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文武両道のスペシャリティクーペ、BMW M850i xドライブ クーペ

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文武両道のスペシャリティクーペ、BMW M850i xドライブ クーペ

およそ10年の歳月を経て、8シリーズが帰ってきた。その心臓には530㎰、750NmのV8を搭載し、xDriveで4輪を駆動。個性と美しさを両立したクーペスタイルは先代に負けないくらいの存在感を放っている。REPORT◉吉田拓生(Takuo Yoshida)PHOTO◉市 健治(Kenji Ichi)※本記事は『GENROQ』2019年5月号の記事を再編集・再構成したものです。

 8という数字は世界的にも縁起が良いことで知られているが、はたしてBMWにとってはどうなのか?

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 彼らは1970年代のCSシリーズを起源とする大型クーペの可能性を信じており、実際に6シリーズでは大成功を収めている。だが90年代にデビューした初代8シリーズは、メルセデスSLの対抗馬として市場に送り出されたが、最後まで芳しい記憶を残すことができなかった。

 BMWの8といえば2000年デビューのZ8も忘れてはならない。だが技術の粋を集めたオールアルミニウムのボンドカーも、商業的には「ワールド・イズ・ノット・イナフ」であり、近年はむしろクラシックとして注目を浴びているのである。

 あとはi8という現在進行形のものまであるが、とはいえ昨今のBMWのラインナップ拡充を考えれば、次なる一手が8シリーズ再興であったとしても何ら不思議ではない。

 新しいBMW8シリーズの狼煙はサーキットで立ちのぼった。発売前の新型8シリーズのレーシングカーであるM8 GTEがGTレースに投入されたのである。しかもカブリオレやM8の存在も匂わせている。これは初代8シリーズが屋根も開けず、レースにも打って出なかったことを反省しているのではなく、スープラの例を見てもわかる通り、できるだけ情報の弾数を増やしてイメージを作り上げてしまうという昨今のやり方なのだろう。

 新型8シリーズに対して、いくぶん穿った見方をしていたのだけれど、実車を前にしてコロリと堕ちてしまった。まあ何ともカッコイイ。特に正面近くから見ると、リヤに向かって絞られたルーフラインと、ほどよく盛り上がったリヤフェンダーが広い車幅を上手く表現している。

 最近は背の高いSUVや前輪駆動車、万人受けするセダンといったBMWにばかり目につくので余計にそう思うのかもしれないけれど、久しぶりにカッコイイBMWを見た。

 M850i xドライブ・クーペという車名を紐解くと、標準モデル無しにいきなりのBMW Mであり、8シリーズである。50という数字は5ℓV12ではないけれど、4.4ℓのV8ターボは軽く500㎰をオーバーしているので(530㎰)フラッグシップの850を名乗る資格はある。一方xドライブはつまり4駆。さらに言えば電制のLSDや後輪操舵も備えた全部載せである。ここまで充実させてしまうと、じゃあM8はどうするのか? という予測は本稿とは関係ないからやめておこう。



 ファーストコンタクトで「カッコイイ!」と唸ってしまった新型ハチゴーマルだが、近づいていくと興奮の度合いも弱まってくる。少し距離を置いて見る伸びやかなクーペシルエットは美しいが、部分部分を見ていくと造形自体は昨今のBMWの流れを汲むものばかり。2個の穴がひとつのパーツで成形されているキドニーグリルが良い例である。

 遠く離れて眺めることができないインテリアも同様で、ステアリングやメーターパネル等は今回の撮影の数日前に乗った新型3シリーズの影がちらついて、どうもスペシャリティ感が伝わってこない。



 と思ったら、ありました。センターコンソールに巨大クリスタル製、インパクト大のシフトノブが。本誌ナガタ編集長は「水中花……」と呟いていたけれど、車格を考えればこれくらいの冒険、というか主張は必要だと思う。おなじみiドライブのセレクターもスワロフスキーのような輝きを放っていてハナマル。シフトの前方にはドリンクホルダーが備わっているのだが、そこに「おーいお茶」なんて立てたらせっかくのスペシャリティ感ダダ崩れなのでフタはしっかり閉めておく。

 スタートボタンでV8ターボを目覚めさせ、少し冷たいクリスタル製のレバーを操作して走り出す。渋滞にはまっていては3シリーズとの違いを見出すことは難しいが、少しでもスピードが出ていれば、車体が大きく重心が低く、そしてタイヤの太いスペシャリティ感はひしひしと伝わってくる。



アクアラインをドカーンといく

 高速道路に合流し、スロットルペダルをラフに押し込むと、微かにもぞもぞっと身体を揺さぶるようにして4輪にパワーを行き渡らせた後、脱兎のごとく加速する。少しオールドファッションな加速感だが、ビッグクーペというものはIT長者より年季の入ったクルマ好きのための乗り物という気がしているので、不釣
り合いとは思わなかった。

 サーキットを攻めるより、助手席に彼女を乗せて、片手ハンドルでアクアラインをドカーンといく、そんな雰囲気なのである。

 走行モードはスポーツ、コンフォート、エコプロ、そしてアダプティブから選べるのだが、スポーツ以外は制御が細かく、モード毎の差異も少なく感じられた。まあ公道ではアダプティブ、山道ではスポーツで走れば外すことはあるまい。



 直線路における全開加速は豪放磊落、デカダン、オールドファッションな感じがしたのだけれど、ステアリングを切ると新たな一面が顔を覗かせる。ほとんどロールも伴わないままグイグイと旋回するのだBMWお得意のアクティブステアリングも効いているし、4駆もリヤステアも違和感なしに仕事をしているのだろう。電制のダンパーもスタビも1秒間にウン千回とか言う誰も検証できない速度で変化しているのだろうけれど、こちらに伝わってくる情報が純粋なタイヤグリップだけである点がBMWの上手さだと思った。

 しかも旋回中のボディが意外なことに軽く感じられる。現行の7シリーズが出た当初、アルミやマグ、そしてカーボンで補強した最新プラットフォームのスポーティな身のこなしに驚かされたが、同じ骨格を持つM850iも7以上に硬くて軽い。

 久しぶりにBMWらしい1台に乗った。これならAMG GTあたりとガチンコで戦って、シリーズとしても定着できるはずだ。


BMW M850i xDriveクーペ
■ボディサイズ:全長4855×全幅1900×全高1345mm ホイールベース:2820mm 
■車両重量:1990kg 
■エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ 総排気量:4394cc 最高出力:390kW(530㎰)/5500rpm 最大トルク:750Nm(76.5kgm)/1800~4600rpm 
■トランスミッション:8速AT 
■駆動方式:AWD 
■サスペンション形式:Ⓕダブルウイッシュボーン Ⓡマルチリンク 
■ブレーキ:Ⓕ&Ⓡベンチレーテッドディスク 
■タイヤサイズ(リム幅):Ⓕ245/35R20 (8J) Ⓡ275/30R20 (9J) 
■パフォーマンス 最高速度:250km/h 0→100km/h加速:3.7秒 
■車両本体価格:1714万円

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