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ニューモデル 2019.5.16

フェラーリ・モンディアル 2+2にV8エンジン 現代にはない上品さ

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もくじ

ー 実は6000台以上売れた人気モデル
ー 北米を意識したV8エンジン
ー フェラーリ濃度は充分に濃い
ー 徐々に進化し最終型では304psを獲得
ー 実用性にも優れたモンディアル
ー オープンゲートのMTを操る喜び
ー 攻撃的なモダン・フェラーリにはない上品さ
番外編:モンディアルのある暮らし
ー 最も過小評価されてきた跳ね馬
ー 理解不足でのメンテナンスには警戒を

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実は6000台以上売れた人気モデル

フェラーリ・モンディアルは、新車当時あらゆる面でエンスージャストのお眼鏡にかなうことはなかった。際立ったスピードも持たず、珍しいともいえず、充分に美しいともいえなかった。しかも座席数は多いのに、エンジンのシリンダー数は少ない。フェラーリのヒエラルキーでいえば一番下に属する、お手頃なモデルではあったが、当時は自分の愛車として欲しいとは思えないクルマだった。

裕福な大人たちは黄色い跳ね馬のエンブレムに引き寄せられる現在でも、モンディアルの中古車は依然として安いまま。最終モデルのモンディアルTなら6万ポンド(828万円)を超えるものもあるが、標準グレードのモンディアル8なら、2万ポンド(276万円)中盤から購入できる。遊び心を備えた4シーターのミドシップなら、かなり低価格でフェラーリのオーナーになることができるのだ。どうしてもフェラーリに拘るのならば。

しかし良く観察すれば、しっかり熟考されたフェラーリ製のグランドツアラーだということがわかる。パッケージングは巧みで、外から眺めている限り、小柄でエキゾチックなデザインを持つミドシップのクーペボディに、2+2のシートレイアウトが自然に収まっている。

12年間のモデルライフの間で製造されたのは6000台以上で、少数生産が当然だったイタリアのスーパーカーとしては、販売面では成功したモデルだったともいえる。恐らくマラネッロとしては初めて、ユーザーの期待にこたえられる製造品質を実現し、信頼性と実用性を高めたクルマだった。急激に品質や信頼性が高まっていたドイツ勢と、向き合う必要があったのだ。

北米を意識したV8エンジン

1980年に登場したモンディアル8は、ボディの防錆処理もしっかり施され、フュエル・インジェクションとコンピュータ診断を行うダイアグノーシスを備えており、まさに新時代を迎えたフェラーリによる新モデルだった。またこのモンディアルは、V8エンジンを搭載したクルマとして、328など数字ではない、単語の名前が付けられた初めてのモデルでもあった。

モンディアルとは、1950年台初めに存在した4気筒エンジンを搭載したスポーツカー、フェラーリ500に付けられていた名称で、イタリア語では「世界」や「国際的」といった意味を持っている。恐らく、北米を中心に、世界中の市場を視野に入れたフェラーリだということを、表現したかったのだろう。

12気筒のモデルは燃費が悪く環境負荷も高く、特に米国では8気筒モデルの重要性が増していた時代。フェラーリの総生産の35%が米国へと輸出する中で、その内の75%がV8エンジンモデルを占めていた。現実社会ではフェラーリであってもライバルとのシェア争いに迫られるということを、308GT4の人気からフィアットの関係者は実感することになったのだ。

1969年にフェラーリはフィアットの傘下に入るが、実際マラネッロの経営に深く関わるようになるまで10年ほど要しており、モンディアルはフィアットの強い影響を受けた初めてのモデルだと考えてもいいだろう。その結果、市場主義的な要素が強く求められ、レーシングカー・デザイナーにとっては欲求不満の溜まるクルマだったかもしれないが、ユーザーにとっては望ましい傾向だったといえる。

フェラーリ濃度は充分に濃い

そんなモンディアルだが、比較的燃費の良いローカロリー・フェラーリでありながら、跳ね馬のエッセンスは充分に濃い。チューブラー・シャシーにオープンゲートで切られた5速マニュアル。ツインカムの3ℓ V8エンジンをミドに縦置きし、電子制御されるインジェクションと点火システムを備えていた。

半面、最高出力は217psしかなく、108kgも軽量なうえにウェーバーキャブで武装された先代の308GT4より、36psもパワーダウンしていた。0-96km/h加速は、活発とはいいにくい8.5秒で、最高速度は233km/hだった。しかも燃料の都合で米国での最高出力はさらに低く、わずか207psとされていた。

