世界でたった1台のディーノ・レーシングスペシャル!
自動車漫画のパイオニアであり、今も数多くのファンに愛され続ける『サーキットの狼』。作中には世界各国のスーパーカーが登場し、類稀なる性能と溢れる個性を競い合った。そんな中、唯一架空のクルマとして描かれた「ディーノ・レーシングスペシャル(YATABE RS)」だが、実は実車として再現され現在も大切に保管されている。今回は池沢早人師先生と共に、実車のディーノ・レーシングスペシャルの真実に迫ってみたいと思う。
池沢早人師に訊くスーパーカーブームのウラ側「第17回:自分のオリジナルモデルがカタチになって感無量!」
漫画の世界で描かれた架空の名車を再現
ボクが描いた『サーキットの狼』には世界中のスーパーカーを登場させている。当時はクルマに関する映像や資料が少なく、描くのにはとても苦労したけど楽しかったね。ストーリーの中心になるロータスやフェラーリ、ランボルギーニ、ポルシェに関しては実際に自分の愛車として手に入れたり、友人のクルマを借りたりして描くことができたけど、その中で唯一“イメージ”で描いたクルマが「ディーノ・レーシングスペシャル」。
作中では沖田のディーノ246GTを改造したモデルとして登場させ、主人公の風吹裕矢が流石島レースで活躍する。でもね、漫画の世界での話ではあるけど、スケール感やエンジンやシャシーに対する挙動、色々な角度からのフォルムを描くということは、頭の中で1台のクルマを作り上げなければならない。これってとても重要なことで、しっかりとしたイメージが決まっていないとストーリーが破綻してしまう。
ディーノ・レーシングスペシャルを描こうと思った時、ボクの頭の中ではピニンファリーナのディーノ206コンペティツィオーネのスタイルが思い浮かんだ。沖田の遺志を受け継ぎながらも戦闘力があって美しいクルマ・・・。ボクなりのピニンファリーナに対する、今で言う「リスペクト」かな。でも、このクルマに関しては設計図があった訳でもなく、ボクの頭の中だけで描いた「架空のクルマ」だから、カーデザイナーになった気分が味わえたよ。
『サーキットの狼』は大きなブームになったこともあって、登場したクルマたちは次々とプラモデルやミニカーとして販売されることになった。ディーノ・レーシングスペシャルも例外ではなく、色々なメーカーからオファーが掛かって販売されることになったんだけど、ボクの頭の中にしか設計図がないわけだからプラモデルやミニカーの型を作る時にイメージを共有するのが大変だった。
メーカー側のイメージとボクのイメージを擦り合わせるのに何度も試作品を作ってもらった。でもね、ボクが描いた漫画という2次元のクルマが三次元で世に送り出されたのは感動したねぇ。自分で描いたクルマだけど、立体的に造られた製品として“カタチ”になった姿は嬉しかった。あの感動は今でも鮮明に覚えている。
ダイキャスモデルとしても世に送り出されたディーノ・レーシングスペシャルだけど、群馬県の熱狂的な『サーキットの狼』ファンのI氏が、「ディーノ・レーシングスペシャルの実車を作りたいので許可してほしい」と話があった。もちろんOKし、クレイモデルからI氏と実製作を担当したノーチラス・スポーツカーズさんらと何度も意見を交換しながら進めていった。本当に何年もかかったけどね。
シャシーは鋼管パイプフレームを使って組み上げられ、作中ではフェラーリ308のチューニングエンジンだけど、この実車ではフェラーリのモンディアル用V8エンジンとトランスミッションがミッドシップされている。
ボディパネルはアルミが中心で、ウインドウのフレームには強度を出すためスチールが使われている。インテリアには漫画と同じように8連メーターを装着。まさか実車化するとは思わなかったからフロントのウインドウはランチア・ストラトスのように極端に湾曲して描いたんだけど、これもイギリスのメーカーに特注したワンオフのガラス製。造りやすいアクリルを使わないところが凄いよね。フェンダーの曲線ラインやルーバーなど、細かい所まで徹底的に作られていて生みの親としては感無量だったね。
