もくじ
ー 試乗が終わらないで欲しいと思うほど良い
ー スポーティさを高めるためのボデイ拡大
ー インテリアデザインも先代から大きく前進
ー パワートレインをしっかり支えるシャシー
ー AMG仕様も楽しみになる素のCLAの完成度
ー メルセデス・ベンツCLA220のスペック
実車 メルセデス-AMG CLA35 4マティック 306ps ニューヨーク・モーターショー
試乗が終わらないで欲しいと思うほど良い
ハッチバックボディの普通のAクラスに、より流麗な衣装を着せたCLAの需要は高く、Aクラスが新しくなったことに伴って、CLAも新しくなることは自然の流れだろう。自動車製造業で成功を収める秘訣は、ひとつのクルマから、必要に応じて容姿を変えたモデルを展開するところにある。
メルセデス・ベンツの「A」の場合、スマートでカジュアルなハッチバックのAクラスに、より実務的な背の高いBクラス、間もなく登場するアウトドアスタイルのGLA、美しいイブニングドレスのようなCLAと、4種類が揃うわけ。同じシャシーに違うボディ。理にかなっていると思うが、読者はどうだろう。
新しいハッチバックのAクラスを初めて試乗した時は、覚えるだけでも頭が一杯になりそうな沢山の技術が盛り込まれていても、運転自体はそれほど素晴らしい体験ではなかった。しかしCLAの場合は違う。今回はミュンヘンからアルプス山脈へと続く郊外の道での試乗となったが、この時間が終わらないで欲しいと、願ってしまうほどだった。
心拍数が上がるようなエキサイティングなものではなかったし、額にうっすら汗をかくというわけでなくても、間違いなく楽しい。自分の孫に伝えたくなるほど、良かった。正直いって、予想外のものだった。まずは簡単に新しいCLAの内容を確認してみよう。
スポーティさを高めるためのボデイ拡大
エクステリアデザインに関しては好みも大きいし、読者の審美眼もあるからあまり多くは語らないが、わたしの目には先代のCLAよりもずっとカッコ良くなったように見える。CLSの弟は、それほど存在の主張自体は強くないが、低くなった全高を除いて全長と全幅は先代モデルよりも大きくなった。多くの場合、モデルチェンジの度にボディも大きくなる傾向があるから、これは避けられない事かもしれない。
しかし試乗後の夕食の席で、メルセデス・ベンツの主任技術者を務めるアクセル・ヘイクスが、クルマをよりスポーティーに仕上げるために、ボディサイズを大きくしたのだと話した。思わず聞き返すと、詳しい内容を説明してくれた。
新しいAクラスは、路上での安定性とハンドリングを向上させるために、トレッドを広げることが開発初期の段階から決まっていたそうだ。また、スポーティーなイメージを強調する意味で、全高は先代モデルよりも低く設定したという。つまり、ロー・アンド・ワイドでありつつ、全長も短くしておきたいところだが、スタイリング的にそうはならなかった。プロポーションとして美しく見える長さに設定してあるからだろう。加えてボディは成長しているものの、増えた車重はわずかに15kgなことも見逃せない。
CLAのエクステリアデザインは、Aクラスと見間違えないようにリフレッシュされただけでなく、フロントのトレッドは63mm、リアは55mm広げられ、サスペンションにも大きく手が入っている。スプリングやショックアブソーバー、アンチロールバー、オプションとなるアダプティブダンパーなどがCLAのために専用の設定となり、よりスポーティーな方向へ味付けされた。
そして最も注目するべきは、エンジンの出力やグレードに関係なく、CLAのリアサスペンションにマルチリンク式が採用されたことだろう。一方で、英国で売られているAクラスのリアサスペンションは、シンプルで安価なトーションビーム式となっている。このおかげで、乗り心地やハンドリング、ステアリングフィールに大きな違いが生まれている。
インテリアデザインも先代から大きく前進
英国に初めに上陸するのはCLA180とCLA200のガソリンエンジン仕様で、エンジンはルノー・日産・三菱アライアンス由来の1.3ℓユニットを、メルセデスが独自にチューニングしたもの。また、CLA220 とCLA250には、189psと224psに設定されたメルセデス製の2.0ℓユニットが搭載される。
4輪駆動もオプションで選べるが、英国で選択の対象となるのはローエンドのCLA180とCLA200のみ。欧州の別の地域ではCLA250にも設定があるが、英国の場合は同じく4輪駆動となるAMG CLA35と価格が近くなってしまう理由で、避けられたのではないかと思う。また405psを発生するAMG CLA45も2020年には登場するだろう。
