現在位置: carview! > ニュース > ニューモデル > 回顧録 ミドル級ミドシップ対決 ケイマンR vs エヴォーラS 前編

ここから本文です

回顧録 ミドル級ミドシップ対決 ケイマンR vs エヴォーラS 前編

掲載 更新
回顧録 ミドル級ミドシップ対決 ケイマンR vs エヴォーラS 前編

もくじ

ー ジレンマを抱えた2台
ー 軽量化を果たしたケイマン
ー エヴォーラは出力向上とシャシーチューン
ー 要改善点が多数
ー 確かな軽量化の効果

ミドシップスポーツカー対決 エヴォーラ vs ケイマンS 回顧録

ジレンマを抱えた2台

(AUTOCAR JAPAN誌99号の再録)

ポルシェ・ケイマンとロータス・エヴォーラには、共通する不幸があった。パッケージングから考え得るポテンシャルをフルに発揮することを、過去一度も許されることがなかったという不幸だ。

ケイマンの場合、その理由はポルシェというメーカー自身にある。エンジンを車体中央に積むこのケイマンは、理論的には既存の911よりもハンドリングに優れた、技術的に優秀なクルマとなってしかるべきモデルだ。だが、ポルシェの都合からすれば、それは決して起こってはならない事態だった。

ポルシェは暗黙のうちに、ケイマンが持てる潜在能力をすべて開放することを決して認めず、同社のモデルヒエラルキーの頂点に位置する(そしてそれは同時に、はるかに利益率が高いことをも意味する)リアエンジンのスターの座を脅かしたりはしないよう、性能を抑えてきたのである。

ロータス・エヴォーラの場合はクルマ自体が抱える問題からだ。いうまでもなく、こちらの問題のほうがより深刻である。エヴォーラはロータスが全力を投入しているモデルではあるが、その完成度は満足とするにはまだほど遠い状態だ。

エヴォーラはもともとそのハンドリングに惚れ込んだ人が選べばいい種類のクルマではあるのだが、同時にドライブトレインやインテリアに見え隠れする問題点を大目に見るだけの度量を持った人でなければ買えないクルマなのもまた動かしがたい事実である。そして皆さんもすでにお気づきのとおり、そんな人物はそれほど多く存在するわけではない。

軽量化を果たしたケイマン

今回、ご登場願ったケイマンとエヴォーラには、それぞれ「R」と「S」のサフィックスが付いている。おそらく上記の問題点を多少なりとも改善してきたことだろう。「多少なりとも」と断り書きを入れたのは、ケイマンの場合にはどう考えても「すべて」とはならないはずだからである。

980万円の価格はSより200万円以上も高いが、ケイマンRは決してケイマン「GT3」ではなく、せいぜい「Sプラス」程度に考えるのが順当だろう。わずか10psの向上にとどまり、依然として911のベースモデルであるカレラ2にさえおよばない330psの最高出力からも、それは明らかだ。

もっとも、パワーについてはポルシェにも弁解の余地がある。このモデルの開発目標で最優先事項とされたのは別のところだからだ。軽量化である。

ケイマンRはSより50kgも軽い。その軽量化の一部は遮音材の撤去によって実現しているようで、ドアのどこかに隙間があるような音がする。風切り音もロードノイズもエンジン音も、過去に乗ったケイマンSにより明らかに大きい。これにはドアがアルミ製に変更された影響もあるかもしれない。そして残る軽量化のメニューは、エアコンとオーディオの取り外しと現行ポルシェ中で最軽量のアロイホイールへの換装だ。

エヴォーラは出力向上とシャシーチューン

エヴォーラSのレシピには、軽量化は含まれていない。代わりにパワーはケイマンRより、かなり大幅に向上している。これはトヨタから供給される3.5ℓV6に過給機を装着した結果だ。911カレラをも凌ぐ350psの最高出力は、ノーマルから70psも高い。ケイマンRとは違い、このパワーこそがエヴォーラSの最重要変更点なのだ。

そうはいってもロータスがシャシーに手を加えずにいられるわけがなく、事実、グリップが多少ながら増している。そしてそれ以上に重要なのが、減少したリアのロールとストレートでのスタビリティ向上だろう。

乗り心地とハンドリングに関しては、エヴォーラSに何も問題はない。かねてからエヴォーラには、まだまだ扱えるパワーに余裕があるのはわかっていた。その余裕を有効活用したモデルが「S」だと考えればいい。

