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ニューモデル 2019.2.23

クルマの故障診断の秘密、伝道師に聞く エラーコードは当てにならない?

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もくじ

ー エラーコード ときには間違いのもとに
ー 故障診断の伝道師
ー 始まりはオシロスコープ
ー 理解が重要 患者は次々と
ー 番外編:エラーコードに聞く

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エラーコード ときには間違いのもとに

「わたしたちはキノコみたいなものです。暗い場所に押し込まれて、少ない栄養で育てられるんです」。思わず笑みがこぼれてしまう。いまこのセリフを口にしたのは、デヴィッド・マッシーだが、自動車診断装置に詳しくなければ、誰のことかと思うだろう。

デヴィッドは、自動車メーカーが一般の整備工場に必要な技術情報をまるで提供してくれないとこぼす。「EOBD-IIという診断機能をご存じのドライバーも多いと思いますが、そのエラーコードはクルマの故障個所に対応しています。これは汎用規格であり、どの修理工場でも読取は可能です」


「しかし、それとは別に各自動車メーカー固有の診断機能もあり、それは専用のエラーコード読み取り装置でしか対応できないのです。メーカー側はそれを進歩だと言いますが、専用機器を購入する余裕のない個人経営の修理工場は、まるで門前払いをされたようなものです」

どんな装置でもいいわけではないが、故障修理にいそしむ整備士にとって、EOBD-IIやメーカー専用の診断装置は大きな武器となる。だが、デヴィッドによれば、故障個所を特定してくれるはずのエラーコードが、ときに間違いのもとにもなることもあるという。

「ふつうのメカニックであれば、なんとかコストに見合った修理をして、オーナーのもとに無事にクルマを返そうとする以外に、できることは限られています。その結果、数日後にはふたたび警告灯が点灯し、車両が低速走行しかできないリンプホームモードになると、われわれの出番です」

故障診断の伝道師

エラーコードや診断装置と聞くと、なにやら大変なもののようだが、わたしの横にはその道の達人が控えているのであり、デイビットとともに、彼の父、フランクも業界では「伝道師」としてその名を知られている。

フランクはオーストラリアで最新診断技術についての指導を行い、英国に戻ってきたところであり、去年はモデナを含むイタリアとフランス、アイルランドでも指導を行ったそうだ。南大西洋に浮かぶ英領アセンション島の軍隊や、なかには英国で諜報活動を担当するMI5でも指導を行ったことがあるというが、同然ながらその詳細について極秘扱いとなっている。

そもそも、わたしが初めてフランクの名を耳にしたのは、先日スラウまでディーゼル微粒子フィルターの再生を行っているセラメックス社の取材に訪れたときだった。そのとき応対してくれたスタッフが、フランク・マッシーの名を知っているのがさも当然であるかのように、彼がセラメックス社を訪れたときのことを誇らしげに話してくれたからだ。

フランクがDPFの診断方法を実演するビデオを見て、彼が高く評価されている理由を初めて理解することができた。

現在65歳のフランクは、息子のデイビットとともにイングランド北西部のプレストンで、フォルクスワーゲングループの車両を専門に扱うADSという整備工場を運営しながら、オートインフォームという自動車診断の学校を主宰しており、主に、バッテリーテストや点火不良への対応、さらには排気ガス検査の方法などを教えている。

始まりはオシロスコープ

この話を聞いて興味を持ったものの、暖炉の前から動きたくないというのであれば、オシロスコープの1種であるピコスコープを使った主要10項目のテスト方法や、診断作業の進め方など、YouTubeにたくさんある彼の実演映像を見るだけでもいいかも知れない。

フランクが自動車の診断装置に興味を持ち始めたのは、モーターマスターズというチューニングショップを営んでいた1985年当時にまで遡る。

彼はその頃を振り返って、「ちょうど電子制御燃料噴射装置のような、新しい技術の導入が始まったころでした」と話している。

「同業者のあいだでも、どう手を付けたものか、まるでお手上げ状態でした。わたしはそこに目をつけ、オシロスコープを調達して、電気系統の診断方法を独学で学んだのです」

瞬く間にその道の権威となったフランクは、ワークショップを開催して、早見表のような不確かな診断ではなく、信号の強さを測定することで、不具合の原因に辿り着く方法を他のメカニックたちに教え始めたのだ。

その後、2000年に新たな排出ガス規制が施行されると、自動車の電子制御化が加速度的に進むとともに、エアコンやパワーウインドウ、集中ドアロックにアダプティブサスペンションなど、制御する範囲も爆発的に広がっている。