今回初めに試乗したののは、中間グレードとなるCLA220で4輪駆動となっている。リリース当初の試乗車だけあって、オプション装備も充実してあり、2面の10.25インチモニターにアダプティブ・ダンパー備わる。インテリアデザインの雰囲気も先代のCLAから大きく前進し、一層上質で居心地の居場所になった。ドライビング・ポジションもパーフェクト。社内の雰囲気も風通しの良いもので、後部座席も長距離でなければ、(欧州の)平均的な身長の大人が充分問題なく過ごせる広さがある。
しかし、新しいテクノロジーに関しては、もう少しの改善が必要そうだ。音声認識のソフトウェアは、「ヘイ!メルセデス」 とスタートアップ時に声を掛けるときくらいしか、まともに機能しない。2日間をかけて3台のCLAに乗り換える機会があったが、どれも会話としては成立しなかった。
パワートレインをしっかり支えるシャシー
自律運転の入り口でもある車線逸脱警告機能と衝突被害軽減システムに関しては、装備されている事自体は良いのだが、わたしの印象では運転の邪魔に感じる場面が少なくなかった。道路の隅の方から発進しようとする際でも、不要なブレーキが掛かったり、ステアリングホイールへ警告の振動が伝わってくる。コーナーでも最も効率的に曲がれるように内側のライン取りをしても、同様に動作してしまう。
もちろん機能自体をオフにすることもできるが、給油などで一度エンジンを切ると、必ずオンの状態でスタートすることになる。主任技術者のヘイクスも、システムの動作には納得していないようだが、NCAPの成績を少しでも良くするためにも、やむを得ないようだ。
2.0ℓガソリンエンジンの印象は良い。BMWのユニットほどスムーズではないし、フォルクスワーゲンのもののように個性が感じられるわけでもないが、全回転域に渡って充分なパワーが得られる。組み合わされるトランスミッションは、ゲトラグ社製の7速デュアルクラッチATで、特に動作に不満はなかった。スポーツモードを選択すると、高回転域まで引っ張るようになり、エンジンノイズのボリュームも大きくなる。ヘイクスによれば、英国では5月に登場するディーゼルモデルには、メルセデス製のトランスミッションが搭載されるという。
だが今回の注目点はパワートレインではなく、それをしっかり支えるシャシーにある。先代よりも設定は硬くなっているようだが、気になる細かな振動、ハーシュネスは感取されない程度。今回はアダプティブダンパーが付いていれば、という条件だが、前輪駆動か4輪駆動かは問わず乗り心地は素晴らしいものだった。
AMG仕様も楽しみになる素のCLAの完成度
ボディの揺れが気になるのは、かなり路面状態の酷い場所や起伏のある区間を走行した時くらいだが、それでもボディコントロールは、CLAのようなスポーティなクルマでは珍しいほどに優れている。ステアリングも、先代のAクラスが備えていたリモート感がなくなり、適正な重み付けと安心感のある正確性を兼ね備えているといえる。
A地点からB地点への移動のスピードという点では、CLA220のパワーでは物足りなさを感じてしまうから、よりパワーのある224psのCLA250に乗り換えてみると、これが更に良かった。パワーとグリップのバランスに優れ、一番魅力的なグレードだといえそうだ。ただ先述の通り、CLA250の4輪駆動モデルは英国市場には入ってこないのだけれど。
AMG仕様に関しても、楽しみな知らせがある。個人的にはA35の仕上がりには納得できなかったのだが、新しいCLAと同様の変化がCLA35にももたらされる可能性は充分にあるからだ。現状のままでも、積極的に運転をしたいと思わせる充足感という点で、CLAAMGに並べるライバルは多くはない。パワーアップされるパワートレインと合わせて、マルチリンク・サスペンションの設定も独自のものになるはず。ただし、運転支援技術に関しては、動作が過敏過ぎるとはいえ効きを弱めることはないだろう。
CLAは、Aクラスのプラットフォームを使用したクルマの中では、最も訴求力の強い車であることは間違いない。しかも、その完成度は段違いだといっても過言ではなさそうだ。
メルセデス・ベンツCLA220のスペック
■価格 3万6500ポンド(529万円・予想)
■全長×全幅×全高 4549×1796×1446mm
■最高速度 236km/h
0-100km/h加速 7.0秒
■燃費 -
■CO2排出量 -
■乾燥重量 1545kg
■パワートレイン 直列4気筒1991ccターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 189ps/5500rpm
■最大トルク 30.4kg-m/1800rpm
■ギアボックス 7速デュアルクラッチ・オートマティック
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