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ニューモデル 2019.6.1

AUTOCARアワード2019 イシゴニス賞 ディーター・ツェッチェ

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もくじ

ー 大きな功績 見事な退任
ー 答えは必ず見つかる EQCの持つ意味
ー 変わらぬ刺激 注意が必要
ー お気に入りの1台 スタイリングの重要性
ー 番外編1:Dr. Zに訊く電動化の未来
ー 番外編2:過去のイシゴニス賞受賞者たち

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大きな功績 見事な退任

ダイムラーのような会社のトップが、さほど重要でない会議の場でネクタイを着用することはもうないかも知れない。ダイムラーCEOとして、長きにわたり数々の功績を打ち建て、今年、英国版Autocar最高の賞であるイシゴニス賞を受賞した、ディーター・ツェッチェ博士が、会議の場でネクタイをしなくなったのは2015年ことであり、彼の信奉者たちも、それに倣うことにしたのだ。

メルセデスブランドのCEOとして、失敗に終わったクライスラーとのアライアンスに終止符を打ち、ダイムラーの企業文化に変革をもたらし、メルセデス製モデルの多くもリコール対象となったにもかかわらず、ディーゼルゲートの最悪期を乗り越え、2016年にはBMWを逆転し、積極的に新たな電動化の時代への対応を推し進め、財務内容を安定させて収益体制を強化するとともに、将来へ向けてのビジョンを残したまま退任するという、ツェッチェの数々の功績と同じくらい、このネクタイの着用停止は、4年後のいまもひとびとの記憶に残っている。

ツェッチェは、さまざまな出来事に彩られた13年を過ごし、今月グループCEOを退任している。ネクタイをしなくなった理由について、彼が公式コメントを発表したことはないが、明らかに、これは新たな自動車ビジネスの始まりと、企業文化の変革に向けたメッセージだった。


有給休暇を使い切ったあと、数年内には監査役会会長へ就任することになる彼から、ダイムラーという象牙の塔に、その形式にとらわれないやり方を持ち込むことができるのかどうか、是非聞いてみたいと思っていた。

一方で、彼が後任に指名したのは、オラ・ケレニウスであり、彼も外国籍として、50歳にも満たずにCEOに選ばれたという、ダイムラーの歴史を覆す存在であり(彼の国籍はスウェーデンであり、来月50歳の誕生日を迎える)、どんな場所でもつねにネクタイは着用していない。

ツェッチェのアイデアも反映されたメルセデス新時代が始まったこのタイミングでの退任は、奇妙にも思えるが、欧州のビジネス評論家たちは、この時期での退任は綿密に計画されたものだと見ており、昨年のフォルクスワーゲングループCEO、マティアス・ミュラーのケースなどと比べれば、はるかに見事なものだと評価している。

いずれにせよ、2021年には監査役会会長に就任することで、ツェッチェの影響力は温存されるのであり、あるドイツ人は、彼のCEO退任に伴い、ダイムラーは「かつてないほど、女性や外国人、若い世代が活躍する会社」になると言う。

答えは必ず見つかる EQCの持つ意味

欧州最後の業務として、ツェッチェは英国ミルトンキーンズにあるダイムラーの拠点へと出張し、ディーラー関係者との面会や、スタッフとの質疑応答、さらには将来に関する広範なスピーチを行っているが、空港へと戻る1時間をわれわれのために確保してくれていた。

ツェッチェはいつもどおりのリラックスした様子で、カメラマンが撮影準備を進めているあいだ、1990年代に米国のモーターショーで、カウボーイハットを被って彼が演じた「Dr. Z」というユニークなキャラクターについての雑談をしていたのだが、これは、疑い深い米国の記者たちに、ビッグスリーの一角とダイムラーとの繋がりを売り込むために、考え出されたものだったという。

確かに、その狙いは成功したようだ。当時を思い出しながらツェッチェはニヤリとしている。「楽しかった」と彼は言う。「ですが、アライアンスの将来が分かっていれば、あれほど一生懸命に取り組むことはなかったでしょう・・・」

現在の課題について話を聞くべく腰を落ち着けると、ツェッチェは途端に「楽天家」の顔を見せ、それを証明するように将来への希望を語っている。「いま直面している大きな課題というものは、一方で最大のチャンスでもあり、移動のあり方を変え、新たな夢を創り出すとともに、ダイムラーが、次世代の顧客や従業員、シェアホルダーといったひとびとからの要求に応えられる企業となるよう、変革を促すものです」と彼は言う。


楽観的でありつつも、常にワードワークが求められていると彼は言う。「偉大なチームと、偉大なパートナーシップ、そして優れたイノベーションが、素晴らしいアイデアをもたらすのであり、そうしたアイデアさえあれば、ほとんど不可能などありません」と彼は話す。「まだ、解決方法が見つかっていない数多くの大きな問題がありますが、答えを見つけ出すことはできると信じています」

販売戦略として、メルセデス・ベンツが真剣に真の電動化に向けた取り組みをスタートさせたのは、ツェッチェと彼のチームがおよそ2年にわたって開発を進めてきた、EQCのプロダクションモデルが公開された昨年9月のことであり、計画では、ツェッチェCEO退任の1カ月後となる、今年中頃には公道デビューが予定されている。

EQCは、急速にラインナップを広げつつあるメルセデスEQシリーズの第一弾であり、この新型モデルの重要性について、ツェッチェは特に力を込めて語っている。「キャリアのなかでいくつかの忘れられない瞬間というものがありますが、ゲームチェンジャーと呼べるほどの存在は稀であり、このクルマがまさにそんな1台なのです」

