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ビートルズ「ホワイトアルバム」に通じる 英国の温もり ミニ・リマスタード 試乗

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ビートルズ「ホワイトアルバム」に通じる 英国の温もり ミニ・リマスタード 試乗

もくじ

ー 誕生から60年を経てリマスタリング
ー 基本価格は9万ポンド(1224万円)から
ー ボディ構造まで徹底的に焼き直し
ー オリジナルの押さえるべきポイントはそのまま
ー デイビッド・ブラウン・オートモーティブ・ミニ・リマスタードのスペック

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誕生から60年を経てリマスタリング

ザ・ビートルズが1968年に発表したアルバム「ザ・ビートルズ」、通称「ホワイトアルバム」は、素晴らしいミックスが加えられたダブルアルバムだった。これまでのレコードの中でも最も良い1枚だといえるが、発表から50年を迎えたことを記念して、最新のデジタルリミックスが施された特別エディションが2018年に発売された。英国車ファンなら、ご存知の読者もいるだろう。

これにはオリジナル発売前後にレコーディングされたデモ曲や、セッション・レコーディング、未発表バージョンなどが盛り込まれ、CD7枚組のボックスセットとなっている。英国価格は120ポンド(1万6000円)。ちなみに日本版はCD6枚+DVD1枚で1万9500円。1968年のビートルズは混乱期にあったと思われがちだが、楽曲としては素晴らしいものが残っている。

オリジナルのLPを大切に聞いてきたファンにとっては、受け止められ方は様々だったはず。われわれはオリジナルの「ホワイトアルバム」が完璧だと信じて愛してきた。さらに手を加える必要はあったのだろうか。

似たような感想を、デイビッド・ブラウン・オートモーティブ(DBA)が作り出したBMCミニのリマスター版ともいえる、ミニ・リマスタードに対して当初は抱いてしまった。アレック・イシゴニスが生み出したシティカーは、確かに完璧と呼べるほどではなかったにしろ、間違いなく60年前にデビューしたときからスター級の輝きを持っていた。

独創的でありながら充分に練られた設計を持ち、明確な個性も備え、エンツォ・フェラーリも1台所有していたそうだ。ビートルズも持っていた。ロンドンの街に溢れ、ビートルズとは異なり1960年代の新た味も乗り越えて、その後40年以上に渡って生産が続けられた。そんなクルマだから、世界中にファンがいて、それぞれの想いも強い。

基本価格は9万ポンド(1224万円)から

以前わたしはミニ・リマスタードのプロトタイプを運転する機会があった。けれど、ミニ誕生60週年という記念すべき年にチェルシーで開催された、量産モデルのテストドライブを断る理由など、どこにもない。シンプルに、あくまでも我々が知っている、イシゴニスがデザインしたミニではある。しかし、細部に渡って手が加えられている。

リモート集中ドアロックやキーレススタート・ストップ、レトロなスミス風デザインが与えられたモダンな計器類。7インチのタッチモニターにはブルーツゥース・コネクトとアップル・カープレイ、アンドロイド・オートの機能まで備わっている。それらは上質で触り心地の良い素材で仕立てられたインテリアにレイアウトされている。レトロだがモダン。新鮮で素晴らしい。

「特に市場調査はしていません。わたしたちが正しいと思うことを、潜在的に市場があると考えて進めました」 と話すのは、デイビッド・ブラウン・オートモーティブでセールス&マーケティング・ディレクターを務めるミッシェル・ゲイ。彼女は2017年のプロトタイプ発表時の裏話もしてくれた。「わたしたちは異なる外観と質感をもたせた3台のプロトタイプを作りました。そしてその反響に圧倒されました。12時間のうちに2500件以上の販売に関する問い合わせがあったのです」

それほどの反響があったのなら、英国の伝説的なクルマに手を加える正当な理由にはなる。「想定していた数を遥かに超える台数を生産する必要がありました。発表から生産を始めるまでに、かなりの時間が空いた理由にもなります。1台目が工場のあるシルバーストーンを出発したのは昨年。初めに3台を製造しましたが、2019年内には50台をお客様に届ける予定です。2020年には100台の製造を目指しています」 と現状を説明するミッシェル。