その一方で、エヴォーラは登場時から、もっと価格に見合ったクオリティ感がインテリアに欲しいと言われてきた。それについてはまだ問題は解決していないとわたしの目には映った。

要改善点が多数

作りにはほとんど問題はなくなったが、テスト地までの移動で(決してそれほど長くはないドライブだ)、まだ改善が必要だと思われるところをいくつも見つけてしまったからだ。たとえば視認性の悪い表示系はまるで改善されておらず、特に直射日光が当たるとほとんど判読不能になる。

スイッチ類もまたステアリングホイールの影になって目視できない。ペダルのオフセットも相変わらずだ。また、ケイマンRでドアに隙間が開いているような音がすると指摘したが、それはエヴォーラSにしても同じようなものだ。

アルミ押し出し材製のバスタブ型シャシーはカーペットが裏打ちされているような感触だし、シートだって本革表皮なのだから、ケイマンRのカーボンファイバー張りに比べてもっと快適であってしかるべきなのだが、実際にはケイマンRのほうがドライビングポジションも含めてはるかに優れている。

対するケイマンRのキャビンには、ドイツ車のハッチバックならどの車内でも見られるようなごく標準的な仕上げの素材が使用され、ずっと円熟した環境に仕上がっている。もっとも、ボディ同色のトリムにはちょっと納得がいかないし、わたしならエアコンとオーディオのオプションはやはり選択しておく。

確かな軽量化の効果

それでは核心に迫ろう。1340kgになったケイマンRの50kg分の減量効果は? これはガソリンにしてほぼ満タン分の違いでしかない。しかし、ケイマンSとRを交互に乗り比べてみると、10psほどの強化や改善されたであろうエンジンの反応のよさのせいもあって、確かに違いは感じられるはずだ。

走りは一段と機敏になっている。速さはもちろん疑いようがない。0-100km/h加速の公称タイムで5.0秒であり、そしてポルシェの公称値がたいてい控え目に申告されているのは有名な事実だ。

何よりケイマンRのエンジンはフィールがいい。3.4ℓのフラット6はサウンドも抜けもよくスムーズである。テスト車のギアボックスは6速マニュアルだったが、ストロークが短くて操作感が最高だ。キレがよくてタイトかつ確実なシフトは、それ自体が楽しくなるほどではないかもしれないが、正確さについては申し分なく、ミスシフトはまず起こらないだろう。

エヴォーラSで何よりも残念だったのがそこだ。凄まじく速いだけに惜しまれる。本誌のロードテストでの計測による、ほぼ満タンの2名乗車による0-97km/h加速のタイムは4.36秒だから、トラクションやエンジンのレスポンス、それに絶対的な出力にはなんの問題もない。問題なのはこの出来の悪いトランスミッションなのだ。

