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新型BMW 330eに試乗して分かった「PHEVのある生活」の最適解【初試乗】

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新型BMW 330eに試乗して分かった「PHEVのある生活」の最適解【初試乗】

BMW 330e Sedan

BMW 330e セダン

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なかなか満喫できない「PHEVのある生活」

先代の3シリーズ(F30)の“BMWアクティブハイブリッド 3”に短期テストの名目で、半年間乗っていたことがある。たまたま自宅の集合住宅の駐車場に充電器が設置されたばかりだったので、“にわか充電生活”を体験してみようと考えたわけだ。ところが、勝手に想像していた「PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)のある生活」と実際はずいぶん違っていて、理想と現実のギャップに困惑した。

バッテリーが満充電の場合、アクティブハイブリッド 3のEV航続距離は約30kmで、自宅と当時の会社までは往復で約15kmだったから、毎晩充電すれば基本的にはガソリンを一滴も使わずに毎日通勤が出来ると踏んでいた。ところが「毎日充電」がことのほか難しかった。

こういう仕事の性質上、帰宅時間はほぼ毎日午前0時前後になるのは仕方ないのだけれど、その時間には充電スペースに三菱アウトランダーPHEVがいつもすでに止まっていた。おそらく、彼の帰宅時間は午後7時前後で、午前0時にはもう充電が終了しているものの、そんな時間にわざわざ駐車場まで降りてきてクルマを移動するなんてことはしないだろうなとも思う。だから自分は毎晩、充電スペースの前を素通りするだけの日々となった。

PHEVであるアクティブハイブリッド 3は(回生ブレーキによる充電ができるとはいえ)、十分な充電が出来ないと途端にただの重い3シリーズセダンに成り下がる。当然のことながら、ガソリンエンジンを搭載する3シリーズより燃費も悪化する。ハイブリッドのシステム自体はとてもよく出来ていて、モーターによる駆動力アシストもスムーズだし、場面によってはBMWご自慢のエンジンの旨味も享受できるようになっていた。だからPHEVの使い勝手の悪さの原因はクルマ側ではなくインフラ側にあるということが実体験からもわかったのである。

2019年に6車種、2020年に2車種のPHEVを追加

使い勝手の悪さと言えば、高速道路のサービスエリアでは最近こんな事態が頻発しているそうだ。日本のほとんどのサービスエリアには急速充電器が設備されているが、ここでPHEVを充電していると、後からきたBEV(Battery Electric Vehicle)のユーザーに「PHEVは充電しなくたって走れるんだから、充電しないと走れないBEVを優先させろ」みたいなことを言われて小競り合いが起きているという。

気持ちは分からなくもないけれど、PHEVかBEVか以前の問題として、大人が子供に言って聞かせる「順番を守る」という社会常識を当の大人が完全に無視しているわけで、これなんかはちょっとどうなんだろうと思ってしまう。

たとえサービスエリアでスムーズに充電が出来たとして、PHEVは長距離走行に向いていないのも事実である。電気だけで走ろうとして、30kmごとにサービスエリアに入って30分充電というのはあまりにも非現実的であり、満充電しても30kmから先は単なる重い3シリーズセダンとなってしまうのだから燃費も期待できない。

つまり現時点でのPHEVとは、限定的条件を揃えることができるユーザーのみがその恩恵を受けられるモビリティなのである。限定的条件とは、自宅に“必ず”充電ができる環境があり、普段の行動範囲はバッテリーのみで走行できる距離内に収まっていること。例えば、平日は奥様が買い物や子供の送迎など近所の移動のアシとして使い、週末は家族で遠出する。そんなライフスタイルには向いているかもしれない。

PHEVなら、短距離用のEVと長距離用の内燃機搭載車の2台を所有する必要がなく、1台で済ませることができるし、いざというときにはガソリンで走れる点も心強い。深夜にどうしても外出しなくてはいけない事態に遭遇しても、PHEVなら充電が途中でもすぐにスタートできるが、EVだと必要な距離が走れるバッテリー残量に達するまで待たなくてはいけないからだ。

PHEVはその構造と商品の性格上(=内燃機を搭載するモデルのラインナップのうちのひとつ)、駆動用バッテリーをこれ以上たくさん積むことはできないだろうから、EV航続距離が(バッテリーの革命でも起こらない限り)飛躍的に伸びる可能性は低い。それでも自動車メーカーは厳しい環境規制をクリアするべく電動化に取り組まなくてはならず、PHEVは(たとえそんなに数が出ないと分かっていても)今後も積極的に作っていかなくてはならない。

BMWは、2019年には745e/330e/225xe/530e/X3 xDrive30e/X5 xDrive45e、2020年にはX1 xDrive25e/330eツーリングの導入を決めているという。ちなみに彼らの試算では、全世界におけるBMWの電動化自動車(HV、PHEV、BEV)の台数は今年中に50万台を超えると予想している。そして2025年までには、世界のBMW車の30%が電動化されているそうだ。

10秒間40psを上乗せする“ブースト機能”も

“アクティブハイブリッド 3”という長い名前から“330e”と分かりやすくシンプルになった新型3シリーズのPHEV。そのパワートレインは基本的に従来型と同じ考え方で、2リッターの直列4気筒ターボエンジンと8速ATをベースに、トルクコンバーター部分にモーターとクラッチを仕込んだ構造(ハウジングの全長はノーマルの8速ATよりも約15mm長い)としている。

