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ニューモデル 2019.1.23

回顧録 比較試乗 911カレラ vs GT2 RS 価格差2倍の差は?

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もくじ

ー 本気になったポルシェ
ー 価格差を正当化できるか
ー 高過給圧の圧倒的トルク
ー トラクションがやや不足
ー 共通の個性は薄い
ー 驚くべき速さのGT2 RS
ー ブレーキの耐久性にも差
ー ベストバイではないが魅力的

    コンパニオン大特集(13) 東京オートサロン2019 画像72枚

本気になったポルシェ

(AUTOCAR JAPAN誌97号の再録)

ポルシェを本気にさせるとこうなるのだ。GT2 RSはそういう実例である。誰か(つまり日産だが)が自社のGT-Rはニュルブルクリングのラップタイムでポルシェ997 GT2よりも速いと公表した。それを聞いたわたしは早速、率直な物言いで知られるポルシェのGTカー担当主任のアンドレアス・プロイニンガーに少々意地悪な口調で質問をしたのだが、彼の答えは「必ず挽回する」のひと言だった。

それから18カ月の開発期間を経てついに提示された回答──それが目の前にある邦貨換算約3000万円のGT2 RSである。620psの最高出力は、公道走行可能な911としてはもちろん史上最高だ。カレラGTや公道仕様のGT1に比べても圧倒的と言っていい。

もっともわれわれは、ポルシェが公称するニュルでのラップタイム(ご興味の方にはお知らせしておくが7分18秒で、つまりRSはノーマルのGT2より14秒速いことになる)を検証するために、わざわざドイツまで出向いたりはしていない。

ここは雨に湿ったわれらが本拠地の英国であり、今回の目的は3つの疑問に答えを出すことだ。第1にGT2 RSの性能が現実世界で行使可能なものなのかの確認、第2に911の基本レシピに比べてこのクルマがどこまで進化しているのかについての検証である。

価格差を正当化できるか

基準として持ち出したのは3.6カレラだ。しかも、ほぼベーシックな仕様の個体を用意した。つまり、ブレーキは標準のスティールディスクで、シャシーはPASMを装備しておらず、トランスミッションはマニュアルといった仕様である。GT2 RSにオプション装着された19インチホイールとスポーツエグゾーストを無視すると、この2台の911の価格差はほぼ1800万円ということになる。

そこで第3の疑問が浮上する。確かにGT2 RSの馬力荷重比はカレラのほぼ2倍にも達するが、果たしてこれほどの価格差を正当化できるほどのものなのだろうか? それを確認すべく、われわれはふたつの場所で試してみることにした。前半はソールズベリー平野の公道で感覚的な面からの評価を下し、後半はMIRAのテストコースで少しばかり科学的な調査を行う段取りである。

GT2 RSの車両重量は1370kgで、おそらく911のなかでも最軽量の部類に入るだろう。だが、実走してみると「軽快」とはほど遠い感覚だった。これは運転がむずかしいからという理由からでは決してない。たとえ6速ギアでも十分すぎるほどのグリップ感が、しかもとてもリアルに感じられるからだ。

RSは通常のGT2よりも90psもアップしているが、この増分は1.4barから1.6barに上げたターボのブースト圧によって得られている。加えて軽量化のため遮音材やガラス厚が削減されているので、エンジンの稼働状態が明瞭に耳に届くようになった。たとえば6速で100km/hからフルスロットルにするとすぐにタービンが回転を始める音が聞こえ、数秒後には200km/hに到達する。

高過給圧の圧倒的トルク

なお、MIRAで確かめた結果から進言しておくが、公道で5速80km/hから同じ行為を試みるのは限りなく自殺行為に近い。最高出力の数値でGT2 RSを上回るクルマをドライブした経験は少なくないが、高過給圧が生み出す推進力は、得てして同じパワーの低過給圧あるいは自然吸気エンジンより強烈に感じられるものだ。

