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ニューモデル 2019.7.20

ポルシェ/アストン/ジャガー チーフエンジニア鼎談 スポーツカーの未来は安泰

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もくじ

ー 最高の3人 初の試み
ー 完璧主義者? 若手エンジニアについて
ー もしやり直すなら? 電動化の影響
ー パワー競争の行方 最高のドライバーズカー
ー 組織vs個人? 極秘プロジェクト
ー SUVの功罪 最高のドライバー
ー 影響を受けた人物 スポーツカーの未来

    AUTOCARアワード2019 生涯功労賞 マイク・クロス/ジャガー・ランドローバー

最高の3人 初の試み

だれでも良い。世界中から3人を集めて、同じテーブルでクルマについて語り合ってもらおう。

速いクルマ、興味深いクルマ、毎日乗れるクルマ、ドライバーズカー、EV、モータースポーツといった話題についてだ。

誰を選ぶべきだろう?

クルマについて語ってもらうなら、この3人以上の人物はいない。アストン マーティンが誇るビークルエンジニアリングのチーフエンジニア、マット・
ベッカーに、ジャガー・ランドローバーの車両開発チーフエンジニア、マイク・クロス、そして、ポルシェでハイパフォーマンスモデルの責任者を務めるアンドレアス・プロイニンガーだ。

世界最高のドライバーズカーのチューニングを行い、そのキャラクターを決めている彼ら3人は、自動車業界でもっとも影響力のある人物であり、AUTOCAR読者にとっては、それぞれが馴染み深い存在だろう。


彼らは、われわれが夢見ることしかできないような、驚くべき経験を長年にわたって積み重ねてきたのであり、それぞれが、非常に印象的な人物でもある。

それぞれとは定期的に話をする機会はあったが、それも3人別々にであり、同じテーブルに付いて、スポーツカー業界の噂話や、それぞれの実績、さらには、自動車好きの未来における希望や懸念を話し合うことはなかった。

だが、それも過去の話だ。

完璧主義者? 若手エンジニアについて

――みなさんはクルマ好きであれば世界最高だと考える職業についていますが、どうやって自分の役目が終わったことが分かるのでしょう? どの時点でクルマが仕上がったと言えるのですか?

マイク・クロス(以下、クロス):問題は、実際には決して終わりがないということです。

アンドレアス・プロイニンガー(以下、プロイニンガー):そうです。決して終わりはありません(笑)

クロス:単に、これ以上やってもそれほど効果が得られず、量産の準備が整ったと思えるポイントがあるに過ぎません。これまでに、完ぺきに納得したことがあったかどうか、わたし自身定かではありませんが、自分で設定したターゲットに到達したことは分かるものです。

――周りから完璧主義者と呼ばれる?

クロス:確かに。まわりはイライラしていることでしょう。

マット・ベッカー(以下、ベッカー):違う呼び方をしているのかも知れません。

――本物のドライバーズカーの基準を、チームと共有している?

ベッカー:チームのメンバーとは共通認識を持っていますが、それは、彼らが何を「良い」と思うかを基準に厳選されたメンバーだからです。「良い」というのは、やや主観的な評価でもありますが、すべてをひとりで行うことは不可能なので、同じ感覚を持ったチームが必要なのです。

プロイニンガー:そのことは、いまもシャシーエンジニアリングにおける真実であり続けています。クルマに乗って感じたことを信じるしかありません。そして、それこそがわれわれが創り出そうとしているものであり、見事なチューニングなのです。ドライバーの皆さんにはクルマの挙動を感じて欲しいのであり、そのために電子デバイスが役立つようにしたいと考えています。難しい課題ですが、重要なことです。単なる体験テストやコンピューター、シミュレーションといったものでは不十分なのです。

――自分たちの若いころと比べた、いまの若手エンジニアの優れている点と改善すべき点は?

クロス:わたしの若いころに比べ、彼らははるかに豊富な知識を持っていますが、それが実践的なものかどうかは分かりません。もっとクルマを愛し、メカニカル面への興味を持って欲しいと思っていますし、そのための適性も必要でしょう。

プロイニンガー:わたしもまったく同感です。いまのところは、体にガソリンが流れているような本物のクルマ好きのエンジニアたち多くいて、前へと進むことが出来ています。仕事に全霊を傾け、創造性を発揮して、24時間ほんとうに素晴らしいクルマ創りを考えているようなひとびとです。いまの若い世代には、もう少し本気で取り組むとともに、実践的な考え方を身に付けて欲しいと思っています。

もしやり直すなら? 電動化の影響

――20年先の後任は決めている?

