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ニューモデル 2019.7.20

BMWとの共同開発でもトヨタらしさを存分に表現! 新型トヨタ・スープラのメカニズムに迫る

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 目指したのは軽量な後輪駆動のスポーツカー

 トヨタ自動車とBMWグループが、「燃料電池(FC)システムの共同開発」「スポーツカーの共同開発」「軽量化技術の共同研究開発」に関する正式契約を締結したのは2013年1月24日のことだった。ここで言う「スポーツカーの共同開発」が、新型スープラにつながったのは言うまでもない。

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 しかし、この日からプロジェクトが動き出したわけではない。正式契約の前段階として2012年6月には覚書の締結がなされている。このタイミングからスープラの開発はスタートしている。

 プロジェクトの最初期段階から関わってきたのは、ボディ設計のスペシャリストである石川良一さん。『ボデーエキスパート』として設計図のチェックを始めたのは、覚書を締結した直後だったという。

「多田らが求めるスポーツカーとして必要な要素などを知ったうえで、初期の作図データをチェックしたのが、最初の関わりになります。自分自身の経験としてアルテッツァなどFRスポーツ系のボディ設計やLFAのカーボンボディの設計、レクサスF系などの担当をしてきました。そうした経験を生かして、『軽量な後輪駆動のスポーツカー』という開発チームの意向を受けて、狙っているパフォーマンスが実現できるボディであるかどうかを図面の段階から確認するのが役割です」と石川さん。

 ニュルブルクリンク24時間レースに参戦するマシンのエンジニアも務めている石川さんに、さらに具体的な印象について聞いてみよう。

「最初の図面は、骨格が直線的に通っているボディを示していました。低く、強いボディを目指しているという意図は十分に感じました。その図面をお見せすることはできないのですが、例えるならホンダS2000のハイXボーンフレームのように高い位置に真っ直ぐにズドンと骨格があると言えば伝わるでしょうか。センタートンネルが強いフロアというイメージです。いずれにしても、強いボディを目指したことが伝わってくるものでした」

 この段階で懸念となる部分はなかったのだろうか。単純に考えても強いボディと軽いボディを両立することは難しい。

「ボディ剛性に影響を与えない軽量化の手法として、フタモノ(ドアなどの外板部品)のアルミ化や、バックドアまたフロントフェンダーなどをCFRPにすることなどは提案しました。それは、低重心化をさらに進めるには必要な手段だと考えたからです。もちろんアイディアを出すだけではわれわれの仕事としては成立しません。もしカーボンボディにするとなっても、その図面をチェックできることが求められます。しかし、すでにLFAの設計でフルカーボンボディを経験していました。カーボンでフタモノを量産するにあたって、チェックできるだけのノウハウを有していたから提案できたのです」

 では、新型スープラのボディに手応えを覚えたのはいつ頃だったのだろうか。

「その後、設計が進んだ段階、試作車ができる前です。同じようなクーペボディということで、スープラとレクサスRCやLCと設計値を比べてみるとボディ断面の強さではレクサスが優勢でしたが、ねじり剛性ではスープラが高い数値を示していました。つまり上物(ボディ)は軽く、フロアで強さを出しているということです。上物を軽くするということは重心を低くすることにつながりますから、当初の狙い通りに仕上がっていると手応えを感じました」と石川さんは振り返る。

 あのレクサスLFAを凌ぐボディ剛性を手に入れた

 そして2013年には、最初の試作車ができあがってくる。しかし、その前にやるべきことがあった。それは性能や品質面での目標設定だ。ここで力を発揮したのが薮木寿一さんだ。

「わかりすいところでは、まずライバルを設定することがあります。新型スープラでは、ポルシェ・ケイマン(当時は水平対向6気筒エンジンをミッドシップに積んだ2シータースポーツカー)をライバルとして想定しました。エモーショナルな表現をすると、スポーツカーらしい挙動、手応えのあるドライビングが新型スープラでは必要な条件と考えたのです」と薮木さんは語る。

 初期段階から直列6気筒エンジンを積んだFRスポーツカーというスープラの伝統を受け継ぐパッケージングは決まっていた。2シーターと割り切ることで実現した2470mmというショートホイールベース、コーナリング性能に大きく影響するワイドトレッドや低重心、そして前後重量配分の好バランスも初期の設計段階から織り込まれている。むしろ、新世代スポーツカーの共同開発というプロジェクトがあったからこそ、理想を追求したまったく新しいプラットフォームを開発することができたという面もあるだろう。その後、新しいプラットフォームに基づいた試作車があがってくる。

「試作車といってもクオリティが高く、運転してみても非常に高いレベルにあると感じました。大きな課題はないと思えるようなレベルに仕上がっていたので、順調なスタートという印象だったのは事実です」と薮木さんは語る。