だが忘れてはいけないことは、初期型でも200km/hの巡航走行が可能で、4人が乗車でき、インテリアの質も当時のフェラーリとしては最も優れていたということ。車内は明るく、風合いのよいコノリーレザーで覆われ、フェラーリとしては初めて、スパナを使わずステアリングの角度も調整が可能だった。集中ドアロックに充分機能するエアコンも装備され、BMWのオーナーでも違和感を感じない、デジタルシステムにメンテナンスの警告灯を備えていた。

製造はイタリアのカロッツェリア、スカリエッティ社で、デザインを手がけたのはピニンファリーナ社のデザイナー、レオナルド・フィオラヴァンティ。フェラーリ・デイトナもデザインした彼だが、1980年当時の年齢は42歳ながら、モンディアルは既に彼が手がけた8台目のフェラーリとなっていた。

手始めにフィオラヴァンティは、ベルトーネ社がデザインした1970年代のフェラーリ308GT4を分析し、例え+2のリアシートとはいえ、充分な空間確保にはホイールベースを最低でも4インチ(101mm)伸ばす必要があると結論付ける。その結果、モンディアルの全長は308GTBと比較して、13インチ(330mm)長く、全幅は3インチ(76mm)広く、全高は(127mm)高くなった。ボディは主にスチール製ながら、フロントノーズやエンジンカバー、ドアなどはアルミニウムが用いられた。

ボディの内側には、補強リブが入りボックス状に組まれたスチール構造により、剛性はGT4よりも向上。さらにボルト数本を外すことで、エンジンとギアボックスを車体から下ろすことが可能で、整備性も大きく改善していた。

徐々に進化し最終型では304psを獲得

いま見るとプロポーションは美しく、全長の割に幅の広いボディを持ち、それなりの大きさのリアシートにラゲッジスペースをミドシップで叶えるという、頭が痛くなりそうなパッケージングを軽妙なデザインでまとめている。高い車高とキャビンフォワードなドライビングポジションは、従来のフェラーリのイメージとは一線を画しており、どのような市場評価を得られるか、掴めない部分はあっただろう。

モンディアル8の販売は当初好調ではなかったようだが、オーナーは実際乗ってみると気に入る傾向は高かったと、当時マラネッロの販売代理をしていたトニー・ウィリスは話している。「わたしはモンディアルが好きですが、後期モデルの方がずっと良いと思います。初代の「8」は電気系統が弱く、ダッシュボードの維持も難しいのです」 彼は現在、英国のフェラーリ専門サイトの管理人を勤めている。

発表から12年間を掛けて、フェラーリはモンディアルのパワーを増強し、性能を高めていった。1982年には気筒あたり4バルブを採用したエンジンを搭載した、モンディアルQVを発表し、パフォーマンス不足を改善する。排気干渉が起きないシングルプレーンクランクを採用し、32バルブとなったV8エンジンは243psとなり、当時の量産自然吸気エンジンとしては最も高い出力を誇った。その後1985年には、ボアとストロークを大きくし、3185ccまでスープアップ。最高出力を273psまで高められたモンディアル3.2が登場する。当時はクワトロバルボーレと呼ばれていた。

その前年の1984年には、フェラーリ308や328GTSの好調な販売に押され、モンディアル・カブリオレも発表された。これはデイトナスパイダー以来のオープンモデルで、モンディアルの各グレードの中でも一番の成功を納めることになる。発表直後から好調で、クーペボディの販売台数を追い越すことになった。

最終モデルはモンディアルtと呼ばれ、3.4ℓのエンジンから304psを発生した。エンジンの搭載位置は5インチ(127mm)下げられ、向きも90度回転され縦置きに搭載。ギアボックスは横置きのままとされ、「t」の頭文字はこの「transversale:横置き」から来ている。このレイアウトは当時で20年近く前のF-1マシンから発想を得たもので、重心高を下げると同時に、クラッチの整備性を高める役目も果たしている。

実用性にも優れたモンディアル

今回登場いただいたのは、マーティン・ターシルが所有するモンディアルt。英国のフェラーリ・ディーラーから2017年の5月に購入したクルマで、1990年からの整備簿がきれいに揃っている。「わたしは昔からフェラーリに憧れていました。308GT4sと初期のモンディアルを探していたのですが、より技術的に進んだ後期モデルを購入しました」

興味深いのは、別の愛車であるポルシェ911タルガよりも利便性が高いと彼は感じていて、購入後のトラブルは、エアコンの温度調整スイッチの不具合程度だということ。だが、サンルーフを開ける勇気はないという。「サンルーフは付いているのですが、正しく組み付けられていないと、ボディの塗装を傷つける恐れがあるんです」

