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ニューモデル 2019.2.9

回顧録 歴代911比較試乗 最新は最良なのか

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もくじ

ー 最新のポルシェは最良のポルシェか
ー タイプ991カレラS(2012年型)
ー タイプ997カレラ4S(2005年型)
ー タイプ993カレラ4S(1996年型)
ー タイプ964カレラ4 30周年記念モデル(1993年型)
ー タイプ930カレラ3.2クラブスポーツ(1987年型)
ー 結論
ー 番外編:911の途切れた連鎖

    動画 新型ポルシェ911(992型)カレラS/4S、公道とサーキットでテスト

最新のポルシェは最良のポルシェか

(AUTOCAR JAPAN誌105号の再録)

モータージャーナリスト達がクルマに関して使いたがるもっとも使い古された表現のひとつに、「最新が最良」というフレーズがある。つまり、クルマはモデルチェンジするたびに旧型よりよくなっているという意味だ。そんなことは当然であり、旧型と比較しての善し悪しが注目に値するとすれば、それは新型のほうがダメだったときに限られるはずだろう。

もっともポルシェ911に限っては、そう単純にはいかない。ほぼ半世紀にわたり、911は常識というものが通用しないクルマであり続けてきた。たとえば、本来ならトランクであるべき場所を愚かにもエンジンルームとして使っていたり、そこに収まるエンジンも、ほんの少し前まで冷却効率の悪い空冷式を頑固に貫いていたのである。

それに、ある世代の911がその前の世代より扱いやすくなるという保証など、じつは今まで一度たりともなかった。今になってみれば失敗作と見なされている世代があるのは周知の事実だ。だが、最新当時に最良ではなかった911が本当にあったのか? 991型のローンチにあたってポルシェが親切にも展示してくれた一連の世代を前にして、そういう考えがふと頭をよぎった。

ならば確かめてみればいい。歴代モデルを1カ所に集め、それらを同じ道で同じようにハードに走らせてみれば、歴史がそれぞれの個体に与えた判定の真偽を、今現在の公平な目線で見直せる。そういうわけでわれわれは、最新のタイプ991からタイプ930までの歴代カレラに乗り込み、真実を求めてワインディングへと向かったのである。

なお、ポルシェが今回の取材のために自らの意思で選び、用意してくれた一連の試乗車に関して述べる以後のコメントは、試乗した特定の個体についてというよりも、その個体が代表するその世代全般に対してのものであるということを、あらかじめ断っておこう。

タイプ991カレラS(2012年型)

1998年に空冷から水冷に変更されて以降で最大の変革が911のスクリプトに起きた結果がこのモデルだとは、一見したところでは気づかないだろう。だが、それは事実である。

ほぼ半世紀近く引き継がれてきた外見はホイールベースの延長によって大きく様変わりし、電動アシストのステアリングと広げられた室内空間、それに豪華絢爛なインテリアを目の当たりにすれば、911が大切にしてきた約束事の優先順位は変更されてしまったのだとさえ感じられる。

だが、実際にタイプ991を運転してみれば、かなりハードに攻め込んでみても扱いやすく、そのうえ快適で静粛性も高い走りに、本来なら911で得られるはずではない、何か違う種類の体験がそこにはあるのだと気づくはずだ。これは911の歴史においてまさに初めての、本当の意味で出来がいいと言い切れる室内環境である。

しかし、それと同時に失われたものもある。クルマとドライバーと間にあった、生気にあふれた火花を散らす対話がそれだ。それこそが911の本質と考えている人も少なくないだろう。けれど、それは決して失われたのではない。目につかないところに隠されているだけなのだ。

本気で攻めれば、このクルマも間違いなく911なのだと、エンブレム以外でも明確に示してくれる。たとえばコーナリングでは、タイプ997の最終型以上に限界ぎりぎりの走りが可能だ。旧型よりもよくなっていると主張できるだけの論拠はほかにも十分に揃っている。

確かに電動アシストに代えられたステアリングからは、油圧式だった頃のフィールはもはや決して得られない。しかし、こちらも十分に優れている。これまで積み上げてきた911の基準に照らしても、そうであるとはっきり断言できる。