 こうして試作車をベースにしながら具体的に“スープラ”として煮詰めていくことになる。その段階から、操縦安定性などの運動性能に関わる川崎智秀さんが参画する。

「私も非常に素性のいいプラットフォームというのが第一印象でした。スープラを作り上げるためのスタート地点としては、十分に高いレベルにあったと感じました」と川崎さん。「完成度が高いというのは同意します。ただし、あくまでもスタート地点としてのレベルの高さであって、課題はいくつもありました。ハンドルのフィーリング、乗り心地などは当然ながら煮詰める必要がありました。また、ATのシフトフィーリングはステップATとしては十分だったかもしれませんが、ライバルとしてケイマンを想定していましたから、ポルシェのPDK(ポルシェ製デュアルクラッチ式AT)と比べるとまだまだという印象でした。また、エンジンサウンドについてもスポーツカーとしては十分とは言えませんでした」と思い出すのは薮木さんだ。

 この頃、ボディ関連でも課題がクローズアップされていた。それは軽量化についての問題だ。それなりに市販バージョンが見えてきた段階で、まだ目標重量に対して20kgも届いていなかったのだという。いまさらカーボンボディにしたり、軽量合金に置換したりするのも難しいタイミングでのマイナス20kgはかなりハードルが高い。「ですから、もう一度図面を見直して、どこか改善できるポイントが見つからないか、探したのです」というのは石川さん。

「BMW側でも十分に検討したでしょうから、トヨタのエンジニアによるセカンドオピニオンといったところでしょうか。こちらとしても設計図をくまなくチェックして、なにかできることはないかと必死に探しました。必要な強度や剛性を満たしたうえで、軽量化できそうなポイントをいくつか見つけたので、レポートとして送りました」と石川さんは当時を振り返る。

 結果的に、6気筒エンジンモデルで1520kg、4気筒エンジンモデルでは1410kg~1450kgという軽量ボディに仕上がった。初期段階のチェックだけでなく、開発の佳境においてもトヨタの知見がボディ設計に投入されているということは事実であろう。結果として新型スープラのボディは、石川さんが担当したというカーボンモノコックボディのLFAを凌ぐ高剛性を手に入れているという。エントリースポーツと言える「86」と比べると、じつに約2.5倍ものボディ剛性を手に入れている。スープラのボディの特徴はスチールとアルミニウムという異なる素材を接合したもの。まさに軽さと強さという開発初期からの狙いを両立するハイブリッドボディである。

 素性のよさを生かしながらトヨタの知見を注ぎ込む

 スープラの開発において、目標性能などを設定した川崎さんに、具体的な内容を聞いてみよう。

「さまざまな要素をレーダーチャート化して、スープラの求める走りを具体化していくわけですが、大きな要素としては3つのポイントがありました。それは、ステアフィール、シフトフィール、旋回性能です。それぞれ具体的な目標を整理すると、ステアフィールにおいては『ステアリングを切っていくほどフィードバックがあって、タイヤを感じることができる』というのがテーマでした」

「新型スープラは8速ステップATの設定ですが、ATにおけるシフトフィールで重要なのは『ダウンシフト時のエンジン回転の上がり方』にあります。スポーツカーらしい切れ味のあるフィーリングが必要だと考えました。そして、旋回性能では『GRブランドとしてニュートラルステアに近いフィール』が求められます。もちろん、高い旋回Gを受けているときの安心感なども重要です」

 ここまで、新型スープラについてはハンドリングの話が多くなっているが、それはスープラの立ち位置において、スポーツカーとして重要なポイントがコーナリング性能であるからだ。また、スープラにおいては、いわゆるスーパースポーツ(スーパーカー)と最高出力を比較するのもナンセンス。伝統を受け継いだ直列6気筒ターボエンジンにしてもピークパワーは250kW(340馬力)であるし、2種類のスペックを持つ4気筒ターボエンジンは190kW(258馬力)、145kW(197馬力)にとどまる。最大トルクは6気筒が500N・m、4気筒が400N・m、320N・mとなっており、いずれもターボエンジンらしく1500rpm前後から最大トルクを発生する。

 前述したように1410~1520kgの車重を考えれば十分なことは理解できるが、それでも異次元の加速フィールでスポーツカーらしさをアピールするというレベルではない。スペックからはあくまでハンドリングありきで、それに見合ったパワーユニットを選んだという印象を受ける。開発を振り返ったときにボディやシャシー系の話が多くなるのは宣なるかなである。

