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AUTOCARアワード2019 エディターズアワード アンディ・パーマー

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AUTOCARアワード2019 エディターズアワード アンディ・パーマー

もくじ

ー 知的チャレンジ 野心的な計画
ー 開発のサイクル 慢心は禁物
ー 思い切った決断 ヴァルキリーの持つ意味
ー 目標は1万5000台 さらなる成長へ
ー 番外編:アストン株式会社

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知的チャレンジ 野心的な計画

「106年もの間、誰もアストン マーティンを利益の出る会社にすることはできませんでした。そんなことは簡単だと考えるのは傲慢とも言えますが、自分の能力を発揮できる、素晴らしい知的チャレンジだと思ったのです」

23年間築き上げてきた日産でのキャリアを止め、アストン マーティンCEOへの就任を決めた2014年の決断は、必然のものだったとアンディ・パーマーは言う。

「2014年当時、アストンは非常な苦境にありましたが、一方で、ブランドという素晴らしい資産が残っていました」と彼は続ける。「だからこそ、わたしはアストンに移ることにしたのです」

確かに、偉大なブランドではあるが、偉大な企業ではなかった。だが、例え問題の解決が大変な仕事だとしても、パーマーには、その問題の本質が分かっていたのだ。「明らかだったのは、アストンらしさを創り出すリズムのようなものの欠如でした。ラインナップには、すでにデビューから12年から13年目を迎えたようなモデルすら存在していました」

だからこそ、パーマーは、その後の7年間で新たにブランドを代表する7つのモデルの登場を約束したのであり、さらには、アストンにとっては初となる、ミッドエンジンスーパーカーやEVを生み出し、新たな工場を建設するとともに、ハイパーカーやラゴンダ・ブランドの復活、株式上場まで打ち出したのだ。

こうしたことは、どんな自動車メーカーにとっても簡単ではなく、ましてや、アストン マーティンのように小規模で、長年苦境に喘いできた会社にとっては、ほとんどおとぎ話のようにすら思えた。

「非常に野心的な計画でした」とパーマーも認めている。「そう認めなければ、わたしは嘘をついていることになるでしょう。EVもSUVも、ミッドエンジンのモデルもありませんでしたから、ほとんどが初めてのことばかりでした。昼夜を問わず、数々の課題に取り組み、多くを学び、もちろん失敗もしています」

開発のサイクル 慢心は禁物

だが、この12カ月間で、セカンドセンチュリープランの第一部を成功裏に終えたからこそ、パーマーは2019年のAUTOCARエディターズアワードを受賞することとなったのだ。ついにアストンは前進を始め、これまでとは違ったやり方で、成長と拡大に向けた基盤を整えることに成功している。

2016年以降、DB11やヴァンテージ、DBSスーパーレッジェーラといったモデルが次々と登場しており、こうした矢継ぎ早のニューモデルの投入によって、アストンのエンジニアたちには息つく暇もなく、研究開発には多額のコストが費やされているが、その費用には、新車販売からもたらされた利益が使われている。

次はSUVのDBXであり、この新型SUVを生産するため、ウェールズのセント・アサンに新工場も建設されることになっている。

「DBXの次にはヴァンキッシュが控えており、さらにラゴンダへと続くことになるでしょう」とパーマーはマクラーレン720Sのライバルと目される、登場間近のミッドエンジンモデルと、EV専用のサブブランドから発売が予定されている過激なサルーンとSUVの名をあげる。「最終的には、フェラーリのようでありながらも、彼らとは違ったメーカーが誕生することになります」

フェラーリの名は、アストンが目指すべき成功例として、特に、新車販売と投資のサイクルに関して、これまで何度もパーマーが言及しているが、フェラーリが独自の道を行く一方で、パーマーはアストンが成長しても、その謙虚さと親しみやすは維持されなければならないと言う。

「いまは自信に満ち溢れていますが、わたしが来た当時、アストンは自信を失い欠けていました」と、パーマーは話している。「成功が自信をもたらすのです。この自信と謙虚さとを、いまアストンの精神にしようとしているところです」

「フェラーリも素晴らしいブランドですが、われわれが何を目指しているかはお分かりでしょう。フェラーリが成し遂げたことは素晴らしいものですが、経験から、偉大さは時に自己満足に繋がるものであり、失敗の最大の原因ともなり得るのです」