「一般の工場ではたらくメカニックにとっては、まるでイタチごっこの状態でした。ただただ、診断装置とトレーニングに莫大な投資をするだけだったのです」とフランクは話している。

だが、彼のそばには常にオシロスコープがあった。彼は「エラー読み取り機、いわゆるスキャンツールですが、これは症状を教えてくれるだけです。オシロスコープなら原因まで特定することができます」と彼は言う。

「スキャンツールでは原因の半分までしか確認出来ませんが、オシロスコープであれば、信号の波形まで読み取ることができるため、原因の特定が可能なのです」

理解が重要 患者は次々と

思わず、重力に抗う力を失いそうになる瞼の動きを目ざとく捉えたフランクは、ここで話の核心を持ちだしてきた。「小さな箱を想像して下さい。信号がこの形状のままであれば、つまり波形が正常であれば、エラーコードは発生しません。しかし、信号の立ち上がり部分と立ち下がりの部分に歪みがあったとしたらどうでしょう? エラーは出ないかもしれませんが、不具合を起こす可能性は十分にあります」

フランクは続けて、クルマの中を流れる無数の信号を、その小さな箱の中に収めておこうと、ECUがどれだけ休みなく「補正をかける」ことで奮闘しているかを教えてくれた。発生源と現象を理解することで、初めてほんとうに不具合のある個所を発見することが出来るのだという。

「不具合を正確に診断するというのは、臭いを嗅いだり、賞味期限を確かめたりして、冷蔵庫のなかで腐りかけている食品を探すようなものです」

そして不具合の再発防止には、環境も重要だ。「不具合を見つけるのと同じで、疑わしい箇所の廻りにある信号を調べます。根本的な原因が部品そのものではなく、その使用環境にあったということもよくあります。気温、酸素の濃度、カーボンの堆積などといったものです」

ここで、彼はある顧客のことを話してくれた。所有する4年落ちのアウディA6 2.0 TDIが解決不能なトラブルに見舞われ、万策尽きてフランクのもとへと駆け込んできたのだ。フランクが話を聞くと、ディーラーではエラーコードに翻弄され、なす術がないまま、排ガス中の酸化窒素を低減するSCR装置の交換が必要だとオーナーに言い渡したのだという。

「実際に信号の強さと流れを調査するとともに、SCRもさまざまな条件で試した結果、再循環排ガスクーラー(EGR)が原因だと突き止めました。それも、単に配管内に空気が混入していただけだったんです」

ひと通りの取材を終え、フランクは次の患者であるアウディR8の診断に取り掛かっている。道具はまるで手術道具のように整然と並べられ、オシロスコープを手に、額に付けた小型LEDライトを光らせ、お気に入りの椅子に座りながら作業を進める彼を、信号の波形を映し出す大型モニターの灯りが照らしている。

「コーンウォールの錫鉱山で働く鉱夫を模した、オモチャの人形に見えませんか?」と息子のデイビットがからかっている。伝道師と呼ばれても、鈍感さは必要だ。

番外編:エラーコードに聞く

コードリーダーやスキャナーと呼ばれる装置は、なにも整備工場限定ではない。安ければ10ポンド(1400円)程度から手に入れることが可能であり、この装置を車両のOBDポート(場所は取扱説明書に載っているはずだ)に差しこむと、エラーコードが表示される。

表示されたコードと対応表とを参照すれば、問題箇所が特定できるが、多くのドライバーはこれを信じ込んで、整備代が浮いたと喜ぶのだ。

だが、車両診断の達人たるフランク・マッシーはそんなことでは納得しない。「安物のスキャナーは読めるコードの数が非常に限られ、問題箇所の説明もあまりに漠然としています。コードでわかるのは症状であって、原因ではないことを忘れてはいけません」

安物のスキャナーを手に入れるくらいなら、メーカー純正か、専用のスキャナーを買うほうが良いという。汎用のスキャナーが「圧力センサーレンジ異常」としか表示しなくても、専用スキャナーならもっと詳細な情報を教えてくれることもあるからだ。

「フォルクスワーゲングループのクルマをお持ちなら、ロステックVCDSのようなプロ仕様の専用スキャナーがおすすめです」とフランクは言う。「汎用品よりもはるかに役立ちますし、価格も300ポンド(4万2000円)ほどです。腕に覚えのあるアマチュアメカニックなら、安い買い物です」

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(AUTOCAR JAPAN 編集部)

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