20億円オーバーのブガッティとともにスーパースポーツカーの中で注目株だったのはイギリスの名門、アストンマーティン。なんと2台のワールドプレミア=世界初公開を含む、4台の新しいミッドシップスポーツカーをブースの最前列に並べたのだ。アストンマーティンのスポーツカーはこれまでFR、いわゆるフロントエンジン・リアドライブのGTカーばかりだったが、いよいよフェラーリやランボルギーニ、マクラーレンといったスーパースポーツ御三家と同じミッドシップスポーツカー市場への参入を決めた。
アストンマーティン
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今回の展示はその証にほかならない。今回の4台の中でジュネーブが初登場となったのは、“AM-RB 003”と“ヴェンキッシュ・ヴィジョン・コンセプト”の2台である。AM-RB 003は2010年代初頭に登場した“ラ フェラーリ”や“マクラーレンP1”、“ポルシェ918スパイダー”と同等の性能を持つミドシップスポーツ。アストンマーティンの頂点となる“ヴァルキリー”、そのサーキット専用モデル“ヴァルキリーAMRプロ”に続く、アストンマーティン・ミッドシップスポーツの第3弾となる。
空力やカーボン製の骨格及びボディといったクルマの根幹となる部分の多くに、F1のレッドブルレーシングと共同開発中のヴァルキリーの技術が応用される。ただし、前ヒンジの跳ね上げ式ドアの採用やキャビンの拡大など実用性はヴァルキリーより高くなるようだ。
運転席の背後に搭載されるのはアストンマーティンが自社で開発するV6ターボにモーターを加えたハイブリッド。排気量をはじめ詳細は明かされていないが、かなりの高出力ユニットになるのは間違いない。2021年の後半に納車を開始する予定で、現在鋭意開発が進んでいる。おそらくライバル同様、限定モデルになると目されている。
“フェラーリF8トリビュート”や“ランボルギーニ・ウラカン・エヴォ”、“マクラーレン720S”対抗のミッドシップスポーツとなるのがヴェンキッシュ・ヴィジョン・コンセプト。スタイリングはヴァルキリーやAM-RB 003に似ているが、ボディ骨格に接着式のアルミ素材を用いるなど、まったく別のクルマとして仕立てられているようだ。空力もあちらこちらに空気を流す穴が開いているヴァルキリーやAM-RB 003ほど攻めたものにはなっていない。
パワートレインはAM-RB 003と同じアストンマーティン製V6ツインターボ。ただしハイブリッドではなく、モーターのないコンベンショナルな内燃機関となる。こちらもスペックは発表されていないがライバルと同等、つまり720psを超えるような出力が与えられるのは間違いないだろう。ヴェンキッシュ・ヴィジョン・コンセプトはヴァルキリーやAM-RB 003と異なり、アストンマーティンのカタログモデルの頂点として継続販売される。生産開始は2022年頃になる予定。
いよいよデリバリーが始まる「ヴァルキリー」の魅力
いよいよ2019年中に納車が開始されるヴァルキリー。ほぼ生産型を思われるその姿はまるでレーシングカーというよりも、タイヤの付いた戦闘機に近い印象だ。ガルウイング式ドアの開口部は人がやっと出入りできる程度しかないお尻よりも脚の位置が高い現在のF1のようなドライビングポジションを採る。エンジンはコスワース製の6.5L V型12気筒。ターボ全盛の現在では珍しい自然吸気を採用する。最高出力は1000bhp/10500rpm、最大トルクは740Nm/7000rpm。
最高回転数は何と11100rpm。この高出力を実現するために、チタン製のコンロッドやピストン、クランクシャフトには無垢の金属の塊から削り出して加工される。また詳細はまだアナウンスされていないが、このエンジンにはさらにモーターが組み合わされ、ハイブリッドになるというから、パワーユニットの出力はさらに高いものになるはずだ。
アストンマーティンはこれらミッドシップスポーツのほかに“ラゴンダ・オールテレイン・コンセプト”を世界初披露。ラゴンダはアストンマーティンの電動自動車専用ブランドで、オールテレイン・コンセプトは昨年同じくジュネーブで発表した“ヴィジョン・コンセプト”の進化形となる。パワートレインをはじめ詳細は不明だが、電池を床下にすべて収めることで自由度の高い広い室内と高いボディ剛性を得ているという。ラゴンダ・ブランドの電気自動車は2022年から生産が開始される予定だ。
マクラーレン
アストンマーティンと同じイギリスのスーパースポーツメーカーのマクラーレンは2018年に発表した“スピードテール”をモーターショー初披露。スピードテールは“P1”、“セナ”に続くマクラーレン最上級限定車シリーズ、“アルティメイト”の第3弾。マクラーレン市販モデル最速の403km/hという最高速度を誇るハイパワーGTだ。ロングボディエレガントで優雅なスタイリングは速度記録車を彷彿とさせる。ちなみに全長は5317mmに及ぶ。
またカーボンファイバー製のフロントタイヤカバーや格納式のデジタルサイドミラー、ボディの後端が隆起する可変式スポイラーなど、細部にまでこだわることで空力性能にさらなる磨きを掛けた。ミッドシップに搭載されるのは4.0L V型8気筒ツインターボにモーターを加えたハイブリッド。システム総合出力1050ps。この強力なパワーにより、車両乾燥重量1430kgのカーボンファイバー製のボディをたった12.8秒で300km/hまで加速させる。
ちなみにこの数値はP1よりも3.7秒も速いタイムだ。またキャビンは1990年代初頭に発表された“マクラーレンF1”を彷彿させる運転席を中心前方にオフセットさせた3座レイアウトを採用する。価格は175万ポンド。邦貨に換算すると2億5000円程度。106台の限定販売だが、発表前にすでに完売していた。
「600LTスパイダー」も初登場
マクラーレンの底辺を支える“スポーツ”シリーズの頂点に立つ軽量高性能モデル“600LT”のオープンモデル、“600LTスパイダー”も、ここジュネーブが初登場。屋根は“570Sスパイダー”同様、閉じるとクーペのような対候性が得られる開閉式ハードトップを採用。3分割式のハードトップはもちろんスイッチひとつで開閉できる電動油圧式で40km/h以下なら走行中でも開閉できる。クーペ同様、3.8L V型8気筒ツインターボを搭載。600ps/620Nmの出力値も変わらない。
乾燥車両重量は1297kg。オープン化により重量増を50kgという最小限に抑えることができたのは、高剛性のカーボンファイバー製モノコックの採用によるところが大きいだろう。0-100km/h加速は2.9秒、0-200km/hはクーペよりも0.2秒遅れとなる8.4秒。最高速度はルーフを開けた状態では315km/h、閉めた状態では324km/hまで達する。2019年3月からの期間限定販売で、日本での価格は3226万8000円。
そのほかカタログモデルの頂点である“スーパー”シリーズ、720Sのレース専用車、“720S GT3”もブースに並べられた。このクルマは、1996年にスーパーGTの前身である全日本GT選手権にマクラーレンF1GTRで参戦しシリーズチャンピオンを獲得した郷 和道氏率いるチーム郷により、2019年のスーパーGTシリーズのGT300クラスへの参戦が予定されている。
取材・文/編集部 撮影/望月浩彦
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