もくじ
ー 後輪駆動が購入動機にならない小型のBMW
ー FFのアンダーステアを見事に回避
ー スポーツサルーンとして充分に期待
後輪駆動が購入動機にならない小型のBMW
BMWは新しい2シリーズ・グランクーペを開発するに当たり、避けられないジレンマを克服しようとしている。良質なハンドリングを犠牲にせず、充分な乗員空間とラゲッジスペースを確保するという命題だ。このクルマを見るとBMWのエンジニアは、ダイナミクス性能をいかに保つかを優先的に進めたようだ。冬場にタイヤチェーンを巻くとしたら前輪には変わりはないが、技術的にはアンダーステアを解消できているようだった。
新しいグランクーペは、3世代目の1シリーズなどと共通のFAARプラットフォームを採用する。これにより、後輪駆動の2シリーズと比較して後部座席の座面部分の前後長を34mm延長。ラゲッジスペースは450ℓを確保することができている。
車内空間は充分に大きくなったとしても、前輪駆動のBMW製スポーツサルーンという点では、異論も少なくないだろう。古くからのBMW信者の中には、ミュンヘンはブランドらしい運転感覚を捨ててしまったと感じるひともいるかもしれない。しかしBMWは、2シリーズのターゲット層は、さほど駆動輪を気にしていないと考えている。
「通常のお客様は、前輪駆動か後輪駆動かを重要視していません。しかも1シリーズの場合、80%のユーザーは150ps以下のエンジンを選んでいます。前輪駆動の小馬力モデルに対する販売ボリュームは大きいのです。BMWを欲しがるお客様の中で、必ずしも後輪駆動かどうかが購入動機というわけではないのです」 とシャシーエンジニアのヨハネス・キュベルガーは説明する。
FFのアンダーステアを見事に回避
後輪駆動支持者に対する備えとして、モデルラインナップのトップグレードには、4輪駆動システムのxドライブも準備。EVのi3由来となるARBトラクションコントロール・システムも採用した。
システムから転送されるデータを元にエンジンをコントロールするECUが出力を制御し、クルマの姿勢を適切に保持。ホイールスピンをより迅速に検知し、正確なトラクションの制御を可能としている。またBMWはエンジンルーム周りに補強ブレースを取り付け、リアのサブフレームとボディとの間にもブーメラン形状の補強材が追加されている。
ハードウェアとソフトウエアの両面で、310psを生み出すM235iのシャープでバランスの取れたハンドリングを支えている。xドライブは必要に応じて必要なトルクを前後のタイヤへと分配し、グリップ力を最大限に発揮するすぐれもの。ターボで過給される4気筒エンジンのトルクの内、最大で50%を後輪へ伝達する。挙動も予測可能で、運転も楽しい。
グランクーペはややフロントヘビーで、押されるというより、引っ張られるような感覚はある。だがミュンヘン郊外のカーブが続くエリアを試乗した限り、アンダーステアは見事に回避され、BMWのブランドイメージに傷が付くことはなさそうだ。キュベルガーはまだ開発途中だと念を押していたが、ステアリングはダイレクトで重み付けも適正だった。
スポーツサルーンとして充分に期待
2.0ℓエンジンはスロットルペダルに触れるやいなや、その力強さを見せつける。直線での加速は鋭く、0-100km/h加速も5秒台になる見込み。リニアな加速感で、スムーズにスピードを乗せていく。M235iはわれわれがBMWに期待する安心感を伴って、アウトバーン・クラスのスピードで走行ができる。ドライブモードをコンフォートにすれば、穏やかな乗り心地のクルーザーとしても不満はないだろう。
228i xドライブも試乗したが、コーナリングフィールは310psの兄弟に近い身のこなしを披露。しかし、パフォーマンスやグリップの限界には流石にすぐに届いてしまった。グレードと価格に比例した内容であり、より穏やかな性格付けのサスペンションは、日常的な路面環境において、より快適な乗り心地を提供してくれるだろう。
エンジンのラインナップには、より燃費優先のものからディーゼルターボまでが含まれる。またxドライブではない、前輪駆動も選択は可能だ。1シリーズと2シリーズの広報担当者、フロリアン・モーザーによれば、FAARプラットフォームはEVとしての利用も可能とのこと。しかし、グランクーペのパワートレインのひとつとして追加するには、まだ時期尚早ということだった。
量産化に向けたプロトタイプの短い試乗ではあったが、BMWは2シリーズ・グランクーペを、快適性も保ちながら、ブランドとしてのパフォーマンスの個性を失わせずに完成させるだろう。2シリーズ・クーペのようなアスリートではないものの、スポーツサルーンとしては充分に期待できると思う。
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