スペック

■新車価格 1381.0万円
■最高速度 304km/h
■0-100km/h加速 4.5秒
■車両重量 1415kg
■パワートレイン 水平対向6気筒3800cc
■最高出力 400ps/7400rpm
■最大トルク 44.9kg-m/5600rpm
■ギアボックス 7速MT


タイプ997カレラ4S(2005年型)

タイプ997に対する歴史的な評価がどうなるのか、今後が楽しみなところだ。おそらく大多数の意見は好意的で、敬意のこもった評価となるのだろう。この南カリフォルニアを走っていても、タイプ997を設計したティームのモチベーションが、初代をデザインしたスタッフのそれを忠実に反映していることがわかるはずだ。

同じクラスにライバルの存在を許さないほどの素質と個性を備え、同時に一定レベルの洗練された実用性を保ちながらも一切の妥協を排したドライバーズカーを造ろうとした情熱は、1963年に初代911に込められたそのままの形で、タイプ997の奥底に明確に見て取ることができる。

新型に取って代わられた現在でも、このクルマはほとんどの点において驚異的なほどモダンなままである。基本的な設計が始まったのは1998年にまで遡ることを考えると、本当に感嘆するしかない。

今、運転してみても、ダッシュボードの素材やエルゴノミクスにだけ目をつぶれば、なぜポルシェがこのクルマをフルモデルチェンジする必要があったのか、不思議に感じられるはずだ。そしてその疑問は、タイプ991を実際に運転するまで決して解けることはないだろう。

また、前期型は旧タイプのフラット6エンジンを使っていた最後のモデルだったことも忘れてはならない。2009年以降は完全に新設計された、よりシンプルで製造コストが安く、その代わりに個性は大幅に失った直噴エンジンが導入されている。もしかすると、あえて2009年以前のモデルを選ぶのが、タイプ997選びのひとつの流儀として定着していくのかもしれない。

スペック

■新車価格 1387.0万円
■最高速度 288km/h
■0-100km/h加速 4.8秒
■車両重量 1520kg
■パワートレイン 水平対向6気筒3824cc
■最高出力 355ps/6600rpm
■最大トルク 40.8kg-m/4600rpm
■ギアボックス 6速MT


タイプ993カレラ4S(1996年型)

空冷エンジンを積んだ最後の911であり、空冷時代の最高傑作と多くの人から認められているのが、このタイプ993だ。実際にはポルシェが深刻な財務危機にあった時期に開発されたため、周囲から期待されていたような劇的なフルモデルチェンジを実施することができず、タイプ964を実用的に改良するにとどめられたモデルだ。

だが、空力性能に優れたボディワークを取り入れ、トランスミッションは6段とされるなど、不満点として挙げられていた箇所は丹念に仕上げられている。なかでも重要なのは、新設計のダブルウィッシュボーンとなったリアサスペンションだ。さらに、この世代で初めて不格好な部分が完全に解消され、911のなかでももっとも好まれるモデルにもなっている。

エンジンは、チューニング違いの2種類が存在した。現在ではより甘美な特性と信頼性の高さから、初期型の272psユニットのほうが285psの後期「バリオラム」より好まれているが、実際にはどちらも傑出した素晴らしいエンジンだ。

タイプ993で知っておくべき最重要事項は、スペックによって性格が歴代ポルシェのなかで最も大きく変わるモデルだということだ。したがってグレード選びに際しては、それこそホイールのサイズにいたるまで、すべてを正しく把握しておかなければ最高の満足感は得られない。

たとえばワイドボディ化されたこのカレラ4Sは、正直なところ失望感漂うグレードだった。では、どれがベストか? おそらくそれはバリオラムに切り替わる前の、ナローボディだったベースモデルのカレラ2、それも16インチか17インチのリムを履いた仕様だろう。それなら間違いなく最良の911のひとつといえる。

タイプ964に対するタイプ993の優位をひと言で表すなら、それは「ドライバビリティ」だ。今、改めて運転すると、ギア段数の増加によって出力を有効活用できる点や、しかるべきサスペンションを得て踏ん張りが効くようになったリアアクスルに、それ以前のモデルとはまさに隔世の感を覚えずにはいられない。