プロイニンガー:はい。

ベッカー:まだです。

クロス:分かりません。

――もしやり直すとしても、同じキャリアを選択する?

ベッカー:はい。
クロスの言う通り、つねに新しい学びがあり、ソフトウェアと若い才能を活かして、ひとびとがクルマに求めるフィールを実現するというのは、素晴らしい喜びです。

クロス:つねに新しいモデルであり、決まりきったやり方は通用しません。つねに学ぶべきことが多くあります。

プロイニンガー:間違いなく同じキャリアを歩みます。何度もスポーツカーは死んだと言われましたが、つねに技術によって道を切り拓いてきたのです。次の20年は、これまでの20年よりも刺激的なものになるでしょう。

――ドライバーアシストはスポーツカーに有益?

ベッカー:ドライバーアシストによって自動車の魅力を高めることが可能であり、実際にそうしています。アストンの場合、スイッチをオフにすることで、介入を無くすことができます。完全に動作を停止するのです。スタビリティコントロールとトラクションコントロールは大きく進化し、非常にクレバーなシステムとなっていますから、いまでは車両に起こることを事前に予測することすら可能です。つまり、正しいセッティングを行うことで、ドライビングの楽しみを阻害しないようにすることは可能であり、それこそがわれわれの役目なのです。

プロイニンガー:こうしたシステムに関する大きなテーマは、つねに「何を達成しようとしているのか?」ということです。スポーツカーにおけるトルクベクタリングは非常に有益です。週末サーキットに自分のクルマを持ち込むひとびとの目的はラップタイムであり、実感できるだけの効果があるということです。

クロス:同時に、車両の基本性能を正しい方向に導くことも重要です。そうすれば、ドライバーアシストは、その車両の持つ性能をさらに向上させることができるのです。低速でも高速でもドライバーとの繋がりが求められています。

――電気モーターで、いまのポルシェとジャガー、アストンのエンジンと同じキャラクターの再現は可能?

クロス:無理です。だからこそ、デザインやハンドリング性能、快適性、洗練といった、伝統的な特徴が、クルマのキャラクターを決めるより重要な要素になると考えています。電気モーターでは内燃機関ほどの違いをもたらすことはできないのです。

プロイニンガー:それでも、内燃機関がなくなるその日まで、ともかくスポーツカーにエンジンを搭載し続けることは可能であり、そのころには、3人ともとっくに引退しているでしょう。つまり、次の世代の問題です。内燃機関にはまだまだ時間が残されていると信じています。もちろん、電動化は正しい道であり、その時代を見据える必要はありますが、だからと言って、それがひとびとが見向きもしないようなスポーツカーを創り出すことを意味するわけではないのです。

パワー競争の行方 最高のドライバーズカー

――パワー競争はいつまで続く? 現代のドライバーにより少ないパワーで納得させることは可能?

ベッカー:どうでしょうか。今後10年でスポーツカーのハイブリッド化はさらに進むでしょう。そして、電動化は重量増を招くことから、より多くのパワーに頼らざるを得ないのです。この状況がどこまで続くのかは分かりません。

プロイニンガー:もう直ぐ、パワーを増やしても、それほどの効果が得られない状況がやって来ると思います。個人的には200馬力では、真夜中に起き出してドライブを楽しむにはパワーが少ないと感じるでしょう。刺激を味わうにはそれなりのスピードが必要であり、重量が1400~1500kgのモデルであれば、本当にドライビングを楽しむには、最低でも300から350馬力が求められます。オーバーパワーに感じるかどうか、ギリギリのところを上手く見つけ出すことが出来れば、決して飽きることのないドライビングを楽しめるでしょう。エンジニアとしては、刺激を求めるあまり、グリップの限界を超えるような走りをするというのは、あまり認めたくはない考え方です。さらなる刺激をもたらすための、別の方法を常に見つけ出そうとしています。

ベッカー:さらに、クラシックモデルを運転してみても、魅了されることはほとんどありません。つねに、「ブレーキのフィールが最高とは言えない。ステアリングもいまひとつであり、グリップも足りない。リアからのフィードバックも欠けている」などと考えてしまいます。ステアリングを握っている間中、気に入らない点にばかりが頭に浮かんでくるのです。新しいモデルのような進歩を感じることができないからです。われわれの役目は前進することにあります。

――それぞれのブランド以外で、いま世界最高のドライバーズカーを創り出しているメーカーはどこ?