タイヤはピレリのP6000が装着され、5本のラグボルトで固定される5スポーク・ホイールのリム部分にはフェラーリの刻印が入り、ガラスには小さなフェラーリのロゴマークが記されている。長いドアを大きく開き、ドライビングポジションを取ると、頭上には背の高い帽子が被れそうな空間が残る。身長のある大人でも、ショートノーズで背の高いクルマに収まると、外から見ると少し小柄に見えるほど。ガラス面積が大きいキャビンは、英国であってもエアコンが必要となる。

ダッシュボードの眺めは、かつての英国車ローバー 2000(SD1)に見られるモジュラーデザインが採用されているが、こちらのほうが遥かにスタイリッシュ。フロントタイヤのホイールハウスがあるおかげで、右ハンドル車の場合は前方左斜めに足を伸ばす形となる一方で、ステアリングコラムは若干右にオフセットしている。

できの良いシートと腕周りに余裕のある空間、広いグラスエリアで得られる明るく開放的な雰囲気が、ドライビグポジションのねじれも許せてしまう。加えて、充分な深さのラゲッジルームに、12歳位までの子供か、小柄な大人なら普通に座ることができるリアシートも備えているのだ。

オープンゲートのMTを操る喜び

エンジンのスタートに特別な儀式は必要ない。燃料ポンプの動く音を聞きながら、キーをONにするだけ。クラッチは現在の感覚からすると重たい部類だが、当時のフェラーリと比較すれば、油圧式だけあって軽く、滑らかにつながる点も嬉しい。走り始めてすぐ、モンディアルtが備える特徴的なパワーステアリングの操作感に気付く。最小回転直径はかなり大きいが、気に留めない方が良いだろう。

低速トルクは太いとはいえないながら、パワーデリバリーはスムーズで、市街地の交通量でも普通に走れる。ターシルは調整式のダンパーを「コンフォート」から変えなかったが、乗り心地も民主的なもの。風を感じながらスピードに乗っていくさなか、背後のエンジンルームから響いてくるノイズは特別な体験だ。

クラシカルなオープンゲートから伸びるシフトレバーをローに入れるのは、油温が低いと難しいようだが、温まってしまえばモンディアルのドライブに難しいところはない。充分速いものの獰猛な加速はせず、甘美なスロットルレスポンスを味わうための、懐の深いクルマだと思う。

スムーズで踏みごたえのあるアクセルペダルのフィーリングに合わせるように、ブレーキペダルはソリッドで漸進的。ヒール・トゥを行うのにもしっかりとした足の支点となるだろう。ドライバーの闘争心が高まり、クルマのスピードも早くなるにつれ、カチリカチリとシフトレバーがゲートを忙しく動く。

5速MTは程よくクロースレシオで、3500rpmから輝きを増していくエンジンの興奮を味わうにはピッタリの設定だ。7000rpmめがけて4本のカムシャフトが回転し、バルブが開閉していくメカニカルノイズもスリリングで、何度聞いても飽きない。

モンディアルのシャシー性能の高みを試すかのように、愛車を確かめるドライバーは満面の笑みだが、さすがに年代物のフェラーリだけに、助手席のわたしは少しの不安も感じてしまった。限界付近の穏やかな挙動を確かめてくれる必要はないのだけれど。

攻撃的なモダン・フェラーリにはない上品さ

ひとつ明らかなことは、わたしのドライビング技術よりも、モンディアルの方が一枚上手だということ。恐らく多くの読者の想像以上だと思う。コーナリングの姿勢はほぼフラットで、僅かなボディーロールとともにタイトにコーナリングしていく。

前後タイヤのグリップも不足ない。安定していて落ち着きがあり、どこか曖昧な操縦感覚もないわけではないが、スムーズでコミュニケーションも豊か。普通に運転していれば特に何も起きないものの、積極的にドライビングを楽しもうとすれば、しっかり応えてくれる。

フェラーリの世界は普通のクルマとは異なり、ステータスと希少性に重きが置かれ、自分のフェラーリが一番、という自己顕示欲を満たせるモデルが高い評価を得る傾向にある。その中で、実用性が高いモンディアルは、やや冷ややかな扱いを受ける傾向がある。しかしわたしの意見では、赤色以外なら特に、状態が良ければ素晴らしいクルマだと実感した。

近年のフェラーリのスタイリングはどんどん攻撃的になり、日常的な利用の面でも少し躊躇するような存在だが、わたしの目にはそんなフェラーリより、モンディアルの方が良く映っている。注意深くクルマを選んで、品よく運転するのが良い。選んだ理由は、安いフェラーリだったからではなく、モンディアルが好きだから、がカッコいい。今の値段に惹かれてモンディアルを買った、なんて理由は、何とも悲しいじゃないか。