まして今日のような天候でパイロットスポーツのカップタイヤを履いていればなおのことで、トラクションコントロールに常時フル稼働してもらわなければならなかった。

公道ではGT2 RSは速すぎる? ポテンシャルをフルに発揮させるつもりであれば、間違いなくそうだろう。だが、速度を下げると扱いにくいとか、欲求不満になるというような印象はまるでなかった。

乗り心地は硬いがノーマルのGT2よりはっきりと硬いわけではなく、長距離ドライブを躊躇するほどに妥協のない過酷な足まわりではない。むしろ巡航時の乗り心地は予想以上に快適で、ノーマルのGT2よりもはるかに優秀なくらいである。

このサスペンションはGT3 RSのものをベースにしており、そのためフロントのトレッドがGT2よりも広く、さらにレース用から転用したパーツやローズジョイントも採用されている。広げられたトレッドに対応したカーボンファイバー製のフロントフェンダーは、GT3 RSのような接着加工ではなく一体成型品だ。

トラクションがやや不足

おかげでパワーデリバリーの点を除けば、GT2 RSのフィールは今までのどのGT2よりもGT3に近い。ステアリングには今日のような状況下でも信頼できる正確さがあり、ノーマルGT2よりも自信を持ってターンインで切り込める。

ただ、リア側の扱いには苦労した。横方向のグリップにはそれほど問題はなかったが、トラクションが十分とはいえなかったからだ。ポルシェとミシュランはビスポークのソフトコンパウンドを共同開発してGT2 RSのリアタイヤに採用しているのだが、71.3kgmの巨大なトルクが相手では、その効果のほども限られる。

トラクションコントロールをオフにした状態では一瞬の不注意でトラクションを失い、凄まじい速さでリアが横移動するのである。この瞬間的なスリップアングルの変化には、誰もが戦慄せずにはいられないはずだ。

カレラに乗り換えて同じ道を走ってみると、最初のうちは活気に欠けた、いささか反応の鈍いクルマに思えてしまう。このふたつの単語がポルシェのモデルに対する形容として使われるなんて、通常なら決してあり得ないだろう。だが、GT2 RSの走りに徹した操作系の高いコントロール性に比べると、カレラのそれはまるでダイレクト感より軽さを優先しているかのように思えてしまう。

共通の個性は薄い

もちろんしばらく乗っていれば、これは間違いなく911のフィールだと再確認できるだろう。けれど、GT2 RSを知ってしまったあとでは、コミュニケーション能力に関しては少々不足を感じてしまうかもしれない。

確実に言えるのは、この2台のクルマは同じDNAを共有しているのは間違いないにせよ、それぞれの開発の方向性の違いによって、共通の個性はかなり薄められているということだ。

カレラのシャシーが古典的な911のテンプレートに近いのは明白で、ノーズは軽いが切り始めには明確なアンダーステアが感じられ、荷重移動も大きく、そして自然吸気のエンジンからはいかにも水平対向6気筒らしいサウンドが聞こえてくる。それに比べるとGT2 RSのシャシーは、リアエンジンの個性のうち好ましからざる部分を徹底的にぬぐい去ろうとしているのがわかる。

それでいてポルシェはリアエンジンの楽しみを消し去ろうとはしておらず、そのリファインぶりは見事としか言いようがない。GT3 RSの場合と同様、911の最高の特性はすべてそのまま残されているのである。さらにGT2 RSには、ほかのどの911よりも優れた高品質の要素がひとつ追加されている。真のスーパーカーと呼ぶにふさわしい速さだ。

驚くべき速さのGT2 RS

MIRAに再集合した2日目は、天候こそ1日目より多少マシにはなっていたが、サーキットのコンディションは寒くてウェットであり、理想的というにはほど遠かった。それでもGT2 RSは、ちょっと驚くような数字を記録してみせてくれた。7.1秒という0-161km/h加速タイムだ。これはドライでノーマルのGT2が出した記録を0.8秒も短縮しており、そればかりかフェラーリ599よりも速い。

そしてそれ以上に劇的な形でこの911の動力性能の強烈さを印象付けたのが、静止状態から241km/hまでの加速タイムだ。ウェットにもかかわらず、なんと15.0秒で到達してみせたのである。比較対象を例に挙げてみると、マクラーレンF1が12.8秒、GT3 RSが20.1秒、そしてスタンダードモデルのカレラが28.7秒である。