ベッカー:いまフェラーリ458を所有しています。溢れるほどの刺激と、驚くようなハンドリングレスポンスを味わわせてくれます。911も好きなモデルです。先代GT3 RSを運転したときには、かつて手掛けたロータス・エキシージを思い出しました。多くの刺激と魅力的なフィーリングとともに、驚くほどの速さを見せてくれました。

クロス:メカニカルなフィールを備えたモデルが好みですが、そうしたモデルは公道で十分に楽しむことのできる、ほどほどのパワーを備えています。ポルシェ・ケイマンは素晴らしいモデルだと思います。かつてルノー・メガーヌR26Rのステアリングを握ったことがありますが、一度タイヤが温まれば、非常に楽しかったことを覚えています。一方、あまりにもパワフル過ぎる場合、それほど運転を楽しむことができなかったこともあります。コーナーへのアプローチでは、単に大きく減速を強いられるだけのようなモデルです。かつて、ロータス・サンビームとシェベットHSを所有していたこともあります。

プロイニンガー:112psを発揮するフォルクスワーゲン・シロッコGTI 1600が初めての愛車でした。車重960kgで非常に気に入っていました。一方、カマロやチャレンジャーといったアメリカンマッスルカーも好みです。こうしたモデルには本物のキャラクターが備わっています。中味さえ本物であれば、安物の樹脂製ボディなど気になりません。

組織vs個人? 極秘プロジェクト

――自動車世界での成功でもっとも重要なものは何? ある特別な企業文化? それとも組織における個人?

ベッカー:アストン マーティンCEOのアンディ・パーマーは、本物のクルマ好きでもあります。彼が住んでいるのは、ここシルバーストンの目と鼻の先であり、これはある意味素晴らしいことです。彼はレースにも参加しており、そのクルマに対する愛情は本物です。わたしの仕事を信頼してくれてはいますが、彼自身の見解というものもあり、自らが専門家ではないとしながらも、彼の意見はときに貴重な気付きをもたらしてくれます。われわれが考えもしなかった点を指摘してくれるのです。彼の情熱が組織全体に広がっています。

プロイニンガー:ポルシェトップも全員クルマ好きですが、ポルシェ全体がそうだと感じています。ポルシェの離職率は非常に低く、同じ仕事を10年以上続けている、経験豊富なスタッフが大勢います。ヴァイザッハの全員が、本物のエンスージァストなのです。自らのためにクルマを作り、そこらじゅうを走り廻るのです。そのことは、すべてのポルシェで感じて頂けると思います。

――いまも伝説的な極秘プロジェクトは存在する?

ベッカー:はい。それが賢明な方法だからです。プロダクトプランニングやマーケティング部隊もそれぞれアイデアを持ってはいますが、彼らにはエンジニアの視点が欠けています。さまざまな要素を1台のクルマに落とし込む術を知り、毎日そうした作業を行っているからこそ、エンジニアは特別な何かを創り出すことができるのです。これが極秘プロジェクトの本質であり、かつてロータスで見られたものです。そして、オリジナルのV12ヴァンテージも同じような方法で産み出されたモデルであり、アストン最高のドライバーズカーの1台となっています。

クロス:やるべきことは1台のクルマを創り出すということであり、それが出来れば、社内を説得するなど非常に簡単です。

プロイニンガー:いくつかのモデルに関しては、パワーポイントを使ったプレゼンなどなんの役にも立ちません。しかし、敢えてリスクをとって、実際のモデルを創り出すことができれば、コンセプトを具体的に示すことができるのです。

ベッカー:ボッシュのようなサプライヤーのスタッフと一緒に、公道テストへと出掛けたとき、夜ビールを飲みながら彼らに、「トラクションの状況を学び、まるでレーサーと同じようなレベルにまで制御を最適化することのできるトラクションコントロールが開発できれば、最高ではないでしょうか?」と、話したことがあります。そして、実際に突然開発が開始され、1年後には、まさに話したとおりのシステムが出来上がっていました。ビールがすべてを解決してくれることがあるのです。

SUVの功罪 最高のドライバー

――すべてのスポーツカーブランドがSUVを手掛けることは問題?