もっとも、価格はこれから徐々に上昇していくだろう。

番外編:モンディアルのある暮らし

最も過小評価されてきた跳ね馬

自動車エンジニアのジョン・ポグソンは、1975年からフェラーリで働いており、マラネッロの工場で訓練を受けた経験がある。その後、1991年に英国のピークディストリクト国立公園からほど近い街にフェラーリのスペシャルショップ、イタリア・オートスポーツを設立した。V8エンジンを積んたフェラーリ・チャレンジ・シリーズ・レースでの優勝経験もあり、フェラーリF40をドライブして、記録破りの勝利を上げたこともある。そんな彼が、20年以上も前のシルバーのモンディアルQVを愛車としている理由とは。

「このモンディアルは、これまでのフェラーリの中でも最も過小評価されてきたモデルだと思います」 とポグソンは話す。ちなみに彼はディノ308GT4と初期型の456GTも所有している。彼がモンディアルを初めて目にしたのは1980年代初め、マラネッロでトレーニングを受けていた頃だ。後に、モンディアルQVで南仏から英国のヨークシャーへ1日でドライブする機会もあったらしい。出発したのは正午だったそうだ。

「長距離ドライブはこのクルマの得意とするところ。普通のクルマと同じように縦列駐車もできますし、買い物にも使えます。この一風変わった2+2のモンディアルと、他のフェラーリとでは、周囲のひとの反応がまるで違います。例えば、このクルマでガソリンスタンドへ行くと普通に対応してもらえますが、最新のフェラーリで行くとそうはいきません。時には『わたしと同じで、クルマが好きなんですね』というような話題なります。そして、カッコ良いクルマに乗っている、いい人になれるんです」

少し前なら、モンディアルは見向きもされなかったモデルだったこともあり、1万ポンド(138万円)以下で購入することもできた。「つまり、メンテナンスや補修に多くのお金を掛けてもらえなかった、ということでもあります。モンディアルの場合、正しい知識を持たないひとが長年に渡って独自にメンテナンスをしてきた、ということが最大の不具合だといえます。今もその傾向は変わっていません」

番外編:モンディアルのある暮らし

理解不足でのメンテナンスには警戒を

「モンディアルを買う場合、しっかりしたスペシャルショップで整備を受けてきたかどうか、注意をするべきでしょう。ディーラーでの整備やガレージでの整備のクルマは、警戒した方がいいと思います。特に古いフェラーリに対する知識不足で整備されると、致命的な不具合を招くことがあります。なんとかうまく生き抜いてきたモンディアルを見つけたら、しっかりお金をかけて維持してあげてほしいです」

「完全にクルマを修復できる準備ができていないなら、中途半端なクルマに手を出すべきではないでしょう。モンディアルは実際に乗りながら、少しずつ直していく、という所有の仕方ができないクルマなんです。次々と手を施すところが出てくるはずです。もっとも、サビや電気系統の不具合は避けられませんが、1970年代のクルマと比べれば、QVの頃の製造品質は飛躍的に向上してはいます。モンディアルには防錆処理が施されてはいますが、充分ではありませんでした。それでも以前のクルマよりは良かったんです。1980年代のプリント基板は例によって駄目になりますが、後期型のモンディアル3.2やtなら、ずっと良くなっています」

ドライブトレインに関しては、明確な弱点はないとするポグソン。「トランスミッション・フルードが充分に温まらない段階で、無理に2速に入れてしまうと、シンクロ機構にダメージを与える可能性があります。また、ニッケルシリコン合金を用いたシリンダーライニングや、ディファレンシャルギアからの異音にも気にかけておきたいところ。オーナーズ・ハンドブックやオリジナルの整備簿は重要なアイテムですし、標準のツールキットは購入すると高くつきます」

「キーはオリジナルのままがいいですが、イモビライザーが付いている場合は、1980年代のものなので信頼性は低いでしょう。ボディーカラーも重要です。このクルマのスタイリングは、日光の当たり方でボリュームが強調されるのです」 と話すポグソンは、日常的にモンディアルQVに乗っている。「週末にイングランド南西端のコーンウォールまで良くドライブにいきます。古いクルマでの長距離ドライブなので周囲の反応は様々ですが、わたしは全然気にしません」

少しハズしたフェラーリを日常的に利用しつつ、メンテナンス費用も惜しまない。車両価格が手頃だったとしても、むしろ贅沢な楽しみ方といえるだろう。

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(AUTOCAR JAPAN 編集部)

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