わずか数ラップしただけで、その違いは明白だった。サスペンションに調整機能を持たない標準仕様のカレラがサーキット走行ではあまりに柔らかすぎるフィールだった一方で、GT2 RSはもっともソフトなセッティングでもコーナーでの姿勢がはるかに安定しており、フロントのグリップもはるかにしっかりしている。

ただ、GT2 RSのほうが速かったのは当然としても、その差がストレートでの加速タイムの圧倒的な差から推測したほどの大きさではなく、ラップタイムでわずか3秒にとどまったのは驚きだった。その要因としては、カレラのほうがエンジンパワーを最大限に活用することが容易だった点が挙げられるだろう。

ブレーキの耐久性にも差

自然吸気のGT3 RSとは違い、GT2 RSのターボ過給エンジンはスロットルの正確さに少々欠けていて、そのためウェット路面上では右足の踏み込み過ぎに細心の注意を払う必要があった。

視界の開けたコーナーで試したところ、テールスライドそのものは安定した姿勢で推移するのはわかったが、それに伴って一瞬のトラクション喪失が発生するのは避けられない。その心配の少ないドライ路面ならラップタイムははるかに大きな差となっただろうが、今日のこのタイトでスリッパリーなサーキットでは、GT2 RSの走りは少々パンチが効き過ぎていたようだ。

MIRAではもうひとつ、大きな違いが判明した。標準のブレーキとカーボンセラミック製のそれとの差だ。絶対的なストッピングパワーに決定的な差があるわけではないのだが(それでも後者のほうが短距離で止まれるのは間違いない)、耐久性に圧倒的な開きがある。

サーキットでラップを重ねていったところ、カレラのブレーキはわずか5周目で音を上げてしまったが、GT2 RSのそれは同じラップ数でもわずかにフェードの兆候が感じ取れただけで、まだ7割ほどの余裕は残っていた。

それではこのGT2 RSは、ひとつの製品として総合的にはどう判定すべきだろうか? 確かに極限の条件ではカレラよりも刺激にあふれる走りを味わえるのは間違いないものの、公道上で走るのなら、ほとんどの時間において、価格差に完全に比例するほど深い満足が得られると結論付けるのは不可能だろう。

ベストバイではないが魅力的

それに、GT2 RSのプライスタグを前にしても、1192万円しかしない普通の911が素晴らしいスポーツカーであることにはなんの変わりもない。さらにGT2 RSは、コンポーネントの多くを共有していて絶対的なパワーでは劣るGT3 RSと比べても、運転していて今ひとつ一体感に欠けると感じられるところがある。それに、サーキットを真剣に走らせるような場面でさえ、GT3 RSのパワートレインでパフォーマンスに決定的な不足を感じたりはしないはずだ。

そういうわけで、もし911シリーズのなかでもっともお買い得なモデルを探したいのであれば、ほかを当たったほうがいいという助言が最良になるだろう。しかし、そうであってもなお、GT2 RSはやはり魅力的だ。このクルマは毎日の足に使える実用性を備えており、パワーに不足を感じることはまず絶対にありえない。

ターボラグから限界のハンドリングでは多少扱いに苦労するかもしれないが、アドレナリンが全開になる絶好のチャンスを提供してくれるのは請け合いだ。動力性能で見れば911のなかにこれに匹敵するモデルはなく、したがってそれを理由にその存在を正当化できるだろうが、それだけでは済まないくらいの魅力があるのもまた事実である。

少々非論理的に聞こえるかもしれないが、これだけの高い動力性能を備えており、それがこの価格で買えるのであれば、この3000万円の911はお買い得と解釈すべきなのかもしれない。もっとも、これをお買い得だと手に入れられるのはわずか500人にすぎない。それは当然ながら歴代911のファンのはずであり、そういう人の手元こそが、GT2 RSにふさわしい住処なのだろう。

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(AUTOCAR JAPAN 編集部)

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