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AUTOCARロードテスト90周年(7) クルマの購入/所有の変遷、整備まで

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AUTOCARロードテスト90周年(7) クルマの購入/所有の変遷、整備まで

もくじ

ー 新車ですら重整備が必要だった時代
ー 今ではDIY自体がほぼ不可能に
ー 10万km程度で骨格が腐食
ー 金融商品の発達により買いやすく
ー 信頼性が格段に向上
ー 安全面の進化

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新車ですら重整備が必要だった時代

グリース・ポイント、カーボン除去、キャブレターのダッシュポット調整。1928年から1970年代頃までは、まっさらの新車を買っても歌姫に扱いの大変な整備計画がもれなくついてきた。そして運転するのとおなじくらいの時間をかけてがんばって整備しても(あるいはお金にかえてディーラーにまかせても)、大枚を投じたその硬いはずの鋼鉄の物体は徐々にサビとなってボロボロと崩れ落ちていったのだ。

どれほどきっちり手をかける必要があったのか、1950年代初頭のモーリス・マイナーの取扱説明書を見ればよくわかる。

まず800kmごとに、ステアリングギアボックスの6カ所にあるニップルへそれぞれグリースガン3発か4発ほど補充を行うこと。そして1600kmごとに、ギアボックスとデフのオイル量、ブレーキのマスターシリンダーとSUキャブレターのダッシュポットの状態を確認すること。そうそう、プロペラシャフトのジョイントにもグリース補充が必要だ。

また4800kmごとにこんどはエンジンオイルの交換、ディストリビューターとダイナモの軸の潤滑。そしてコンタクト・ブレーカーのロッカーアームの軸にも軽くグリースを塗り、電気式燃料ポンプの状態も確認しなければいけない。さらには、9600kmと19200km時点の項目も控えている。

今ではDIY自体がほぼ不可能に

こうなるとオーナーが自分で整備する経済的利点はおおきい。そういうDIY整備の手ほどきをしてくれる雑誌もたくさんあったし、整備技術の夜間講座だって珍しくなかった。

それにひきかえ電子技術の塊になったいまのクルマでは、DIY整備自体がほとんど不可能になってしまった。メーカーの診断ソフトが入ったノートパソコンをクルマのオンボード診断ソケットにつないで不具合を診断するのが普通だし、それでそのまま直してしまうこともよくある。

話は戻るが、昔の取説にしても腐り落ちたサイドシルに新しい部品を溶接する方法までは教えてくれなかった。新聞紙とボディ補修キットでつぎはぎして直せるというデマにまんまと欺されたひとも多かったことだろう。

30年ほど前、いやクルマによってはもっと最近まで、1台のクルマの寿命をもっとも左右したのは間違いなくサビだった。ボディの主要部分が侵されると、その修復費用が見あわなくなってしまうのだ。

だから機械部分の整備と同じで、クルマの下に寝そべってはサイドシルを削ってヤスリをかけて塗装しなおす、あるいはもっと状態が悪ければ新しい部品を溶接してもらうのも、必要にせまられてのことだったのだ。

10万km程度で骨格が腐食

1960~70年代にかけて英国全土で雨後のタケノコのように増えた零細溶接業者は、ボディ下回りの溶接にとどまらず、BMCミニや1100のサイドシルやリアのサブフレーム取付部の補修、そしてフォードやヒルマンのストラットタワーの補修などもおこなっていた。

当時の廃車置き場を覗くと、大抵のクルマのオドメーターの数字はせいぜい10万km台の前半くらいだったはずだが、ボディ骨格の腐食でとどめを刺されたのがほとんどだった。まあエンジンのシリンダー内はオイルまみれで、ギアボックスのシンクロも役目を終えていたかもしれないが。

そのエンジンやギアボックス、そしてディファレンシャルやドライブシャフトの耐久性も、冶金技術の進歩や機械加工の高精度化ならびにオイルの高性能化によって、1950年代のクルマからは想像もできないほどに向上した。