「それがフェラーリにも当てはまるというわけではありませんが、そんなことは決してアストンに起こってはなりません」

思い切った決断 ヴァルキリーの持つ意味

DBXはアストンのベストセラーになることが期待されており、アストンを安定から成長へと導く重要なモデルとなる。「2016年にセント・アサンへの工場建設を決めたことは、この年、過去最大の損失を計上したことを考えれば、思い切った決断でした」と、パーマーは語っている。

「将来を見据えた決断でした。フェラーリやランボルギーニ、ベントレーやアストンのようなブランドにとって、安定的なビジネスを行うために必要な生産台数は、1万2000台から1万5000台といったところですが、ゲイドンだけではそれだけの数を作り出すことが出来ないので、新たな工場が必要だったのです」

今年、DBXに加え、いまレッドブルと、レッドブルで技術責任者を務めるエイドリアン・ニューウェイと共に開発を進めているハイパーカーのヴァルキリーも登場する予定だ。

「われわれにとっては挑戦でもあります。スーパーカーでも、スポーツカーでも、ハイパーカーでも、お好きに呼んでいただいて構いませんが、ヴァルキリーはこれまで発売されたなかでも、もっとも重要なスポーツカーと言えます」と彼は言う。

「ヴァルキリーに匹敵するモデルはありません。このクルマの多くを、エイドリアンとともに開発しています。その結果、10年分もの経験を得るとともに、フェラーリに匹敵するモデルにすることが出来ました。ヴァルキリーにはそれだけの価値が備わっています」

ヴァルキリーは、マクラーレン720SやフェラーリF8トリビュートのライバルとして、今年のジュネーブでプレビューされたヴァンキッシュや、マクラーレンP1のライバルであり、ヴァンキッシュとヴァルキリーの間に位置することになるハイパーカーのAMR-003といった、ミッドエンジンスーパーカーを、アストンが通常モデルとしてラインアップするだけの能力があるということを示しているのだ。

目標は1万5000台 さらなる成長へ

2021年発売のヴァンキッシュに続き、アストンではラゴンダからふたつのニューモデルを、さらに、新たな主力車種として、第6と第7のモデルを登場させる予定だ。

「2021年までには、DBXの発売によって、販売台数1万台の壁を突破することになります。そうなると、もはや小規模メーカーではなく、特に米国ではCAF・・(Corporate Average Fuel Economy Standard:企業平均燃費)への対応を求められることになります。刺激的なV型エンジンの魅力を維持するには、オフセットの活用が必要となります。ハイブリッドでも不十分なため、EVといった、より多くのオフセットをもたらしてくれるモデルが必要なのです」

「EVは常に頭のなかにありました。そして、ロールス・ロイスやベントレーの市場への参入も計画の一部だったため、そのふたつを合わせて、ラゴンダ・エレクトリックを創り出すことにしたのです」

最終的な目標は、アストンの販売台数を昨年の6441台(2017年は5098台だった)から、1万5000台へと引き上げることであり、すべてのモデルが登場すれば、その生産はゲイドンとセント・アサンの新工場で折半されることになる。

「現在のモデルラインナップを変革する必要があります。主要なモデルは揃っていますが、空いたスペースを埋めるニューモデルが必要なのです」

「DBXがそうしたモデルの第一号であり、アストンはGTカーだけのブランドではないことを証明するものです。新型プラットフォームを使った新たなセグメントのモデルであり、大きな挑戦です。アストンという会社は大きく変わることが出来ましたが、DBXとヴァルキリーは、さらにこの勢いを加速するためのモデルであり、いまわれわれが成し遂げようとしていることを象徴する存在です」

番外編:アストン株式会社

昨年アストンが上場したことで、パーマーには、逐一株価で判断される企業業績に対して、その説明責任が求められることとなった。上場来低迷する株価に対して、パーマーはその理由を次のように語っている。

「投資家の皆様には長期的な視野で株式を取得頂いています」とパーマーは言う。「その多くが、われわれの成長戦略を信じて下さった方々ですので、株が売られると、より不安定になったように見えるかも知れません。上場したのはわずか20万株であり、その99%が上場初日に購入され、そのまま保有されています」

「投資家やアナリストの方々はわれわれの計画にどのような見解をお持ちかは分かりません。これまで経験したことがないような状況です。あなたを知らないひとびとが、あなたの子供について、いろいろと言うのですから、決して楽なものではありません」

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