思わず興味を持った読者もいるかもしれないが、魅力的なオプションリストでコンフィギュレーションを始める前に、基本価格が9万ポンド(1224万円)からとなっていることには気をつけた方が良い。今回の試乗車の場合、標準では備えている、ルーフラックや追加灯などアルプスをテーマにした装備が省かれていた。チェルシーで乗り回すには確かに必要ない装備だとは思うが、さらに他のオプションが加えられ、その価格は実に13万ポンド(1768万円)。購入するのは石油王クラスのひとなのだろうか。ミニ1台に13万ポンドだ。

ボディ構造まで徹底的に焼き直し

ただ、基本的にベースとなるクルマからミニ・リマスタードを生み出すには、1400時間ものレストアや改造の作業が費やされているということも、忘れないでおきたい。ベースとなるドナー車両は、1980年から1990年にかけてのミニの各エディション・グレードだが、すべての傷を治し、ボディの補強も施してある。また、耐腐食性を高めるために、ボディには電子防錆コーティングまでされている。

新しく生まれ変わったボディには、ブリティッシュ・モーター・ヘリテイジ社によって加飾がされ、細部まで丁寧に塗装され組み直される。ウイングミラーやフュエルフィラーキャップの仕上がりを見てほしい。ハロゲンも選べるが、今どきのLEDヘッドライトが顔を引き締め、リアバンパー下の中央2本出しのエグゾーストパイプが後ろ姿を彩る。エンジンは基本的にオリジナルだが、完全にリビルトされており、1330ccから84psを発生し、快音を鳴らす。

運転した感覚としては、新車のようなのだろうか。デイビッド・ブラウン・オートモーティブと、その創設者は、その辺りの意識はあまり持っていないようだ。オリジナルの良さが、どこまで変化しているのかを確かめるには、実際にドライブしてみるしかない。

ロンドンのテムズ川ほとりにある、バッターシー・パークから出発。チェルシー・ブリッジを渡ると、ラッシュアワー間際の交通の流れに合流した。堤防沿いを走り、ロッツ・ロードからオークションハウス前を通過して、キングス・ロードへと出る。有名な洋服店、ヴィヴィアン・ウエストウッド・ワールズエンドの前を通って、アルバート・ブリッジの渋滞に混ざる。特に有名人には会わなかった。

ロンドンを走り回ってわかったが、ありがたいことに、ミニ・リマスタードはしっかりとミニだった。クラッチは重く、ブレーキのタッチは柔らかく踏み込むと鳴く。ドライビング・ポジションはどこか居心地が悪く、ステアリングは小さなボディの割に重い。5速マニュアルのフィーリングも不鮮明だ。

交通渋滞に巻き込まれるのも楽しい。われわれの心象と変わらない小粋な雰囲気が、妙に落ち着かせる。最新のステレオユニットにはローリング・ストーンズやジミ・ヘンドリックス、ザ・フーなどの楽曲がダウンロードしてある。心地いい選曲だが、ビートルズは入っていないようだ。

オリジナルの押さえるべきポイントはそのまま

デイビッド・ブラウンと小さな工房の職人たちは、リマスタードを作るにあたり、しっかりと抑えるべきポイントは抑えていた。むしろ理想的にすら思えた。だが、価格は13万ポンド(1768万円)だ。華やかな仕立てを施されている。それでもミニと呼べるだろうか。試乗した後の答えは、YES。もし可能なら、われわれも欲しいと思うほどにミニだった。

例のリマスターされた「ホワイトアルバム」は、ビートルズのプロデューサーだったジョージ・マーティンの息子、ジャイルズ・マーティンがリミックスを手がけている。彼も大切なポイントを外すことはなかったのと一緒だ。

デイビッド・ブラウン・オートモーティブ・ミニ・リマスタードのスペック

■価格 9万ポンド(1224万円)~13万ポンド(1768万円)
■全長×全幅×全高 3055×1470×1330mm
■最高速度 144km/h
0-100km/h加速 11.7秒
■燃費 15.2km/ℓ
■CO2排出量 185g/km
■乾燥重量 740kg
■パワートレイン 直列4気筒1330cc
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 84ps/4600rpm
■最大トルク 12.1kg-m/3100rpm
■ギアボックス 5速マニュアル

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