高強度/熱修復/着色可能
text&photo:Hidenori Takakuwa (高桑秀典)
ブリヂストンは、ゴムと樹脂を分子レベルで結び付けた世界初のポリマー「SUSYM(サシム)」を、東京モーターショー2019で発表した。
登壇したブリヂストン執行役員 先端技術担当の田村康之氏によると「ブリヂストンは、もともと足袋屋でした。足袋とゴムを組み合わせたのが会社の源流で、イノベーションはブリヂストンのDNAだといえます。いま、クルマ業界は100年に一度の変革期にあり、社会全体も変わりつつあります。ブリヂストンは社会全体を支えるべきであると考えており、持続可能な社会へ貢献していくことを念頭に置き、ゴムと樹脂を分子レベルで結びつけた世界初のポリマーであるサシムを発表します」と新技術を紹介。
「サシムは従来の性能を大幅に超え、とてもユニークな特性があることが分かっています。現時点ではその可能性は未知なので、どのような分野でどのような活用ができるのかを一緒に考え、共に新しい価値を想像していきたいと考えています」と力強く語った。
耐摩耗2.5倍、耐亀裂5倍
続いて登壇したブリヂストン先端技術担当フェローの会田昭二郎氏はサシムのシートを手に持って話し始め、「まさにゴムと樹脂を分子レベルで結合することに成功しました。この技術は、ブリヂストンしか持っていません。竹細工をモチーフとし、サシムの機能を使ったタイヤを造ってみました。あらゆる部材にサシムを使っています。赤い部分がやわらかいところで、そこにはやわらかいサシム、銀色の硬いところには硬いサシムを使い、それらが連続的にシームレスにつながっています」と解説。
「サシムは、まったく新しい素材であると考えており、非常に価値がある素材だと考えています。もちろん、タイヤに使っていきたいと思っていますが、それだけではもったいないと思っています。サシムという素材を使って、社会全体を支えていきたい。その方法は我々だけでは考えられないので、今回サシムを発表しました」とアピールした。
天然ゴムと比較して5倍以上の耐亀裂性、2.5倍以上の耐摩耗性、1.5倍以上のひっぱり強度があり、硬度も連続的に変化させて成形でき、さらに色も自由に着色できるという特徴があるサシムは、ブリヂストンが2018年5月に発表した「High Strength Rubber」をさらに進化させたものだ。
従来のゴムよりも高強度・高耐久であると共に、穴が開きにくい(耐突き刺し性)、治る(再生・修復性)、低温でも強い(低温耐衝撃性)などの性能が飛躍的に向上している。
再生可能、次世代ポリマーとして注目
前記の3つの性能において、ゴムのしなやかさと樹脂の強さを両立しながら、それぞれの特性を自在に引き出すことができ、タイヤ以外の様々な分野への親和性が高く、実社会との共生が可能な革新的な材料であると考えているそうだ。
また、従来のゴムより高強度・高耐久のため、より少ない材料使用量でタイヤに求められるさまざまな性能を達成可能であることや、再生可能であるため、環境調和型の次世代ポリマー素材として持続可能な社会やタイヤ材料としての枠組みを超えた多様な分野へ貢献していくことも期待しているという。
「サシム」の名称は、それらの期待を込めて、Sustain(持続させる)、Symphony(調和)、Symbiosis(共生)より造られている。この素材が社会において期待されることと結び付けた名称とすることで、認知拡大を図っていきたいとのことだった。
ブリザック/レグノも展示中
ブースではガラスケースに収められたサシムのほか、月面タイヤ、第3世代走行中ワイヤレス給電インホイールモータ、そして、市販タイヤの一部(ブリザックVRX2、レグノGR-XII、ポテンザS007A、エンライトンなど)が展示された。
月面タイヤは有人与圧ローバが月面を走破するためのタイヤで、ブリヂストンは、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)、トヨタ自動車株式会社と共に国際宇宙探査ミッションに挑戦するそうだ。
第3世代走行中ワイヤレス給電インホイールモータは、世界初となる電気自動車に必要な受電から駆動までのすべてをタイヤに内蔵したものである。つまり、タイヤの内側に電気自動車に必要なすべての機能を配置することで、走行中ワイヤレス給電性能、モータ性能、車両への搭載性を大幅に改善することを可能とするのであった。
また、ブースでは、ブリヂストン・ワールドソーラーチャレンジ2017に参戦した工学院大学のソーラーカーも展示された。
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