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助手席試乗 ベントレー次期型フライングスパー 寒冷地で最終仕上げ中

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助手席試乗 ベントレー次期型フライングスパー 寒冷地で最終仕上げ中

もくじ

ー ウインターテストに同行
ー 寒冷地ならではの注意点
ー 価格帯を引き上げへ
ー ポルシェ製プラットフォームの恩恵
ー 公道試乗が楽しみ

『ベントレー・コンチネンタル・フライングスパー』すべての画像をみる

ウインターテストに同行

暖かいホテルの中で行われたブリーフィングは簡単なものだった。新雪によりまずまずのトラクションが確保され、陸上および凍結した湖上で行われるテストにうってつけの天気だ。スパイフォトの流出を防ぐためインテリアのファブリック製カバーをはずさないこと、そしてボンネットやドアを開けないことが定められている。

われわれを先導するベンテイガ・スピードが巻き上げる雪煙に対応するため、ライトは常にオンだ。そして黒いゴミ袋に注意するよう指示された。何だそれはと疑問に思ったが、われわれは単にテストに同乗する側であり、質問はしなかった。

ベントレーの車両開発を統括するナイジェル・テューが後に説明してくれた。トナカイがしばしば道を横断する地点では道路脇のポールに黒い袋が巻かれているのだという。動物の重心は車両のウインドスクリーンの高さにあることから、衝突すれば乗員にも被害が及ぶことになるのだ。

そしてこのクルマ自体も大切だ。今日試乗するのはベントレー・コンチネンタルの4ドア版、すなわちフライングスパーの後継車である。現在12台のプロトタイプが製作され、今年中の発表を控えた最終調整に入っているところだ。

寒冷地ならではの注意点

3週間前には南アフリカで高温テストが行われ、クルーに戻ってからソフトウェアのアップデートとスウェーデン行きの準備が行われていた。トラクションコントロールのチューニングを始めとして、-30℃での油脂類の硬化にも対応しなければならない。欧州以外での寒冷地テストが必要となればニュージランドでも実施可能だが、地球の反対側まで車両を空輸するコストは大変だ。

ベントレーの開発チームは、シャシー、エレクトロニクス、パワートレインなど各分野に分けられている。オペルが1967年にテストを初めて以来メルセデスやボッシュも利用するアルビッツヤウルで1週間程度のテストを行っている。

「シャシーについていえば、われわれはホイールハウス内の雪の付着状況や低温時のステアリングやダンパーの動きを確認しています」と語るのはポルシェ出身でベントレーのシャシー開発を統括するフロリアン・シュプレンジャーだ。

グローバルモデルとしてロシアなどでも販売する以上、寒冷地テストは重要だ。パーキングブレーキが凍結しないか、タッチスクリーンは正常に動作するか、ウォッシャー液が凍結しないかなども確認する必要がある。それだけでなく、グリルに雪が詰まればセンサーに異常をきたし、オーバーヒートを招く可能性すらある。世界屈指の超高級車にあってはならないことだろう。

価格帯を引き上げへ

シュプレンジャーは「機能面で言えば、スタビリティコントロールやトラクション・マネージメントにも注意を払っています」と同じく偽装を施したBMWの集団を対向車線に見ながら話した。当たり前のようではあるが、これが難しいのだ。

4WDでウィンタータイヤを履き、コンチネンタルGTよりさらに30cmほど長いホイールベースを持つフライングスパーは非常に高いスタビリティを持つ。しかし、これほど大きく重いクルマが万が一バランスを崩せばすぐさま雪の壁に突撃だろう。想像つかないかもしれないが、実際に起きるのである。ベンテイガに牽引ロープが積んであることがそれを示している。

エンジニアが考えなければならないことは他にもある。このクルマはメルセデス-マイバッハS600やロールス・ロイス・ゴーストなどと戦うことになるのだ。ベントレーとしては、この両車よりもドライバーズカーらしくなければならないだろう。そしてエイドリアン・ホールマークCEOによれば、このモデルの価格帯は20万ポンド(2800万円)級へと引き上げられるという。

この値上げを正当化するためには、インテリアの質感や全体の洗練度をさらに向上させる必要がある。偽装が施された姿を見ても、今までよりもシャープかつ引き締まったボディが確認できる。迫力あるフロントマスクと低められたルーフラインが特徴だ。車内のディスプレイに映し出された3D画像からは、より寝かされたリアウインドウとトランクが確認でき、2008年のブルックランズ・クーペを思い起こさせる。

ポルシェ製プラットフォームの恩恵

パフォーマンスはどうかって? ご存知の通りだ。新型には今まで通りツインターボの6.0ℓW12や4.0ℓV8に加え、中国市場向けに2.9ℓのV6PHEVもラインナップされる。W12はコンチネンタルGTと全く同一で、635psの最高出力とわずか1300rpmから湧き上がる91.8kg-mのトルクを持つ。公称の最高速度は320km/h程度だが、プロトタイプはナルドサーキットで360km/h以上を記録しているとのことだ。

コンチネンタルGTの遅れはフライングスパーにも影響を及ぼすだろう。そしてポルシェゆずりのDCTをベントレー用にチューニングしなおす作業に予想以上の時間を要したようだが、今回のウインターテストを見る限りではそれもほぼ完了したと見て良いだろう。そこかしこにMSBシャシーの「プラットフォーム・オーナー」たるポルシェの影響を感じられる。

いずれにしても、ポルシェ製プラットフォームを使うことの恩恵を大いに感じることができた。この雪に覆われた大地では簡単にドリフト状態に持ち込むことができる。しかし、ステアリングをスリップアングルに合わせて操作しパワーを与えてやれば、自然と姿勢が回復するのだ。これはシャシーの特性がいかにニュートラルかを示している。

シュプレンジャーは度々クルマを横に向けてはステアリングから手を話、クルマが勝手に姿勢を立て直す様を見せてくれた。彼は特定のライバルを指し示すことはしなかったが、姿勢の乱れがますます増幅してしまうようなクルマが多いのも事実だ。

公道試乗が楽しみ

テストトラックからアルビッツヤウルへの帰路はさらに感心することの連続であった。薄暮の中、われわれの乗るプロトタイプは凍結路をハイペースで走行した。タイヤ内のフォームがロードノイズを5デシベル程度も減らしてくれる。

ベルトラインが高くなった一方でルーフが低くなり、包まれ感は大きいが、圧迫感はない。ベントレーはシートの設計にも長けており、ここに座ったわたしの心拍数が低下するのがわかるほどだ。

もちろん、このような環境でしかも助手席試乗ではこのクルマの本性を知ることはできていない。次期型フライングスパーの正式発表を待つことになるだろう。スタビリティ、快適性、ボディコントロール、そして複雑な地形でのロールの洗練性などは非常に高い次元でまとめられているようだ。

ドライバーズカーらしさを重視するベントレーとはいえ、たしかにラグジュアリーなリムジンらしいハンドリングを持っているような印象を受けた。しかし、完成後の車両を適切な道路で試して見るまでは、正式な評価はお預けとしておこう。

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