911はタイプ993でようやく万能ウェポンとしてライバルを凌ぐ性能を発揮できるようになり、過度の緊張を伴わずにドライビングを楽しめるクルマとなったのだ。現在でも人気があるのは不思議でもなんでもない。

スペック

■新車価格 1175.0万円
■最高速度 270km/h
■0-100km/h加速 5.3秒
■車両重量 1450kg
■パワートレイン 水平対向6気筒3600cc
■最高出力 285ps/6100rpm
■最大トルク 34.0kg-m/5259rpm
■ギアボックス 6速MT


タイプ964カレラ4 30周年記念モデル(1993年型)

911シリーズの平均的需要からすると964は、少なくとも欧州ではとくに不人気なモデルだ。スタイルは悪く、それまでの旧型に比べて個性的なわけでもなく、あとに続く新型のように走行性能に優れてもおらずで、投資するに足る説得力に乏しいというのがその理由である。

そういう先入観もあって、このクルマは今回集めた歴代911のなかでも、うまく運転できなかったとしても大して悔しくないモデルの筆頭に挙げられるだろう。しかし実際には、ここに揃えたクラシック911のなかでもとくに傑出した一台である。根拠は以下のとおりだ。

装備するトランスミッションはタイプ930カレラの最後期モデルから与えられたゲトラグ社製のG50であり、ギア比が変更されたおかげで格段にシフトワークが楽しくなっている。さらにツインプラグの3.6ℓエンジンによって走りも並外れて速い。また、リアのトレッドが拡大し続ける以降のモデルと違い、最近ではCセグメントカーでさえためらわれるような狭い道幅でも平然とすり抜けられる。

加えてカレラ4でも強烈なアンダーステアは顔を出さず、何よりギアボックスが鈍重な4段ティプトロニックでもない。そういう911が、歴代中もっとも低い評価(繰り返すが欧州市場での話だ)のおかげで、低走行距離で状態のいいマニュアルのカレラ2クーペでさえ、かなり手頃な値段で手に入るのだからうれしい限りだ。

スペック

■新車価格 ー
■最高速度 260km/h
■0-100km/h加速 5.7秒
■車両重量 1470kg
■パワートレイン 水平対向6気筒3600cc
■最高出力 259ps/6100rpm
■最大トルク 31.6kg-m/4800rpm
■ギアボックス 5速MT


タイプ930カレラ3.2クラブスポーツ(1987年型)

読者諸氏もご賛同いただけるだろうが、このカレラ3.2は、オリジナル911が改良を積み重ねてたどり着いた、究極といっていい存在である。これ以降のモデルは、基本的なアーキテクチャと空冷というエンジンの冷却方式を引き継いでいたとしても、ハードコア一辺倒だった基本哲学は確実に薄れ、よりユーザーフレンドリーなアプローチへと変わっていったからだ。

そのカレラ3.2だが、最新のタイプ991から乗り換えたわけではないにもかかわらず、その雰囲気には信じがたいほどのビンテージ感がある。本当のモデルイヤーよりはるかに古いクルマに思えてしまうほどだ。

わずか25年前のユーザーが、これほど劣悪なドライビングポジションと視認性の悪いメーター、冗談にもならないエルゴノミクス、効きすぎるかまるで効かないかのどちらかしかないヒーター、踏み応えがぎこちないペダル、操作性の悪いトランスミッションを積んだこのクルマに喜んで乗っていたとは本当に信じがたい。この劣悪さには、まったく弁解の余地はない。だが、本当にそれだけのクルマなのか?