クロス:つまるところ、われわれが行っているのはビジネスであり、成功が義務付けられています。そして、そのための方法が、ひとびとが求めるクルマを創り出すことなのです。

プロイニンガー:矛盾は感じません。自分自身クルマ好きですが、まったく問題ではないと思います。自宅へスポーツカーに乗って帰るという幸運な状況もありますが、大抵運転するのは所有しているカイエンです。荷物を持って出掛けたりしなければならないからですが、ドライビングも楽しむことができるのです。

ベッカー:いま、DBXの最終開発段階に差し掛かっています。その幅広い能力は信じられないほどです。アウトバーンでは快適に300km/hのクルージングが可能であり、ニュルブルクリンクでは信じられないようなラップタイムを記録することができます。さらに、原野を走行することもでき、5人の乗員と荷物を搭載するとともに、ときにはボートを牽引することまで可能です。その動力性能は驚異的ですらあります。一方で、ひとびとはブランドというものも求めています。そして、こうしたモデルを創り出すべきだったかどうか気にするのは、われわれでもなければ、お客様でもありません。それは外野のひとびとなのです。

――これまで同乗したなかで最高のドライバーは?

ベッカー:ダレン・ターナーは実に見事な腕前を披露してくれます。彼のコーナーリングスピードとそのスムースさは、じつに印象的です。

プロイニンガー:わたしにとってはワルター・ロールです。彼のクルマをコントロールするテクニックは信じられないほどであり、ステアリング操作はごく僅かですが、それが非常に重要な意味を持っています。さらに、驚くほど速いドライバーでもあります。彼との同乗試乗を終えると、いつも同じことを考えるのです。つまり、「あれほどのグリップをどこから得たんだろうか?」ということです。そして、それはいまも変わりません。

クロス:数年前、ジョン・ワトソンが運転するジャガーでここを走ったことがありますが、素晴らしいドライバーです。非常にスムースで、サーキットのすべてを上手く使って、驚くほど速く、効率的な走りを見せてくれました。スティグ・ブロンクビストの横にも乗ったことがありますが、本当に特別な瞬間でした。

――大きな事故に遭遇したことは?

ベッカー:仕事ではありませんでしたが、ドライビングの練習をしていた時のことです。残念ながら、ロータスを離れるときに、「ベイビー・ベッカー・ベンド」として知られるようになったコーナーがあります。父が所有するヴォクゾール・カールトンのエステートでそのコーナーを通過しているときに、ドリフト状態に持ち込もうとしました。そうできると思ったからですが、上手くはいきませんでした。道の反対側にある壁に激突したことが知られてしまいました。当時17歳でした。それ以来、大きな事故はありませんが、さまざまな経験を与えてくれるクルマたちは金額では表せない貴重な存在であり、大切にしなければなりません。

影響を受けた人物 スポーツカーの未来

――仕事上もっとも大きな影響を受けたのは誰?

クロス:ジャッキ・スチュアートとリチャード・パリー・ジョーンズと多くの時間を過ごせたことは幸運でした。ふたりは多くのことを教えてくれました。

プロイニンガー:ローランド・クスマウルです。エンジニアでありワルター・ロールの親友でもある彼は、1960年代以降、ポルシェで働いていました。パリ・ダカールへの出場経験もあるクスマウルは、ポルシェ・モータースポーツにおける、ドライビングダイナミクスの大家でした。わたしがクルマについて知っていることのすべて、そして911に関するほとんどの知識は、彼から学んだものです。

ベッカー:わたしの場合は父であるロジャー・ベッカーです。父はわたしがやってみたいと思う仕事をしていたので、その姿を見て育ちました。6歳のとき、父が評価を行っていたロータスに同乗したことがありますが、なぜ彼が他のクルマがいない2車線道路を走りながら、レーンチェンジを繰り返しているのか、最初は理解できませんでした。それでも、最終的には、ようやくその意味を理解することが出来たのです。とても小さいころからの経験が、非常に役に立っています。

――マニュアルとオートマティック、どちらがお好み?

ベッカー:パドルシフトですね。

プロイニンガー:マニュアルです。

クロス:わたしもパドルシフトです。

――ターボ派? それとも自然吸気派?

ベッカー:自然吸気が好みです。

プロイニンガー:わたしも自然吸気です。

クロス:高回転型の自然吸気が好きです。

――アダプティブダンパー派? それとも見事なチューニングを受けた高価なパッシブダンパーを選ぶ?

ベッカー:アダプティブです。

プロイニンガー:わたしもアダプティブです。

クロス:同じくアダプティブです。

――スポーツカーは次の50年を生き残る?

プロイニンガー:最後に作り出されるクルマとはスポーツカーになるはずです。間違いありません。

クロス:まったく同感です。最後まで自動車を求めるのは、クルマ好きのひとびとだと思いませんか?

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(AUTOCAR JAPAN 編集部)

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