0-100km/h加速タイムは先代の半分以下!
日産自動車がEV(電気自動車)の本格的なレーシングカーとして「リーフ NISMO RC(以降RC)」を登場させ富士スピードウェイのドリフトコース(!)で試乗テストドライブを行わせてくれた。RCは同社の市販EV車・リーフのパワートレインやバッテリーパックを使用し、日産のレース部門を統括するニスモ社が制作。2011年に初期モデルを登場させている。試乗に先立つ概要説明では初期モデルをRC01、新型をRC02と差別化し進化の内容を明確に示してくれた。
RC02のもっとも特徴的なメカニズム的進化は2モーターの4WD仕様となったことだ! RC01が1モーターをミッドシップにレイアウトする後輪駆動のレーシングカーであったのに対し、4WD化を果たしたことは注目に値する。
その手法も斬新だ。市販モデルのリーフが搭載するEM57型モーターを前後に一機ずつ搭載する2モーター方式を採用。もちろん前後のドライブトレインは機械的には繋がっておらず、ミドシップにマウントするリチウムイオンバッテリーからVCM(ビークルコントロールモジュール)を介して統合パワー制御される。それにより前後駆動配分を自在に制御できる。基本スペックはSpec.1として、前後50:50のトルク配分にマネージメントされた上でシステム最高出力が発揮でき、ゼロ発進加速など動力性能を重視した設定となっている。この結果0~100km/h発進加速は3.4秒という俊足を誇りRC01の6.9秒から大幅にタイムアップしている。
Spec.2は45:55という配分でコーナリングを重視した設定としサーキットでの適合性を高めている。
ちなみにEM57型モーターの最高出力は120kw(163馬力)。Spec.1では前後2モーターがそれぞれ最高出力を発揮できるので120kw×2=240kw(326馬力)/1280Nm、spec.2だと220kw(299馬力)が放出されることになる。駆動モーターは倍加されたのに伴いバッテリーも増量され安全機能を追加するなどして対応させている。
前後に搭載される駆動モーターはそれぞれがリダクションギヤ付きLSD(リミテッドスリップデファレンシャル)に結合され、12000rpm回るモーターから最高速度220km/hを引き出すことに成功している(RC01は最高速度150km/hだった)。
その結果ニスモが袖ヶ浦サーキットで行った事前のテストでは1分10秒34のラップタイムを記録。RC01の1分15秒86を5秒以上短縮したという。またスリックタイヤを装着した参考タイム計測では、1分08秒18をマークし、これは同サーキットの新たなコースレコードとなった。
RC02は車体側も大幅に進歩している。外観デザインは新型リーフをオマージュしフロントグリルやルーフ、テールデザインなどを似せているが、どの角度から見てもカッコいい。車体は完全にカーボン化され、コクピットを中心にしたモノコック構造を取る。
また前後に駆動モーターを搭載するカーボン製のマウントフレームが結合されるが、これは前後共通化したもので、コストダウンと整備性向上を図ったものだ。このフレームはサスペンションマウントも兼ね前後Wウイッシュボーンにコイルスプリング/ダンパーユニットを水平マウントし、プッシュロッドで機能させる本格的な構造が採用されている。ロッカーアームを介してスタビライザーにも連結され、レース時のセッティング変更やメンテナンス性を向上させるなど、いかにもレースのプロフェッショナル集団であるニスモが手がけた仕上がりだ。
ニュルでのEV最速ラップも可能と思える性能
さて、いよいよテストドライブの時間だ。コクピットに乗り込みドライビングポジションを決める。シートは前後スライド可能でポジションは決めやすい。助手席も備えていて今後のイベントなどで同乗走行なども行われるのだそうだ。
バックスキンのステアリングには、カーボンマウントのスイッチングユニットと液晶モニターが備わる。モニターには車速とバッレリー温度、パワーコントロールレベルなどが表示される。パワーレベルは1~4まで選択可能で、4で最大出力が引き出せる。もちろん2ペダルでシフトレバーはない。ステアリングのパドルは現状ダミーだが、回生スイッチなどの機能が備わる可能性もあるだろう。
ステアリングのダイヤルスイッチをDに合わせると走行可能。アクセルを踏むと音もなくスルスルと動き出した。ステアリングは電動でパワーアシストされ、重くなく、軽すぎもしない。
徐々に速度を高めるが、最高速度が100km/hしか届かないコース設定のためダウンフォースは発揮されず、タイヤのグリップ感が乏しい。前後のLSDはフロントがワンウェイ、リヤは2ウェイとして加速旋回を考慮したセッティングとしている。ハンドルを切り込めば曲がるが、タイヤ温度も低くレーシングカーとしての走行領域まで試すことはできなかった。
直線区間ではパワーダイヤル最強の4まで試したが、最大トルクが瞬時に発揮され、強力な加速感に見舞われるものの車輪の空転は起こらない。トラクションコントロールやABSなどの電子制御系は一切備えていないが、4WDとしての基本的なトラクションの高さがモーターのトルクを余裕で受け止めているようだ。車体剛性は当然高く、バッテリー増量や2モーター化で1220kgまで車輛重量は増しているが、重心の低さと150mm延長されたホイールベースなどでコーナリング限界は高そうだった。
ブレーキは今回スチールローター製ディスクが装着されていたが、カーボンブレーキの用意もある。駆動モーターによる減速時回生も行っているが、市販車のようにブレーキ踏力に応じて回生力の強弱は行わず回生量は一定のままディスクブレーキで減速力は調整する。ハンドリングと車輛安定性を重視した結果のチューニングだ。
最高速度が220km/hまで引き出せるようになったことも本格的なサーキット走行をするのには重要なことだった。このリダクションギヤ付きトランスファーには前後さらにモーターを追加し水平対向2モーターを前後に備える4モーターまで理論的には可能だという。
RC02のバッテリー容量なら25分程度は全開が保てるともいう。とするとRC02による独・ニュルブルクリンク最速ラップアタックも見えてきそうだ。現状、中国のNIO EP9が6分45秒9というEV最速ラップを記録している。その壁は相当高いがニスモの技術力なら可能にしてくれるかもしれない。是非チャレンジしてもらいたい!
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