最低地上高190mm
クルマの話で「オキニ」という表現は不似合いかもしれないが、現代のクルマ選びでは重要な要素だと考えている。
筆記用具やバッグ等々の生活や仕事の小物に気に入ったデザインやキャラクターの入った物を選び、楽しみや心地よさをちょっと高める。内側に向かう価値感なので基本的には自己満足の上乗せでしかないが、同じことをするならオキニの要素が多い方がいい。
デザイン面でシトロエンC5エアクロスSUVは「オキニ」の要素が多いモデルである。個人的な趣味嗜好の側面なので気に入らなければそれまでだが、トレンドに乗ったプレミアム感やスポーティ感とは異なる独自の雰囲気を持っている。
付け加えるなら、そういった雰囲気が実用の道具としてのクルマの性能や使い勝手に悪影響を与えないのも何より。考えてみればシトロエンというブランドそのものが、昔から「オキニ」志向だったのかもしれない。
一目して分かるようにC5エアクロスはSUVである。最低地上高は190mmを確保。エアダムまわりはスキッドプレート様に切り上げてアプローチ/デパーチャアングルを配慮した設計。サイドシルまで被ってダート走行後の乗降でパンツの裾を気にしなくてもいいドア形状。
だが、FFのみの構成である。
扱いは、SUVらしく
FFだけなのは少々もったいない感じもするが、会社の事情では仕方ない。2WDでは泥濘路や未踏雪路走行、モーグル等の接地荷重が大きく異なる路面形状の踏破性で大きなハンデを背負う。ハードクロカンには不適当である。
果たして、そんな過酷な状況に入り込むユーザーはどれほどいるか。かなりの少数派だろう。C5エアクロスはそういったヘビーユーザーやクロカンマニアを狙ったクルマではない。
普段は都市部で楽しみ、時として林道ドライブで秘湯巡りとかとか。ふつうの乗用車では下打ちに怯えてしまうような路面でもC5エアクロスには無問題。
2WDでは駆動力を伝えられない路面状況以外ではSUVらしい安心感と扱いやすさを発揮。ツーリングとアウトドアレジャーの交差点にあるモデルである。
一昔前のシトロエンと言えばハイドロニューマティック。空飛ぶ絨毯と賞された同サスペンションの乗り心地を再現するために採用されたハードがプログレッシブ・ハイドローリック・クッションと命名されたダンパーだ。
ダンパー内にセカンダリーダンパーを設け、中立点からストロークする(離れる)ほど減衰力が高くなる。
新ハイドロ どんな感じ?
システムの特徴だけを捉えるとかなり乗り心地に振ったように思えるが、実際に試乗してみるとけっこう高速安定寄りのサスチューン。高速でのコーナリングや車線変更では過度なロールや揺り返しが抑えられ、操舵相応の確かな方向安定を示す。
ただし、引き締まったとか鋭い切れ味といった、これ見よがしのスポーティ感ではない。中立の据わりのいい操舵フィールもあって安心感の高い操縦性である。
そういったタイプなので乗り心地はストロークをたっぷりと使った柔らかな味わいではない。動き出しがスムーズで細かな揺れにはしなやかな柔らかさが感じられるが、伸縮をはっきりと意識するほどのストローク領域に入ると収束性が強まる。つまり、普段はしっとりしていて負荷が大きくほどに粘るわけだ。
今回の試乗では試す機会が得られなかったが、この特性はダート路での乗り心地向上にかなり効果的だろう。高速安定重視型のSUVが苦手の領域でもあり、オン&ラフロードでの快適性の両立点を向上させたフットワークと言える。
また、高速の運転支援機能として走行ライン制御型のLKAを装備。渋滞追従機能付きの全車速型ACCと相まって、C5エアクロスの高速長距離適性をアップ。レジャー等で遠出をする機会が多いユーザーには見所のひとつである。
ディーゼル+8ATの走りは?