結局、このクルマは100%の完成には至らなかったんだけど、筑波サーキットで開催されたイベント「オールドナウ・カーフェスティバル」でお披露目された。確か2013年だったと思うんだけど、コースサイドにはもの凄い数のギャラリーが駆けつけてくれて大盛り上がりたったことを記憶している。
でも、残念なことにエンジンが不調で5000回転前後で息継ぎしちゃって、3周くらい本コースを回ってピットイン(涙)。その翌年もエンジンの調子が悪くて全開で走らせることができなかったんだ。
でも、自分が描いた漫画の世界で登場したクルマが実車版として「カタチ」になったのは嬉しかった。みんなの前だから平然な顔をしていたけど、本当は涙が出そうなくらい感動しちゃったからね。あの時ほど『サーキットの狼』を描いて良かったなぁ・・・と思ったことはないかもしれない。
本当なら、ハンドリングやエンジン音、コーナリング性能など、自分が頭の中で作り上げたクルマがどんな走りをするのかを時間を忘れるくらいコースを走ってみたかった。いつか、このディーノ・レーシングスペシャルが完全な状態で走れる日が来ることを期待している。
その時は思いっきりアクセルを踏んで、心ゆくまで実車版の性能を試してみたいよね。例えばスーパーGTのパレードランの先導車で走ってみたい。コレ、良いと思うけどなあ。実際、パトカーや白バイばかりでも・・・ね。
世界で唯一、たった1台しか存在しない貴重な「ディーノ・レーシングスペシャル」は今、『サーキットの狼ミュージアム』に展示されている。『サーキットの狼』のファンはぜひ見に行って欲しい。
Dino Racing Special
ディーノ・レーシングスペシャル
GENROQ Web解説:漫画の世界から飛び出した幻のクルマ
1975年、週刊少年ジャンプで連載が開始された『サーキットの狼』。その作中には世界を代表するスーパーカーが登場し、主人公である風吹裕矢と共に数々の物語を紡いで行く。
そのストーリー中に登場する「ディーノ・レーシングスペシャル」は、瀬戸内海の孤島・流石島にサーキットを作り上げた谷田部行雄がディーノ246GTをベースに、主人公である風吹裕矢のために製作したマシン。作中でのスペックはフェラーリ308GTB用のV型8気筒エンジンにチューニングを施し、最高出力380ps/10000rpmを発揮。車重は700kgと軽量で、最高速は300km/hと記載されている。
そのベースになったディーノは風吹裕矢のライバルであった沖田の愛車であり、レース中に早逝した沖田の意志を受け継いだもの。池沢先生によって架空のクルマとして生まれた同車だが、そのデザインのヒントはピニンファリーナが手掛けたディーノ206コンペティツィオーネと言われている。
日本で製作された実車は、フェラーリ・モンディアル用のV型気筒エンジンが使用され、オリジナルの鋼管パイプフレームにミッドシップされる。組み合わされるトランスミッションもモンディアル用となり変速数はMTの5速。実際の出力は不明。車名は「ディーノ・レーシングスペシャル」または「YATABE RS」と表記される。
実車製作を手掛けたのは「ノーチラス・スポーツカーズ」。原作ではFRP製ボディであったが、実車版では2mm厚のアルミ素材を中心に使用している。フロントカウルはスポイラーとの干渉を防ぐためにチルトアップ機構を採用し、大きく前方へと開閉することが可能。V8エンジンを収納するリヤカウルも整備性を考えチルトアップ式となる。ホイールはセンターロック式の17インチを使用。
現在、同モデルは茨城県潮来市にある「池沢早人師・サーキットの狼ミュージアム」に展示され、その姿を見ることができる。
TEXT/並木政孝(Masataka NAMIKI)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)
「池沢早人師・サーキットの狼ミュージアム」
住所:茨城県神栖市息栖1127-26
TEL:0299-95-550
入館料:大人/800円 小中高校生/400円 ※保護者同伴の小学生以下は無料
開館時間:10:00~16:00(入館は15:30まで)
開館日:土曜日・日曜日・祝祭日
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