もくじ
ー 個性的な3台のフェラーリ
ー 孤高の存在たるエンツォ
ー 目的に純粋なF40
ー すべてがスパルタン
ー 現代でも一級品の動力性能
コンパニオン大特集(1) 東京オートサロン2019 画像70枚
個性的な3台のフェラーリ
それにしても壮観だ。そして、3台がどれも完璧なサウンドを奏でている。ある種の野性を感じさせる点では共通しているが、いずれも見事なまでに個性的で、ほかとは間違えようがない。
静寂に包まれた森林にノイズをまき散らすそのたたずまいは、不用意に近寄れば火炎を吹きかけられそうな不気味な迫力に満ちている。静寂が日常のチョバム・テストサーキットをこんな咆哮が支配するなど、おそらくこれが初めてのことだろう。
今回が初顔合わせというわけではないが、テールパイプを並べた458イタリアとF40、そしてエンツォのそれぞれのエンジンに火が入れられたときに紡ぎ出されるシンフォニーは、とにかく素晴らしいのひと言だ。どのコースを舞台に選んだとしても、やはり誰もがそう思うに違いない。
この3台は間違いなく、ほとんどの読者諸氏が考える現代のフェラーリを代表するモデルであろう。さらにこの3台のあいだには、スーパーカーそれ自体の進化の歴史が凝縮されている。いうまでもなくその時間軸の一端にいるのはF40であり、もう一端が458だ。
いずれも魅力的だとはいえ、なかでもいちばん存在感があるのはどれかといえば、やはりエンツォだ。まずルックスの強烈さでほかの2台を歯牙にもかけない。しかも、458より早10年近くも古いモデルにもかかわらず、さまざまな意味でもっとも現代的に見える。
孤高の存在たるエンツォ
ドラマティックなほどに長いフロントオーバーハングに加え、運転席セルを車体中心部に配置させようとした明確な意図によって、このクルマは実にユニークなプロファイルを得た。サイドビューを見れば、それが数百メートル離れたところからだったとしてもエンツォだと即答できる。
テールランプクラスターのデザインや、何より空気を左右に切り裂きながら加速していこうという意志が込められたかのような個性的なノーズは、どこのどんなクルマにも似ていない。それは同時に、エンツォがほかのいかなるフェラーリとも違った孤高の存在だと思える最大の理由でもある。
そんな現代的なかつ攻撃的なエンツォに比べ、F40はまるで時代の違うクルマだと見た瞬間にわかる。それは当然といえば当然ではあるが、しかしその基本的な流儀には458との共通点も多い。
どちらもエンツォの角張った攻めのルックスとは対照的な、洒落っ気たっぷりで古典的プロポーションに重きを置いたクルマである。以前、初めてこの3モデルを並べる機会を得たときにご登場いただいたF40は、2年間におよぶ徹底的なレストアを終えてオーナーの手に戻ったばかりの個体だったから、余計にそう感じてしまう。
目的に純粋なF40
まず始めに、われわれがなぜ今回、この3台を並べてみたのかについてだが、理由はいくつかある。第一に、可能ならぜひともやってみたかったという単純な好奇心だ。
第二に、458は2010年に登場したクルマのなかでもっとも注目に値する一台であり、それどころかもしかするとここ10年間のスパンで見ても突出した存在であるかもしれず、したがってその意義について歴史に名を残す先輩たちとじっくり比較して考察してみる価値があると考えたからだ。
そして第三に、フェラーリを代表するモデルが過去23年間にわたってどのような点においてどのような形で進歩してきたかを一目のもとに比較することにより、将来のフェラーリがどのような方向へ進化していくのかを予測してみたかった。
正直にいうと、わたしの最高にお気に入りのクルマであるF40をなんとしてもふたたびドライブしてみたかったからという理由も実はあるのだが、それはあくまでも4番目のオマケだ。というわけで最初にわたしが向かったのは、必要最低限の装備しかない1987年式のF40の、今となっては拍子抜けするほど質素なキャビンであった。
ここに集合するまでのあいだ、ほんの30分ほど前まで458に乗っていただけに、ラグジュアリーのかけらも存在しないこのインテリアには漠然とした滑稽さすら感じてしまう。中にあるのは6点式ハーネスが装備された深くえぐられてタイトなバケットシートとステアリングホイールとシフトレバーだけで、ほかにはどんなスポーツカーにも必ずある最低限の計器とスイッチくらいのものである。
すべてがスパルタン
たとえばロータス・エリーゼのようなクルマに比べても、この室内は確実によりスパルタンだ。おかげでこのクルマの目的の純粋性は結晶のように明快で、乗れば誰でも一瞬にして理解できるはずだ。
スターターボタンを押して2.9ℓのツインターボV8を始動すると、クルマ全体がエンジンのリズムに呼応して控え目に脈動し始める。ちなみに遮音のための装備は何ひとつない。スロットルの反応は独特のソフトさがあり、走り出すためにエンジンの回転数を上げるには驚くほど深くアクセルペダルを踏み込まねばならない。
クラッチペダルも同じくストロークがたっぷりと深い。そしていざ動き出すと、静止時には据え切りなど不可能だと思えるほど頑として重かったステアリングが突如として一変し、生き生きとフィールを伝えてくるようになる。
走行中はタイヤノイズとトランスミッションの唸りが絶え間なく耳に入ってくる。乗り心地にはリファインと呼べるようなものは何もなく、まるでスケートボードのような硬さである。ブレーキペダルもまた、必要な制動力を得るためには生半可では済まない強力な踏力が必要なほど硬い。さらに5段マニュアルのギアシフトはクリック1回で済む458のデュアルクラッチとは違い、リアルな物理的操作を必要とする。
現代でも一級品の動力性能
正直にいうと、F40はほかよりもかなり扱いにくいクルマだし、少なくとも最初のうちは誰でも多少は手間取るはずだ。しかし、ある程度慣れてくればスムーズに操作できるようになり、そうなってしまえばあとは正しくスロットルを開くだけの余裕と勇気さえ出てくれば、もう次の段階に進む準備は完了だ。
何しろF40を本気で加速させたら、車内の空間を除いた世界のそのほかの部分は一瞬のうちに逆方向に走り去ってしまう。もしもそれを受け入れる準備に手間取るようでは、走り始めてすぐに何がどう間違っているのかが理解できない苦悩を抱え込んでしまう羽目になる。そういう人には、このクルマを選んだのが間違いだったのだとご理解いただきたい。
F40を扱ううえで決して忘れてはならないのが、わずか1230kgしかない車重だ。おかげで現代の水準に照らしてみても直線での基本的な動力性能にかけては完璧であり、まったく驚異的というほかない。
それもそのはず、F40の馬力荷重比は389ps/tと、458の361ps/tを軽く上回っているのだ。それに加えてトルクは58.9kgmを誇り、絶対的数値で458の55.1kgmを圧倒している。23年前のクルマにもかかわらず、F40は絶対的加速力で458に勝っているのである。
後編につづく
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