡辺慎太郎が吟味する【国内テスト】

“プレミアムSUV”という土壌を作ったRX

普通乗用車のプラットフォームやパワートレインを使ってSUVを仕立てるというやり方は、専用のプラットフォームを起こす方法よりもいまや一般的になっているけれど、最初にやったのはレクサスの初代RXだった。

それまでのSUVといえば、悪路の走破性をきちんと備えたオフロード4WDが主流だったので、シャシーにはラダーフレームなどが使われていて、オンロードでは決して快適な乗り物ではなかった。ところが実際には、オフロード4WDを所有するほとんどのユーザーがオンロードでの使用をメインとしていた。

「だったらもっとオンロードでの快適性の高いSUVがあってもいいのではないか」 これがRXの商品企画の発端だったと言われている。「セダンのような快適性とSUVの機能性を兼ね備えたクルマ」がコンセプトとして掲げられ、当時のES300のプラットフォームとV6エンジンが活用されることになる。1997年のシカゴショーでコンセプトカーを披露、翌年から初代RXの販売は開始され、年末までに北米のみで4万2000台以上を売り上げる大ヒット商品となった。

初代RXは前輪駆動が標準で、オプションとして4WDを用意していた。ATはフレックスロックアップ機構を持ち、センターデフにビスカスカップリングを配置、前後のトルク配分を50:50とする4WDシステムで、後輪にはトルセン式LSDを組み込むなど、構造的にはかなり本格的だった。

そして2006年にはこのセグメントとしては初めてハイブリッドシステムを搭載したRX400hを導入するに至ったのである。こうしてRXの系譜を見直してみると、このクルマがプレミアムSUVの先駆者でエポックメイキングな存在だったということが分かる。日本でこの事実があまり知られていないのは、初代と2代目が国内で「トヨタ・ハリアー」として売られていたからだろう。レクサスRXとして日本での販売がスタートしたのは2009年発表の3代目からである。

2列目に左右独立シートも設定

4代目となる現行モデルが登場したのは2015年なので、もう4年が経過したことになる。2017年にも3列シートの7人乗りを追加したうえ、“RX200t”を“RX300”に改名したりしているが、今回はボディ構造にまで手が加えられた本格的な改良となった。

エクステリアも刷新されて、見た目の印象が大きく変わっている。前後バンパー、フロントグリル、ヘッドライト/テールライト、フォグランプ、ホイールアーチモールなどは意匠変更されて、LSやLCなど最近のモデルに近い雰囲気になったと共に、全体的に洗練されてエレガントな装いに映る。ヘッドライトが天地方向に薄くなると、なんだか全高が低くなったように見えるから面白い。スマートでスリークになった印象が強い。

インテリアの基本的な造形は従来型を踏襲しているものの、マルチメディアシステムが一新された。センターコンソール上のモニターは12.3インチに拡大され、同時にタッチパネル式となった。また、リモートタッチもタッチパッド式に変更されている。カップホルダー前方にスマートフォンホルダーが新設され、コンソールボックス内のみだったUSBポートがセンターコンソールにふたつ、後席用にもふたつ(計6口)増設されたことも新しい。USBポートとスマートフォンホルダーは今後、カップホルダーのようにクルマの必須装備となるだろう。そしてついにと言うべきかやっとと言うべきか、アップルのカープレイ/アンドロイドのアンドロイドオートに対応可能となった。

北米からの強い要請により車名の最後に“L”が付くRXには3列目シートが追加されていたが、ホイールベースはいじらずにリヤのオーバーハングだけを伸ばして増設したため、正直に言ってスペース的にはかなり窮屈だったしアクセスも悪かった。改良型では3列目シートが前後方向に2種類のポジションを設定できるようになり、それらが多少改善された。また、2列目シートは3人掛けか、2人掛けの独立式キャプテンシートが選択可能となった。

“効率的な”オートハイビーム

このRXでレクサス初の採用となった装備がブレードスキャン式AHS(アダプティブ・ハイビーム・システム)である。前方車や対向車などを感知するとシャッターを使ったりLEDを部分的に消灯させるなどして遮光する方式はこれまでもあったが、シャッター式はそのタイミングがやや唐突だったり、LED式は多数のLEDを用意する必要があった。ブレードスキャン式は、ブレードミラーと呼ばれるターボのフィンのような形状のミラーを高速回転させてそこにLEDの光を反射させることで前方を広く滑らかに照射する。

この回転とLEDの点灯・消灯を制御することにより、照射範囲と遮光範囲を細かく調整できる。少ないLED数でも広く遠くまで照射できるし、シャッター式よりもスムーズに遮光できるというシステムである。デモンストレーションを見せてもらったが、これならば安心してハイビームをデフォルトにできると思った。オートマチックハイビーム機能はいまや珍しい装備ではなくなったが、遮光のタイミングがずれてドキドキしたりイライラするものもあって、結局自分で切り替える場合が多かったが、これならその心配もなさそうである。