変わらぬ刺激 注意が必要

ツェッチェは、フランクフルトで電気工学の学位を取得すると、すぐにメルセデス・ベンツのR&D部門で働き始めており、現在の自動車業界も、彼がキャリアを積み始めた43年前と変わらず、刺激的なものだと言う。

「もちろん、状況は大きく異なります」と彼は言う。「当時、自動車には多くの課題が突き付けられており、なかでもガソリン価格は大きな問題でした。いまの自動車業界は、当時よりも外部の規制を受けるようになっており、注意深く対処しなければ、起業家精神を維持することなど不可能です。つねに用心深く行動する必要があるということです」


そして、「かつてはSFのようなものだと考えられていた技術が、いまでは当たり前に目にするようになっています」と彼は続ける。「対象とする領域が広がるとともに、ときに不確実性も増しているように感じます。ですが、良い面も増えています。もちろん、上手く対応できなければ、リスクもありますが、少なくとも、エンジニアに課された使命は、40年前と同じように刺激的なものです」

自動車メーカーにとっては、大きな障害となり得る、潜在的リスクを伴う現在の規制環境について話しが及んだ時には、ツェッチェも他の自動車メーカートップと同じように、痛烈な批判を浴びせるかと思いきや、彼はむしろ慎重な言い回しで、「こうしたひとびとも、さまざまなレベルで自動車業界に貢献しています」と話す。

「多くが事態を理解していますが、なかには、真の問題に関する、わずかばかりのヒントすら与えられていない場合もあるのです。政治家であれば、重要なゴールを設定するだけで、技術的な問題を理解する必要などないかも知れませんが、それも程度問題です。ときに、規制のシステムにはバランスが欠けていることがあります」

お気に入りの1台 スタイリングの重要性

お決まりの質問をせずに、今回のインタビューを終えるわけにはいかない。長年にわたるエンスージァストとして、ディーター・ツェッチェはお気に入りの1台を応えてくれるだろうか?

多くが質問することであり、答えるのは簡単だとツェッチェは言う。彼のお気に入りはガルウイングドアを持つ、メルセデス・ベンツ300SLであり、ミッレミリアでの数回以外にも、数々の場面で運転したことがあると言って、それを証明するかのように、写真撮影では、楽々とキャビンへと乗り降りする姿を見せてくれた。

ではライバルはいるのだろうか? 彼は(慎重に愛ではないとしつつ)「感情を揺さぶる」クルマだとして、アストン マーティンの名をあげているが、このゲイドンを拠点とする自動車メーカーの株式を、ダイムラーが5%保有していることを覚えていらっしゃるだろうか?

さらに、「レンジローバーのなかにも、何台か素晴らしいモデルがあります」と明言している。だが、ツェッチェがCEOを退任したからといって、彼のなかに流れるメルセデスの血が失われることはなさそうだ。


最後に、自動車好きの未来について話しをしたが、ツェッチェは躊躇することなく、電動化や自動運転、CO2オフセット、さらにはコネクティビティーといったものは、オールドスタイルのクルマ好きにとっては、決してプラスにはならないだろうと言う。

それでも、彼の見解はハッキリとしたものだ。では、クルマ好きはこの状況にどう対応したらいいのだろう?

「もちろん、電気モーターのサウンドに興奮などできないかも知れません。それでも、Aクラスが良い例ですが、最新モデルの騒音や振動の少なさや、乗り心地の良さを多くのひとびとが称賛しています。そして、2.3GものコーナリングGなどよりも、洗練性を高めるほうがはるかに容易なのです」

「クルマの評価とは、依然として技術とはほとんど無関係なスタイリングから始まるものだと考えています。つまり、偉大なモデルと、つまらないモデルを分かつものは、何も変わっていないのです。さらに、インテリアデザインは、非常にエモーショナルなものです。将来にも、新たな創造性やワクワク感を創り出すべき領域は数多く残されており、それはこれからも変わることはありません」

番外編1:Dr. Zに訊く電動化の未来

わずか10年のうちに、欧州で販売されるEVの割合は、30%を越え、新車市場で重要な地位を占めるようにならなければならないと、ディーター・ツェッチェは話す。さらに、この数値は、単なる目標でもなければ、オプションのシナリオでもないと言う。

「この数値を実現させることがわれわれの使命です」と彼は言う。「2050年までに、すべての車両の入れ替えが起こるだろうと考えており、2040年までに販売される車両のほぼすべてがEVになります。2030年はその中間にあたりますが、いまのところ、電動モデルを求める顧客の割合が30%に達していないことを考えれば、決して簡単な任務ではなく、市場に任せていては達成不可能かも知れません」

どうやったらこの目標を達成することができるのだろう? ツェッチェにとって、その答えは非常にシンプルなものだ。「われわれの任務は、ひとびとが新型モデルに期待するようなワクワク感を備えた、魅力溢れるEVを創り出すことです」

「コストを引き下げることができれば、より手ごろな価格のモデルを創り出すことが可能になります。対応は進んでいますが、やるべきことはまだ数多く残されています」

番外編2:過去のイシゴニス賞受賞者たち

2014年:ロン・デニス

2015年:ウォルフガング・ハッツ

2016年:カルロス・タバレス

2017年:ラルフ・スピース

2018年:豊田章男

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(AUTOCAR JAPAN 編集部)

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