エンジン単体では184hp/300Nm、モーターは113hp/265Nmを発生。システム出力は最大で292hp/420Nmと発表されている。この「最大で」という註釈が今回のユニットが従来型と異なる点。「XtraBoost」と呼ばれる新機能は、本来なら252hpのシステム最高出力を10秒間だけ+40hp上乗せして292hpにする。モーターの駆動力を瞬間的に最大限利用して、エンジン+モーターのパワートレインにしかできない強烈な瞬発力をドライバーの任意のタイミングで使えるようになった。

10秒間しか使えないというのがちょっとゲーム感覚的でもある一方で、じゃあ具体的にどんな状況でコイツを使ってみようと思うのか、想像力の乏しい自分にはちょっと考えが及ばなかった。というのも、XtraBoostの助けを借りなくても330eは日常域で十分過ぎるほどパワフルで、330iと大差なかったからである。

ガソリンエンジンを積んだ330iと330eの車両重量を欧州仕様車のスペックで比べてみたら、300eのほうが270kgも重いことがわかった。330iのパワースペックは258hp/400Nmなので、トルクは330eのほうがある。さらに最大トルクの発生回転数は330iより200rpm低い1350rpmで、これにモーターのアシストも加わるのだから、特に発進直後の加速域では270kgの重量差がほぼ相殺されていると言っていいだろう。

一方で、操縦性の観点では質量差を感じるのも事実である。330eの資料を最初から最後まで読んでも、BMWではお約束の「前後重量配分は50:50」という文字はとうとう見つからなかった。リチウムイオン電池は後席のフロア下に置かれていて、このために燃料タンクはリヤアクスルの上に移動されている。電池をどうにかホイールベース内に収めたところにBMWの重量配分へのこだわりが見てとれるが、燃料タンクはボディ中心よりも離れトランクスペースも小さくなってしまった(480リットルから375リットル)。

しっとり、しっかりとした重厚感

実際に運転していて操舵応答遅れはないものの、左右への切り返しが連続するようなシーンでは後方に重いものが載っているようにちょっと感じる。むしろ、ツーリングのほうが後方の重さは感じなかった。回頭性やライントレース性は330iとほとんど変わらない。リヤが重い分だけ後輪に荷重がかかって、トラクション性能は330eのほうが若干いいかもしれないと思った。

ばね上が重いとばね上は動きにくくなり、これが乗り心地の向上にひと役買う。重量の重いクルマのほうが乗り心地がいい傾向にあるのはこうした理由からで、330eの乗り心地も330iよりはしっとりと、そしてしっかりとした重厚感がある。

ただし、路面からの入力が身体に伝わってくる際に、ゴムの塊を介しているような感触があった。実はこれ、アクティブハイブリッド 3で感じられたものと同種である。ガソリンやディーゼルでは感じられないから、バッテリーを搭載したこと+燃料タンクの移動によるなんらかの共振ではないかと推測する。バッテリーは重いだけでなく剛性もあるので、ボディの構造部材としての役目を果たす場合も多いし、リヤアクスルの真上に燃料タンクが載っているわけで、こういった事象が“ゴム感のある乗り心地”の原因となっているのではないだろうか。

バッテリー性能はアクティブハイブリッド 3よりも向上したそうで、EVでの航続距離は最大で66kmまで伸びている。これにより、燃費は先代より15%以上改善されたそうだ。これならば、東京と橫浜の往復くらいならガソリンを使わずに済むかもしれない。モーターのみの最高速は“エレクトリックモード”を選べば140km/h、通常でも110km/hまでのドライブが可能だという。

それでもやっぱり、PHEVは現時点で誰にでも勧められるモビリティではなく、前述の限定的条件が揃っている人のみがその嬉しさを享受できるにとどまる。ランニングコストだけを考えたら、ようやく日本でも導入がスタートした320dがおすすめである。

REPORT/渡辺慎太郎(Shintaro WATANABE)

【SPECIFICATIONS】

BMW 330e Sedan

ボディサイズ:全長4709 全幅1827 全高1444mm

ホイールベース:2851mm

トレッド:前1573 後1569mm

車両重量:1740kg

エンジン:直列4気筒DOHCターボ

総排気量:1998cc

ボア×ストローク:82.0×94.6mm

最高出力:135kW(184hp)/5000-6500rpm

最大トルク:300Nm/1350-4000rpm

圧縮比:10.2

モーター最高出力:83kW(113hp)/3170pm

モーター最大トルク:265Nm/0-3170rpm

システム最高出力:215kW(292hp)※XtraBoost使用時

システム最大トルク:420Nm

駆動用バッテリー:リチウムイオン電池

トランスミッション:8速AT

駆動方式:RWD

サスペンション形式:前ダブルジョイント・スプリング・ストラット 後5リンク

ブレーキディスク:前後ベンチレーテッドディスク

タイヤサイズ(リム径):前後225/50R17(7.5J)

【問い合わせ】

BMWカスタマー・インタラクション・センター

TEL 0120-269-437

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