見た目だけでなく体幹にも見直しを

機能や装備のアップデートはウェルカムだけれど、新型RXでもっとも嬉しい改善は走りにあった。それは走り出してすぐに分かる。細かい振動や不必要なばね上の動きが大幅に軽減され、足元がしっかりしたように感じると共に、走る/曲がる/止まるのすべてがスッキリとしたのである。加速時にリヤが沈むスクォートと減速時にフロントが沈むダイブが抑え込まれて、ばね上が常に安定した状態を保つようになった。

特にボディに塊感のようなしっかりとした印象を受けるのは、生産技術面での改良が大きく影響しているという。ボディ製造工程におけるスポット溶接の打点増設(14ヵ所)と構造用接着剤の接着面積の拡大(主にばね上で約2.3m)により、ボディ剛性が向上したそうだ。スポット溶接の打点は、増やせばいいというものではなく、ひとつ増やすとそこが強くなったことで他に共振する場所が新たに生まれてしまったりする。効果的かつ他へ悪影響を及ぼさないポイントを見つける作業はなかなか大変で、おそらく何度もトライ&エラーを繰り返したのだろうと想像がつく。

点で支えるスポット溶接に対して、面で支える構造用接着剤は有用だ。フロントウィンドウの取り付けに、これまでの単なる接着剤ではなく構造用接着剤を用いるメーカーも増えている。構造用接着剤の性能や取り扱い性が進化したことで、使用範囲は今後も増える傾向にある。

4年間で辿り着いた完成形

ボディのみならず、新型RXはサスペンション周りにも手が加えられている。ハブベアリングのプリロードを高めたり(=締め付けトルクの適正化)、スタビライザーの径を大きくするなど、ボディと同様に剛性アップが図られた。“足元がしっかりした”と感じたのはこの効果だろう。前後のロール剛性も向上し、旋回時のロール方向の動きが従来型よりも少なくなったが、抑え込むというよりも、適度にばね上を動かしながら、コーナーリング時のピッチング/ロール/ヨーの過渡領域のつながりをスムーズにするためのセッティングのように思える。従来型は揺り戻しやバウンシングの収まりの悪さなど、ばね上の無駄な動きが散見されたが、これらが消え失せて、ステアリングの切り始めから再加速まで、気持ちいいコーナリングが実現している。乗り心地も全般的によくなっていた。

パワートレインに変更はなく、これまで通りの3.5リッターV6+モーターのハイブリッドと、2.0リッター直列4気筒ターボの2種類で、それぞれ2WDか4WDが選べる。4WDのほうが約70kg(グレードによる)重くなるものの、操縦安定性や4輪の接地性などを比べるとやっぱり4WDのほうが頼もしい。ちなみにハイブリッドはリヤにモーターを使うE-Four、ガソリンはプロペラシャフトで後輪に駆動力を伝えるオンデマンド式4WDとなる。

発表から4年の歳月を経て、RXはようやく完成の域に達したと思う。性能面でも機能面でも、レクサスを代表するSUVの名に恥じないレベルに達した。3列シート仕様については、北米から急かされて短い開発期間で作り上げたという背景もあり、スペースや機能性は物理的にこれ以上の改善が難しい。

北米が言うところの3列シートの使い方は、例えば子供が所属するサッカーチームのチームメイトを乗せて試合に行くなどといったシーンを想定していて、現状だと7人乗れても彼らの荷物を収納するスペースがなく、不満が出ているという。これを解決するにはホイールベースを延長するしかなくかなりやっかいだ。

次期RXはホイールベースを伸ばして最初から3列シートを考慮した設計にするか、3列シートをきちんと配置できるRXより大きなSUVを新たに仕立てるしかないだろう。レクサスは果たして、そのどちらを選択するだろうか。

REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)

PHOTO/北畠主税(Chikara KITABATAKE)

【SPECIFICATIONS】

レクサス RX 450hL

ボディサイズ:全長5000 全幅1895 全高1725mm

ホイールベース:2790mm

トレッド:前1640 後1630mm

車両重量:2230kg

エンジン:V型6気筒DOHC

総排気量:3456cc

エンジン最高出力:193kW(262ps)/6000rpm

エンジン最大トルク:335Nm/4600rpm

フロントモーター最高出力:123kW(167ps)

フロントモーター最大トルク:335Nm

リヤモーター最高出力:50kW(68ps)

リヤモーター最大トルク:139Nm

システム最高出力:230kW(313ps)

トランスミッション:電気式無段変速機

駆動方式:AWD

サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後ダブルウィッシュボーン

ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク

タイヤサイズ:前後235/55R20

車両本体価格:796万円(消費税10%込み)

【問い合わせ】

レクサス インフォメーションディスク

TEL 0800-500-5577

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