パワートレインは2Lディーゼルとトルコン型8速AT。これもオン&ラフロード、レジャー&ツーリングを高水準でまとめるにはいいコンビである。
8速ATを細かく繋ぎ、どの速度域でも巡航回転数は1500~2000回転を維持。全開近い急加速以外では1段分のダウンシフトで済ませ、4000回転くらいまでストレスなく、力強い。
燃費と実用動力性能、余力感を求められる現代的乗用車、中でもディーゼル車では一般的な特性であり、タウンユースから長距離まで効率良く心地よく走ってくれる。巡航静粛性だけでなく全開加速でも威圧感はなく、ドライブフィールも同車の車格と適応用途に相応しい。
さらにC5エアクロスを堪能するユーザーが遭遇するであろうラフロードでの扱いもいい。同状況では走り出しのホイールスピン、例えばちょっとした窪みや段差に駆動輪が掛かった状態で発進など、動き出しに気を使う状況でのコントロール性がいい。
トルコンと程よいレスポンスの相乗効果でもあり、ラフロードや雪路での扱いやすさのポイントでもある。
安全装備、内装について
さらに左右輪のトルク分配を行う電子制御ブレーキLSD(=グリップコントロール)を標準装備。ノーマル/スノー/マッド/サンド/オフの5モードから路面状況に応じた制御モードを選択できる。FFだからと諦めた感じは一切なし、FFの踏破限界に挑戦するような印象さえある。
SUVに4WDは不要という気はさらさらないが、現実的な使われ方での最適化がなされていればいい。C5エアクロスの走りはアウトドアレジャーとツーリングを心地よく楽しむための現実論でまとめられていた。「FFと言えども侮るなかれ」なのだ。
上質な座り心地のシートや後席3脚独立スライド機構を備えたプレミアム感と実用性。林道くらいのラフロード走行には不足ない踏破性と快適なツーリング性能。先進的な安全&運転支援機能。
SUV相対では乗用車のトレンドからちょっと外れたシトロエン味のポップなキャラクターが一番のアピールポイントだが、アウトドアレジャーとロングツーリングの適性だけで評価しても優等生である。遊び心と真面目さが無理なく共存している。
光る個性 「買い」か?
上級仕様のシャイン・ナッパレザーパッケージは468万5000円(税10%)だが、走行メカや利便快適装備は共通しているのでレザーシートやパノラミックサンルーフに魅力を感じなければ431万9000円(税10%)のシャインで不足なし。
価格と内容では国産車ならレクサスNXやマツダCX-8、輸入車ではメルセデス・ベンツGLAクラスやボルボXC40などが絡んでくる。同価格帯に入る主立ったモデルとC5エアクロスを並べて「コスパは国産車よりちょっと劣るけど同格輸入SUVでは優秀だな」などと比較してみたが、どうもすっきりしない。
理由は簡単だ。C5エアクロスの雰囲気を気に入ったドライバーが他車を気に入る可能性が低く思えたからだ。
内外装の雰囲気はコンペティターの多くが主張する一般性の高いプレミアム志向やスポーティ志向から外れ、嗜好的には唯一無二。
何度となく述べたが4WD必須のユーザーは対象外なるものの、アウトドアレジャー用ワゴンあるいはロングツアラーとしての目立った欠点がない。個性は強いが癖はない。C5エアクロスを気に入ったらそれでOKなのだ。
C5エアクロスSUVシャイン・ブルーHDi サイズ
価格:431万9000円(税10%)
全長×全幅×全高:4500×1850×1710mm
最低地上高:190mm
車両重量:1640kg
乗車定員:5名
C5エアクロスSUVシャイン・ブルーHDi スペック
エンジン:1997cc直4
トランスミッション:8速オートマティック
最高出力:177ps/3750rpm
最大トルク:40.8kg-m/2000rpm
燃費(WLTCモード):16.3km/L
燃料:軽油
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