同じことはボディの造りにもいえる。1928年当時、英国のほぼすべてのクルマはフレームの上に鉄とアルミと木材、ひいては布まで使ったボディが載る構造だった。泥、雨、そして道路に撒かれた塩はシャシーだけでなく木材にも有害だった。

金融商品の発達により買いやすく

プレス鋼板製モノコックボディの登場で使われる素材の種類は減ったかもしれないが、かわって溶接の継ぎ目から出てくるサビがますます問題となった。腐食につ良いボディをおおくのメーカーが造れるようになったのは、やっとここ30年ほどのことなのだ。

さて、クルマは一般に住宅に次ぐ人生で2番目におおきな買い物だが、メーカーや金融機関はユーザーの経済的負担を和らげようと(あるいは少なくとも先のばしにさせようと)、いろいろな支払い方法を考えだしてきた。そしてこれまでに述べた幾多の問題もものともせずにマイカーを夢見るひとびとも、喜んでそれらの恩恵を受けてクルマを手にいれてきた。

昔はよくツケや月賦などと呼ばれたが、その信用販売が普及すると新車販売は一気に加速した。一括でポンと買えるほんのひと握りのひとだけでなく、分割払いのおかげでみんなが買えるようになったのだ。

いま、英国では80%以上のひとが残価設定ローンでクルマを購入している。本来の代金のほんの一部をきまった期間だけ分割で払えば良いというこの気前の良い仕組みによって、純真だったはずのお客はより高価なクルマを志向するようになった。期間が終わればクルマの返却も可能だが、多くはまた新しくローンを組みなおす。

こうして手の届かなかったはずのクルマを買うひとが増えるにつれ、産業も成長しユーザーもより甘い蜜の味をたのしめるようになったのはまちがいない。

信頼性が格段に向上

それにクルマ自体も、われわれがオースティン・セブン・イングランド・サンシャイン・サルーンでロードテストをはじめた1928年とくらべれば手が届きやすくはなっている。

その当時セブンの価格は128ポンド(1万8000円)で、1934年の平均年収の67%に相当した。そしていま、セブンの遠い子孫といえる実用車ミニ・ワン3ドアの価格は1万5905ポンド(227万円)。平均年収2万7271ポンド(389万円)の58%だ。

また、新車を受けとってショールームを出たあとの話もかわった。

消費者の権利が拡大するとともにクルマの機械的な信頼性もあがり、またメーカー間の競争激化もあって、クルマに付随する保証も格段に手厚くなった。1970年代までは、勇躍マイカーを手にいれてもメーカー保証はせいぜい6カ月・1万kmほどで、おまけに腐食の保証などなかったのだ。

クルマ購入へのアプローチも、時代の流れで必然的にかわってきた。とはいえ、クルマそのものと支払い方法についてはだいたいがネットで情報を仕入れるのに、ほとんどのひとが依然として新車を正規販売店へ出向いて買っているのはちょっと意外な感じもする。やはりいざとなれば店頭で実物を確かめ、営業担当と向かいあった上で注文書にサインして買いたいのだ。

時代は変われど、変わらないものもあるということか。

安全面の進化

信頼性もそうだが、クルマの安全性はこのわずか40年(ここは90年ではない)でめざましく進歩した。

ボディ前後の衝撃吸収構造、シートベルト、グリップの向上したラジアルタイヤあたりが初期の救世主というところで、つづいて突起のないダッシュボード、エアバッグ、ABS、ESP、そして種々の電子安全技術と続く。

ボルボやメルセデス・ベンツのように安全を売り物にするメーカーも以前からあったが、はずみがついたのは米国の衝突安全基準や欧州のNCAP試験が適用されたここ数十年のことだ。

乗員ならびに対歩行者安全性は著しく向上したが、それとひきかえに車重とボディサイズは肥大の一途をたどることになった。おまけに安全のためとはいえ、皮肉なことに運転席からの視界は昔より損なわれてしまったのだ。

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