こんな記事も読まれています

ゴールデンウィークは車トラブルが急増! 故障を未然に防ぐ2つのポイント
ゴールデンウィークは車トラブルが急増! 故障を未然に防ぐ2つのポイント
グーネット
イケイケだったテスラに何があった? イーロンマスクが1.5万人規模のリストラを発表!
イケイケだったテスラに何があった? イーロンマスクが1.5万人規模のリストラを発表!
THE EV TIMES
船橋~鎌ヶ谷~柏 “地獄渋滞”の千葉の南北道路「船取線」4車線化いつ完成? 狭くて抜け道無し「船橋我孫子線」拡幅計画は今どうなっているのか
船橋~鎌ヶ谷~柏 “地獄渋滞”の千葉の南北道路「船取線」4車線化いつ完成? 狭くて抜け道無し「船橋我孫子線」拡幅計画は今どうなっているのか
くるまのニュース
5/16申込締切【無料】「中国EVはなぜ脅威なのか」北京モーターショーで見た中国国産EVの今と未来
5/16申込締切【無料】「中国EVはなぜ脅威なのか」北京モーターショーで見た中国国産EVの今と未来
レスポンス
セナへのトリビュート/トヨタのテストは“ル・マン優先”/市内でサイン会etc.【WECイモラ木曜Topics】
セナへのトリビュート/トヨタのテストは“ル・マン優先”/市内でサイン会etc.【WECイモラ木曜Topics】
AUTOSPORT web
高速PA駐車マス「ぜんぶナナメ化」! 大型車マス大幅増 小型車も停め方だいぶ変わった!? 九州の基幹PA
高速PA駐車マス「ぜんぶナナメ化」! 大型車マス大幅増 小型車も停め方だいぶ変わった!? 九州の基幹PA
乗りものニュース
5年ぶりのF1中国GPで、ドライバーたちが路面の“ペイント”に困惑
5年ぶりのF1中国GPで、ドライバーたちが路面の“ペイント”に困惑
AUTOSPORT web
スズキ『キャリイ』シリーズ 仕様変更
スズキ『キャリイ』シリーズ 仕様変更
レスポンス
F1中国GPスプリント、接触の非はアロンソにあり! 10秒のタイム加算+ペナルティポイント3が科される。スチュワード、レギュレーションの修正求める
F1中国GPスプリント、接触の非はアロンソにあり! 10秒のタイム加算+ペナルティポイント3が科される。スチュワード、レギュレーションの修正求める
motorsport.com 日本版
三菱「新型“2人乗り”軽バン」公開! 斬新“窓なし”&超静音仕様! 乗り心地も“良好”になった 新「L100」インドネシアで306万円から
三菱「新型“2人乗り”軽バン」公開! 斬新“窓なし”&超静音仕様! 乗り心地も“良好”になった 新「L100」インドネシアで306万円から
くるまのニュース
ヤマハ「SR400」 初期型カラーの外装セットを受注期間限定で発売
ヤマハ「SR400」 初期型カラーの外装セットを受注期間限定で発売
バイクのニュース
実走行504キロのレクサス「LFA」が2億2000万円以上!?「ニュルブルクリンクパッケージ」は64台の超希少車でした
実走行504キロのレクサス「LFA」が2億2000万円以上!?「ニュルブルクリンクパッケージ」は64台の超希少車でした
Auto Messe Web
複数のチームから関心が向く角田には「ベストな選択肢を掴んでほしい」/渡辺康治HRC社長インタビュー(2)
複数のチームから関心が向く角田には「ベストな選択肢を掴んでほしい」/渡辺康治HRC社長インタビュー(2)
AUTOSPORT web
フェルスタッペン、序盤トラブルもハミルトン下し圧勝。激しい3位争いをペレス制す|F1中国GPスプリント
フェルスタッペン、序盤トラブルもハミルトン下し圧勝。激しい3位争いをペレス制す|F1中国GPスプリント
motorsport.com 日本版
BYD「仰望(ヤンワン)U8」泳ぐ電動オフローダーは老舗ブランドの脅威になる!
BYD「仰望(ヤンワン)U8」泳ぐ電動オフローダーは老舗ブランドの脅威になる!
AutoBild Japan
ルクレール、サインツJr.とのチームメイトバトルに怒り「彼は限界を越えていた」
ルクレール、サインツJr.とのチームメイトバトルに怒り「彼は限界を越えていた」
motorsport.com 日本版
【ついに発表トヨタ・ランドクルーザー250シリーズ】 限定車ファーストエディションも販売へ
【ついに発表トヨタ・ランドクルーザー250シリーズ】 限定車ファーストエディションも販売へ
AUTOCAR JAPAN
レゴで楽しむ【マクラーレンMP4/4 & アイルトン・セナ】の趣味時間
レゴで楽しむ【マクラーレンMP4/4 & アイルトン・セナ】の趣味時間
カー・アンド・ドライバー

みんなのコメント

この記事にはまだコメントがありません。
この記事に対するあなたの意見や感想を投稿しませんか?

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

629.01064.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

168.01270.0万円

中古車を検索
ケイマンの車買取相場を調べる

査定を依頼する

メーカー
モデル
年式
走行距離

おすすめのニュース

愛車管理はマイカーページで!

登録してお得なクーポンを獲得しよう

マイカー登録をする

おすすめのニュース

おすすめをもっと見る

この記事に出てきたクルマ

新車価格(税込)

629.01064.0万円

新車見積りスタート

中古車本体価格

168.01270.0万円

中古車を検索

あなたにおすすめのサービス

メーカー
モデル
年式
走行距離(km)

新車見積りサービス

店舗に行かずにお家でカンタン新車見積り。まずはネットで地域や希望車種を入力!

新車見積りサービス
都道府県
市区町村