キーをひねり、3.2ℓフラット6のエンジン音を聞いてみる。991のあとに聞くそれは、まるでレオナ・ルイスからジャニス・ジョプリンへ切り替えたくらいの激変ぶりだ。その喉から出る声は決して澄んではいないが、改めて聞き込むと決して悪くはない。それに、たった231psだったはずのパワーにしても、車重は今のルノー・ルーテシアより軽いのだ。

標準モデルでも0-97km/h加速は5.5秒にわずかに届かないくらいのタイムだから、軽量化を施してバランスを見直したこのクラブスポーツならもっと速いはずである。そうであれば、現在の水準に照らしてみても、この古参兵は十分に速い部類に入る。

また、ハンドリングはじつにスリリングだ。この時代の911はそこにほとんど矯正など与えられておらず、重量配分から予想されるそのままに、オーバーステアかアンダーステアかの二者択一である。それもかなり派手な両極端だと覚悟しておく必要がある。このクルマを速く走らせるのは難題だが、それは速く走らせた場合に無事に生きて帰るのがかなり困難だからにほかならない。

しかし、ひとたびこのクルマを制御する術を身につけてしまえば、軽い鼻先(アンダーステアとすぐロックするブレーキの原因だ)に起因する問題をうまくあしらい、重いテール(純然たるトラクションの源)の利点を生かしきれるようになる。そうなった暁にはこのステアリングだけですべてを許せるようなり、必ずや手に入れたい一台に昇格するはずだ。逆に、乗りこなす余裕がなかったなら、手をつけるべきモデルではない。

スペック

■新車価格 ー
■最高速度 243km/h
■0-100km/h加速 5.4秒
■車両重量 1135kg
■パワートレイン 水平対向6気筒3164cc
■最高出力 231ps/5900rpm
■最大トルク 28.9kg-m/4800rpm
■ギアボックス 5速MT


結論

この5台のなかに「911のなかの911」と呼ぶべき真の勝者はいるのだろうか? それはありえない。それぞれの世代にはそれぞれに独自の長所がある。カレラ3.2には基本に引き戻される美点が、964には「911の常識」をわきまえた走りが、993には「クラシック」911の究極といえる魅力が、997には扱いやすさが、そして991の驚異的な洗練の極みがあり、それぞれがほかの世代にはない魅力だ。

どれかを選ぶとしたら、ベストな一台を探すというよりも、目的に合った最適な一台を見つけるといったほうが適切だろう。

しかし、頭に銃を突きつけられて、どうしてもすべての911を代表する最高の一台を選べと迫られたなら、わたしならタイプ993を選ぶだろう。僅差でタイプ997がそれに続くだろうか。

だが、もっと簡単な至高の解決策がある。しかもそのなかには、この2台はどちらも入らない。本当に欲しいのはカレラ3.2とタイプ991を1台ずつだ。それで911のエッセンスはすべてカバーできる。

番外編:911の途切れた連鎖

なぜ今回の集会にタイプ996が入っていないのか、ポルシェにその理由を聞いてみたいところだ。おそらくは史上最強の過激な911だったはずのタイプ996が、なぜ今回のラインナップから漏れているのか。その答えはおそらく、作品番号996は997へと発展し、取って代わられたからだということになるはずだ。

だが、これは間違いなく弁解でしかない。何しろ両方のクルマに共通する部分は3分の1にも満たないのだ。真の理由はむしろ、製品としては失敗に終わった最初の水冷911の実態を隠蔽するためではないかとわたしは密かに思っている。

そして、おそらくこれは事実だろう。彼らは見込み違いをしでかし、コスト節減を優先して品質を軽視したエンジニアリングを行ったがために、「ポルシェの水冷フラット6エンジンは残念ながら信頼性に欠ける」という決定的な評価を下されてしまったのだ。

そのときに失われたものはいろいろあったのだが、その一方でタイプ996は、取って代わるべきタイプ993よりパワフルにして軽量でもあった。正しくメンテナンスされて保存されていた個体に乗れたなら、現在の視点でもタイプ996がどれだけ速く、そしてどれだけハンドリングにも優れていたかを知って驚かされたことだろう。

タイプ996のそうした悪評は、ユーザーの視点からすると必ずしも悪いばかりではない。おかげでこのモデルは、911としてはかなり格安に入手できるからだ。機械的な問題(主にリアのメインオイルシール関連)がしっかり修理されてさえいればじつに値頃な、量産された車種としては史上最高のスポーツカーの世界への入口となってくれるかもしれない。

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(AUTOCAR JAPAN 編集部)

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