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エアバッグを量産初採用したのがGM。最初はシートベルトの代替品だった

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エアバッグを量産初採用したのがGM。最初はシートベルトの代替品だった

■3人掛けのフロントベンチシートに対応したエアバッグシステムの誕生は1973年

いまや標準装備されていることが当たり前の存在といえる「エアバッグ」。言わずと知れた、衝突時に火薬によって瞬時に袋を膨らませて、乗員の衝撃を受け止めるという安全装備だ。より正確には「SRS(補助拘束装置)エアバッグ」と呼ばれ、その元祖はメルセデス・ベンツ(W126型Sクラス)といわれている。しかし、それはシートベルトと併用することを基本とした「SRSエアバッグ」の元祖であって、自動車の安全装置としての「エアバッグ」を量産車に載せた最初のメーカーはGM(ゼネラルモーターズ)である。

軽い衝撃でエアバッグが開いてしまった どう対処する?開いたまま運転していいの?

なんと、GMが量産車にエアバッグを採用したのは1973年。Sクラスに採用される7年も前の話だ。そのシステムは、現在のエアバッグに通じるもので、車体前方に配されたセンサーが衝撃を検知すると、その信号を受けて運転席(ステアリングホイール内蔵)と助手席側(インパネ内蔵)のエアバッグが瞬時に展開するというものだった。しかし『air-cushion restraint system』と名付けられていた。このシステムは、いまのSRSエアバッグとは根本的に発想が異なっていた。SRSエアバッグは前述したようにシートベルトと併用することで安全性を高めるのが狙いだが、GMの『air-cushion restraint system』は3点式シートベルトの代替品という位置付けだった。いまだに「エアバッグがあればシートベルトは不要」というオールドファンがいたりするが、こうした誕生時のエピソードを聞けば、そうした誤解をしているのも不思議ではない。

GMのエアバッグはシボレーやキャデラックといったブランドに採用されたが、1970年代のアメリカ車というのはフロントベンチシートがスタンダードで、フロントに3人掛けができるようになっていた。そのため助手席側エアバッグは2人分の体を受け止めるよう設計されていたというのも興味深い。さらに衝撃の大小によってバッグのふくらみ具合を2段階で調整する機能もあった。

なお、ユーザー的にはシートベルトの代替品というイメージが強かった初期のエアバッグだが、とはいってもメーカーとしてはシートベルトとの併用を推奨していた。ただし、この当時は腰を支えるだけの2点式シートベルトが主流であった。それはアメリカ車のスタンダードであったフロント3人掛けベンチシートを使う限り、中央席には3点式シートベルトを装着しづらいというハードウェア的な都合もあったであろう。また、スマートなルックスのピラーレスハードトップが多かったことから、肩にベルトがかかっている3点式シートベルトはカッコ悪いというユーザーマインドもあったという。いずれにしても腰を支えるだけの2点式シートベルトであれば頭が勢いよく前に動いてしまうわけで、上半身を受け止めるエアバッグの安全効果は高かったことだろう。

しかしながら数年で、2点式シートベルト+エアバッグという安全装備は消えてしまう。非常に限られた市場のニーズに応えて生まれた時代のあだ花だったのかもしれない。しかし、それが「SRSエアバッグ」につながったのであるから、無駄な技術ではなかったのだ。

ちなみに、“air-cushion restraint system”で検索すれば、1973年に生まれたGMのエアバッグシステムについての画像や動画を見つけることができる。気になる方は、ぜひネットサーフィンをして、量産エアバッグの始まりについて調べてみてほしい。

文:山本晋也(自動車コミュニケータ・コラムニスト)

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