たくさんのユーモアを含めて、豊田章男社長のスピーチだけで進められた新型スープラのプレス・コンファレンス。社長の多くの言葉には喝采と拍手が送られるという、アメリカンスポーツの歓迎ぶりのように迎えられたのが新型スープラだ。
本当に日本車の発表会なのか? 章男社長はこんなに世界のプレスに人気があったのか? といったことを感じてしまうほど、トヨタ・スープラは待ち望まれていた車だった。おそらくは北米のプレスの多くの人たちにとっても、ライフステージのどこかで出会ってきたスポーツカーだったのだろう。
トヨタ・プリウスの価値をサイレントマジョリティに向けて【新型TOYOTA PRIUS】
開発責任者の多田さんの話によれば、北米ディーラーへの説明会でも喝采、さらには感極まり、泣き出してしまう人もいたほどだったという。
ところで今回の”Supra” のロゴバッジだが、こちらは2代目スープラの継承だ思えば、実は違うのだそうだ。しかし、ここには大きな大きな裏話があった。
このSのラインは、ニュルブルクリンクのスタート地点から約9km地点にあるS字コーナー ”Wehrseifen” (ヴェーアザイフェン:防御の谷) をかたどったもの。ミュンヘンでデザイン開発を行なったデザイナー達も、事あるごとに開発の地、ニュルブルクリンク旧コースに訪れその走りを見守り、ときには同乗した。その中で生まれたアイデアでもあり、また最高のマシンを生み出すという決意でもあったのだ。
そして登場したその姿は、コンパクト&スタイリッシュと呼べるもの。しかし、デザイナーは、今回の展示に関してシルバーの方は概ね狙いのボディ表現ができているが、レッドやホワイトだとちょっとうまくボディの造形が表現できていないかもしれないという。
抑揚がありながらキャラクターラインの強調されないスープラにとって、モーターショーなどの会場は苦手なのだという。とりわけレッドは、ボディを単調に見せてしまうために、デザイナーとしては展示にあたってはかなり気になっていた色だという。会場でみるならば、どちらかというとシルバーの方の印象がスープラらしさを表している。とのこと。確かに引き締まって見える。いずれ見しても実際には、野外で見てもらうと、その個性が明確にわかるのだとのことだった。
全体の印象として気がつくのは、サイドから見たプロポーションが往年の名車トヨタ2000GTを思わせること。決して意識したわけではないのだが、スポーツカーの理想的なプロポーションを考えたときに、タイヤサイズとホイールベースのバランスを検討。それが後で検証して見ると、奇しくも2000GTと合致していたのだという。
またサイドウインドウの形状や、リヤからの形状などにも2000GTと近似する部分を見いだすこともできる。実は86にもそうした要素はあり、FRトヨタがスポーツカーを考えるときに、どうしても造作として近づいてしまう部分はあるようだ。何れにしても、意図して似せたわけではなく、結果的に似てきていたということだ。
そうしてみると、長らく空いていたスープラのポジションに自然と合致する形であることも面白い。FRレイアウト、直列6気筒パッケージがすでにXXやスープラとしての造形を産むことはもちろんだが、やや中央に寄せたヘッドライトやセンター部分の少し織り上がるボンネットなども、スープラに共通する特徴でもある。もちろんこれは直列6気筒エンジンを内包しながら、空気抵抗を低減するベストな造形でもあるのだが、そうした必須レイアアウトから不要な部分を削ぎ落としていった形としても、スープラのあるべき形はある程度決まっていったといえるだろう。
日本名で歴史を見るとラグジュアリーな初代XX(A40/50)から始まり、衝撃の2代目XX (A60)、そしてハイエンドGT&スポーツの初代スープラ(A70)、徹底したハイエンドスポーツの2代目スープラ(A80) ときて、そして生産中止から約17年という長いブランクの末、ここに3代目スープラ (A90)が登場となった。しかし、変わらぬ基本レイアウト、開発ポリシー、そして時代なりのトレンドといったものが、スープラをまさに「進化」させていると感じられる造形に至った。
意図的に似せないという理由はないが、似てしまったのはトヨタの開発者、トヨタのデザイナーとしてDNAのなせる業と受け取れるのは当然だ。
もっともっとスープラのことを知れば、もっとスポーツカーが好きになれるはず。社長スピーチの冒頭、“トップガン”ことトヨタ特Aテストドライバーの故成瀬弘さんとの写真が出てきたときには、ちょっとジーンとしてしまった。
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