 さらに川崎さんが興味深いひと言を述べた。それは「素性のいいプラットフォームだったからこそ、トヨタの味を入れるのが難しかった」というものだ。一見すると素性がよければ味付けもしやすいと思いがちだが、うまく出汁のとれたスープに、塩を加えすぎては本来のよさが台無しになるのも事実。ベースが優れているからこそ、味付けには慎重にならざるをえない。

 性能はもちろんエキゾーストサウンドにも意味を持たせる

 そうしたトヨタらしさの表現において、新型スープラにおけるポイントと言えるのがエキゾーストサウンドの作り込みだ。とくに6気筒エンジンは、ターボとは思えないほどの高い周波数の快音に仕上げられている。また4気筒は、ターボらしいビートの効いたサウンドだ。どちらもSPORTモードを選ぶとアクセルオフで「パン!」といったアフターファイア的な演出もある。

 初期の試作車を評価した薮木さんがエンジンサウンドについて課題を感じたということも記したが、完成したスープラが奏でるエキゾーストノートは、まさしくトヨタの考えるスポーツカーサウンドを実現したものだという。その音づくりにおいて注力したのが福原千絵さんだ。

「多田から『サウンドに意味を持たせたい』と言われたのは2016年の夏頃でした。スポーツカーらしい官能的で気持ちのいいサウンド、音だけでスープラが近づいてきたとわかるようにしたい、という希望もありました。そこから音づくりに入っていったわけです」と福原さんは、プロジェクトへの関わり始めを思い出して教えてくれた。

 最近ではエンジンサウンドを電子音として作り込み、キャビンにスピーカーから流すという手段もある。しかしスープラではエキゾーストエンドから発するサウンドとして作り込んでいる。これはドライバーだけでなく、誰もがスポーツカーの魅力を味わってほしいという意思が入っていることの証左と言える。

「ですから、電子デバイスで音づくりをする以前に、ハードウェアによってそれぞれの音を作り込みました。6気筒は伸びやかなサウンド、4気筒はシンプルでスマートなサウンドを目指しています。またアフターファイア音については、スロットルや点火によって演出しています。これはドライバーの操作がクルマとつながっていることをフィードバックできるよう考えてのものです」と福原さんは続ける。

 じつは多田さんからはサウンドによって『手応えをシャープにしたい』というリクエストもあったという。スポーツカー、スーパーカーのエキゾーストノートというと単に爆音にしておけばそれっぽいと思うかもしれないが、ドライバーが愛車とつながっていることを実感できる音づくりがスープラにおいてはなされたというわけだ。そして、音づくりで得たノウハウはスープラに限った話ではないのだという。

「スープラの開発における音づくりというのは、ある意味で客観的な立場からでした。それによってトヨタのよさであったり、改善点であったりが見えてきたのは、未来につながる収穫です。さらに言えばトヨタのスポーツカーを担うGRカンパニーとしての音づくりについて、しっかりとした知見が得られたと感じています」と福原さんはまとめる。

 では、新型スープラの開発によってほかのお三方も同様に得たものはあったのだろうか。まずは石川さんから伺ってみた。

「たとえばロールオーバー対策として、トヨタではAピラーからルーフにかけてかなり丈夫に設計するのですが、BMWは異なるアプローチで安全性を確保していたのは発見でした。そうした新鮮な発見はお互いにあったと思います。また、スープラのボディ設計を煮詰めていくなかで、GRが作るスポーツカーはどうあるべきか、という部分で認識が明確になったとも感じています」

 品質面で尽力した薮木さんには、また違った印象があるようだ。

「どちらもスタッフは少数精鋭でした。それだけに非常に密度の濃いコミュニケーションがとれたことが印象深く記憶に残っています。コミュニケーションの結果が製品にどんどん反映されていき、非常にやりがいを実感できるプロジェクトでした」

 最後に川崎さんの思い出を伺った。

「ここまで運動性能にこだわったクルマを開発したのは初めてです。言語的に細かいニュアンスでのコミュニケーションには苦労もありましたが、薮木が言うようにどんどんスープラらしくなっていったことは印象的です。トヨタだけでは作れなかった、協業だからこそできたスポーツカーがスープラだとあらためて思います」

 新型スープラがトヨタとBMWの共同開発によるというのは紛れもない事実だ。しかし、トヨタがスープラの開発をBMWに丸投げしたという巷の声は事実ではない。今回、ボディ設計、性能品質、性能開発、音づくりと、それぞれの局面において関わった4名のエンジニアに話を聞くことで、トヨタの意思が強く入っていることを確認することができた。しかし、トヨタだけでスープラを生み出すことができたのかと言えば、それは事実ではない。川崎さんが言うように新型スープラは『協業だからこそ生み出すことができた』スポーツカーなのである。

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