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新型BMW 8シリーズに試乗 俊敏な走りの上級パーソナルクーペ

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新型BMW 8シリーズに試乗 俊敏な走りの上級パーソナルクーペ

もくじ

どんなクルマ?
ー 6シリーズに代わる上級パーソナルクーペ
ー 6シリーズと同じエンジンながらパワー/トルクは向上

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どんな感じ?
ー 大人のラグジュアリークーペに相応しい身のこなし
ー ボディサイズを忘れさせる俊敏な身のこなし
ー BMW流ラグジュアリースポーツクーペの走り

「買い」か?
ー 大人のための贅沢なセカンドカー

どんなクルマ?

6シリーズに代わる上級パーソナルクーペ

BMWの上級パーソナルクーペといえば、昔から6シリーズと相場が決まっていたはずだが、最近そのポジションが8シリーズに変わったらしい。BMWジャパンのデータを元にした自動車誌の価格表には、6シリーズのクーペとカブリオレにM6を含む合計10モデルが今も載っているが、それらはやがて8シリーズに変わるということなのだろう。

新着8シリーズのモデル名は、最近のBMW式の英文表記でいうとM850i xドライブクーペだが、そのボディサイズは4855×1900×1345mm、ホイールベース2820mmとある。一方の6シリーズは、例えば650iクーペ Mスポーツで4895×1895×1370mm、ホイールベース2855mmだから、両車のサイズは近いけれど、すべての数値が微妙に異なっている。

ボディの幅は650iとほぼ同だが、全長は40mm短く、全高が25mm低い。実際にM850iクーペを眺めてみると、高めのウェストラインに対して低いルーフがスムーズなラインを描いて後方に流れていくキャビンが印象に残る。どうやらこの、いかにもスポーツクーペといった雰囲気を強調したスタイリングが、M850iのウリのひとつに思われる。

ただしこの、スタイリッシュなルーフラインを持つキャビンは、明らかにリアシートを圧縮している。試みに身長170cmの当方が、自分の運転ポジションの後ろに着座を試みたが、結果は苦しいものだった。ヘッドルームがきつく頭が天井に触れるのは想像どおりだったが、レッグルームもミニマムで、膝は前席のバックレストを押しっぱなしだった。リアシートは手荷物用、もしくは小学生くらいまでの子供用と割り切るべきだろう。

6シリーズと同じエンジンながらパワー/トルクは向上

エンジンは4.4ℓ、正確には4394ccのV8ツインターボと、基本は6シリーズと同じはずだが、プレスリリースには“新開発”の文字が見られ、パワーは650iクーペの450㎰から530psに、トルクも66.3kg-mから76.5kg-mへ、大きく引き上げられている。

トランスミッションも650iと基本は同じ8段ATで、今回のM850iはxドライブだから、インテリジェント4WDを採用している。カーボンやアルミを随所に配したボディ構造により軽量化を果たしたとされるが、それでも車重は1990kgと、650iクーペMスポーツより70kg重い。たぶんxドライブであることもその一因だろう。

で、M850i xドライブクーペのプライスは1714万円とされる。駆動方式その他も違うので単純に比較はできないが、650iクーペMスポーツは1462万円だった。一方、デリバリーにはまだ時間が掛かるようだが、M850i xドライブはカブリオレの価格も発表されていて、こちらは1838万円。

どんな感じ?

大人のラグジュアリークーペに相応しい身のこなし

ブラックとタンのレザーが組み合わせられた低いシートに身体をあずけ、コンソールのATセレクターの横という分かり易い位置にセットされたスターターボタンをプッシュすると、4.4ℓV8ツインターボが軽く唸りを上げて目覚める。クリスタルガラスという驚きの材質を使ったセレクターノブをDレンジに送ってスロットルを踏み込むと、M850i xドライブクーペは滑らかに走り出した。

M850iの試乗会は、Z4と同時におこなわれた。したがって、直前に乗ったZ4 M40iのドライブング感覚が身体に残っているから、どうしても感覚的にそれと比較しがちになる。その感覚に素直にしたがって書かせてもらうと、ボディがひと回り半ほど大きく、車重も400kg以上重いM850iの乗り味は、当然ながらZ4より大人に感じられる。

大人に感じられるというのは、もちろん好ましい意味だ。電子制御アクティブサスペンションに加えて、これも電制のアクティブスタビライザーを装着したアダプティブMサスペンションプロフェッショナルを標準装着するM850iの乗り心地は、明らかにZ4 M40iより角の取れた快適なもので、大型のラグジュアリークーペに相応しい身のこなしを持つ。

