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700万円は高過ぎる? レクサスESに試乗して、その真価を確かめた。

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700万円は高過ぎる? レクサスESに試乗して、その真価を確かめた。

レクサスESが正式発表された。北米では1989年からずっと販売されている車種だから、まったくの新機種というわけではない。けれども、ESに乗ると、なんだが新しいセダンに乗っている気分になれる。それはきっと、新型ESが、数々の新しいことに挑戦しているからだろう。乗ればその進化が分かるし、実際にモノの良さも実感できる。デビュー当初の1ヶ月では、目標台数の16倍の5600台を受注したという景気のいいニュースも入ってきた‥‥。REPORT●森本太郎(MORIMOTO Taro) PHOTO●平野 陽(HIRANO Akio)/宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki)/神村 聖(KAMIMURA Tadashi)

 ご存知のとおり、いまセダン市場は厳しい。それはかのトヨタでも同様で、マークXやレクサスGSの存続が危ぶまれる噂も立っている。市場の縮小だけでなく、とくに同門のトヨタにはライバル車も多いのだ。新型ESでいえば、クラウン、カムリ、レクサスGS、LS‥‥。そして、アルファード/ヴェルファイアまで競合車リストに入ってくるはずだ。日産、ホンダが好きで、最初からスカイライン、フーガ、レジェンドに行く人はいるけれど、そうではない多くののユーザーが、結局、トヨタの中で競合する。

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 クラウンはESと同じく最新モデルで、価格も近いからもっとも競合するだろう。いまのクラウンは低重心の新プラットフォームの効果や、本当にクラウン?と感じられるほどステアリングの初期応答が鋭く、スポーティに走る。運転してみれば、クルマはやっぱりFRかなあ、と感じさせるものがあるのは確かだ。そもそも、いまはどのメーカーも新世代アーキテクチャーへの移行期であり、多くの新型モデルは、低重心で走りが良い、という特性をある程度デフォルトでもっている。セダンは最近押され気味だから、なおさらその利点である走りはどんどん磨きこまれる。結果、走りのいい新型モデルは実際に多いのだ。

 新型ESのプロフィールをおさらいしよう。スリーサイズは、4975×1865×1445mm。クラウンよりも65mm長く65mm幅広で、10mm低いプロポーション。全長5235mmのLSには及ばないとはいえ、堂々たる立派なサイズ感であることは間違いない。パワートレーンは、日本向けには直列4気筒2.5Lハイブリッドの1本のみ。2WD(FF)のみで、標準(=ES300h)、F SPORT、version Lのシンプルな3グレード構成である。価格はそれぞれ580万円、629万円、698万円となっている。カムリとの共通点性もあり、エンジンは4気筒、などという観点からすれば、割高な値付けだと感じる人がいるかもしれない。

 内外装を見ていこう。新型ES、なかなかにスタイリッシュだ。分かりやすく、やや乱暴に表現すると、フロントはLSに、リヤビューGSに似ている。そして、リヤフェンダーの盛り上がり感はハンパない。これは、5シリーズ以上ではないかと感じられるほどだ。ESはFF車だけれど「FR車のような力強さをスタイリングでも表現したい」と考えたことが重々推察される。インテリアは、新世代レクサスの共通項である単眼メーターレイアウトを中心に、質感高く、それでいて重々しさのない爽やかな印象のスタイリングだ。乗用車初採用となる“デジタルアウターミラー”装着車の場合、12.3インチの大型センターディスプレイ+デジタルインナーミラー+左右のピラー根元に鎮座する大型5インチモニター2個と、その画面の数に圧倒される。

 新採用スウィングバルブショックアブソーバー(F SPORT以外に採用)の効果か、version Lで走り出すと、乗り心地の良さ、滑らかさが印象的だ。そして、走りの面でもFRっぽく、という意図が感じられる。クルマが曲がっていく際に、回頭性の良さが演出されている、と感じられるからだ。新開発GA-Kプラットフォームを始めとする各部剛性の向上、低重心化など、(先代ESには乗ったことがないが)相当に進化しているはず、と想像できる。パワートレーンのフィーリングは、普段乗りでは必要にして十分という印象。パワーそのものよりも印象的なのは、パワーの出方が自然なことだ。旧来のとくにトヨタのハイブリッド車では、どうしてもアクセルと加速感が符合しないラバーバンドフィールに運転の楽しさを削がれることも多かったが、そうしたことがなく、フィーリング上のネガがないことが美点だ。

 試乗は街中+高速道路のみで、ワインディングを試したわけではないけれど、新型ESに乗ると、とにかく新しいセダンに乗っている感じがするのは不思議だった。ACCまで含めた多方面にわたるハード面の磨き込みや進化、新鮮さがあるだけでなく、FRに固執しない、という考え方自体の変化(新しさ)、そしてデジタルアウターミラーの新感覚などいろいろな要素を含めて、感じられた新鮮感なのだと思う。

 ESはまた、絶妙にいいトコ取りした一台だ。ESは、LSと見紛うほどに堂々たるスタイリングであるにも関わらず、LSのだと意図せずとも出てしまう“エラそう感”がない。そして価格は半分以下。GSやクラウンのようなFRにはもちろん独自の魅力があるけれど、“そんなことはどっちでもいい”という気持ちになれるのがESの独自のポジションだ。カムリとの近似性を気にしている人もいるかもしれない。250万円も違うのだから、おトクさという尺度で選ぶのならカムリの方が適当だろう。ただESは化粧をしたカムリなのかと言われれば、それは違う。同じエンジンを積んでいるのは事実だが、見た目も、走った印象も、運転しているときの気分も違う。当たり前だけれどESはまったく別のクルマであり、ESにしかない新たな価値観を提供できる一台であることは確かだ。

 ESは、堂々とレクサスバッジをつけながらも、LSのようにその威光を誇示しない。という控えめな部分があって、そこがまた、この時代の知性派にマッチするのではないだろうか。先代までだは、走りにもスタイルにも色気が乏しかったかもしれない。それらを手にしたいま、“中身はとても濃いのに、それをひけらかさない高級車”というのがESならではの個性だ。

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