ボディサイズを忘れさせる俊敏な身のこなし

しかしだからといって、M850iが単なる大人しいだけのラグジュアリークーペかというと、断じてそうではない。かつての635CSiがそうだったように、アウトバーンやワインディングロードで鞭をくれれば、即座にスポーツクーペとしての側面を味わわせてくれる。

例えばワインディングロードを愉しもうという場合、ドライビングパフォーマンスコントロールはアダプティブのままでも充分にイケるが、もう一歩進んでスポーツをセレクトすると、エンジンのレスポンスが鋭くなると同時に、テールパイプからバルルルルッという爆音が奏でられる。たぶんこれには賛否両論あって、ビーエムよオマエもか、という気分になる御仁もいるのではないか。

それはともかくとして、スポーツでは脚が一段と締まったセッティングになって挙動もタイトになり、ボディサイズを忘れさせる俊敏な身のこなしを味わわせてくれる。しかしそれにもかかわらず、乗り心地への影響はさほど顕著ではなく、依然として当たりのソフトな角の取れた乗り味を提供し続けるところに、8シリーズの大人ぶりを見た気がした。

BMW流ラグジュアリースポーツクーペの走り

最初に書いたように、エンジンは530psと76.5kg-mという大パワーと強トルクを発生するから、深いスロットル開度を与えるとかなり爽快な加速が手に入る。けれども、Mチューンされたフロントがダブルウィッシュボーン、リアがマルチリンクの脚に、前後駆動力を必要に応じて無段階に可変するxDriveによるインテリジェント4WDがそれを制御するから、クルマはあくまで安定した挙動をキープする。

つまり、ドライバーが気持ちよくなれるペースまで攻めても、M850iは基本オンザレールの奇跡を描いてコーナーの連続を危なげなく走り抜けていくわけで、BMW流ラグジュアリースポーツクーペ、表現を変えればBMW流グラントゥーリズモの真髄ここにあり、という印象をうける。

もちろん8シリーズには新型3シリーズ同様、トリプルカメラを備える最先端の運転支援システムが標準層にされているから、必要とあればそれを使えばドライバーに疲労を軽減してくれるはずだ。だがその反面、ワインディングを走っている際に、前輪がセンターラインに近づいたときなどにレーンキープ機能が作動してステアリングが震え、驚かされることがある。ワインディングを走る際にはスイッチをオフにするといいだろう。

さらに、今年夏以降納車される3シリーズ、8シリーズ、X5の各モデルには、60km/h以下で高速道路を走る場合に限ってステアリングから手を離すことができる「ハンズオフ」機能が、他社に先駆けて導入されるという。高速道路で60km/h以下ということは、週末などの渋滞の高速道路でのみ使用可能のデバイス、と考えられる。

「買い」か?

大人のための贅沢なセカンドカー

車両本体価格が1700万円を超えるクルマだから、「買い」を想定できるユーザーはかなり限られるはずだ。だから、しかるべきリッチ層であることが最初の必要条件になるが、それをクリアした層を想定して、あらためて「買い」の条件を考えてみよう。

ガレージやその周辺に、このゆったりしたサイズのスポーツクーペを無理なく収納できる空間があること。言うまでもないが、まずそれが大きな条件だと思うし、2+2シーターではあるものの、2人以上の大人を乗せるチャンスが皆無に近いことも、このクルマと暮らしていく条件のひとつになると思う。つまりファミリーマンであるなら、他にマトモな4ドアもしくは5ドアのクルマを所有している必要がある、ということだ。

とはいえ、M850i xドライブクーペのユーザーに求められる条件は、そのくらいではないだろうか。あとは、普段は2人乗りの豪華な足として使い、ときには安定した身のこなしの高性能スポーツクーペとしてドライビングを愉しむ、といった使い方をスタイリッシュに実践できる御仁こそが、この新しい8シリーズクーペの高級バージョンを手に入れるに相応しい人物、ということになるだろう。

BMW8シリーズのスペック

BMW M850i xドライブクーペ

■価格 1714万円
■全長×全幅×全高 4855×1900×1345mm
■最高速度 –
■0-100km/h加速 3.7秒
■燃費(WLTCモード) 8.3km/ℓ
■CO2排出量 –
■車両重量 1990kg
■エンジン V型8気筒4394ccターボ
■最高出力 350ps/5500rpm
■最大トルク 76.5kg-m/1800-4600rpm
■ギアボックス 8速オートマティック

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