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自動車史で最後を飾ったクルマ 前編 MTのフェラーリ、空冷ポルシェ ほか

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自動車史で最後を飾ったクルマ 前編 MTのフェラーリ、空冷ポルシェ ほか

われわれが目にする数多くのクルマは、舞台裏で改良を重ねモデルチェンジを行い、少しでも多くの支持を得られるように奮闘した結果だといえる。例えば7代目フォルクスワーゲン・ゴルフは、いずれ8代目に交代するだろう。レンジローバーも、モデルを増やしながら連綿と進化を続けている。

その一方で、自動車の歴史の中に刻まれつつ、生産を終えるモデルも少なくない。どんなものでも生き残れるほど、自動車はシンプルなものではないのだ。今回はそんな、生産終了に追い込まれたクルマや技術などを紹介してみたい。どんなに忘れられなくても、もう新品では手に入れることができない、愛すべきものたち。

初試乗 新型ポルシェ911(992型)プロトタイプ わずかだが着実な進歩

インターナショナル・ハーベスター・パッセンジャー・ビークル(IH):スカウトII(1980年)

財政難と、不景気による雇用者との闘争で悩まされたインターナショナル・ハーベスター社。1980年にはトラクターなどの農業用機械とバスに生産を絞る目的で、ピックアップやSUVなど、乗用車の製造部門を廃止してしまう。

経営者は業績が急速に悪化することを想定しておらず、3代目スカウトを含む、SUVなどの乗用車の計画を立てていたほど。スカウトIIIを目指して、1979年にひっそりと登場したSSVコンセプトは、スカウトIIのオフロード性能を向上させつつ、1980年代の流行に合わせて、ボクシーなエクステリアデザインをまとっていた。

インターナショナル・ハーベスター社は、テネコ・ナビスター社の一部として現在も残っている。

写真は、スカウトII

米国で販売されたキャブレター車:いすゞ・ピックアップ(1994年)

1990年前後にかけて、米国で販売されていたクルマの殆どが、キャブレターからフュエルインジェクション(燃料噴射)に切り替えられた。新しい環境規制に対応させるためには、変更が不可欠だったといえる。ジープ・グランドワゴニアとフォード・クラウン・ビクトリアは1991年までキャブレター式のV8エンジンを積んでいたが、いすゞはさらに粘った。

エントリーグレードのピックアップトラックにフュエルインジェクションを採用したのは、1995年になってからだった。

V型4気筒を搭載したクルマ:ZAZ 968M(1994年)

V型4気筒エンジンを積んだモデルを生産していたメーカーは数少ない。ランチアとフォード、サーブ、ZAZ、そしてAMCだけだと思う。

サーブはフォードが設計したV4をサーブ96に搭載し、1980年まで生産していたが、ウクライナのメーカーZAZ(ザポリージャ自動車工場)は、さらに長く生産を続けていた。V4エンジンを搭載した968Mは、1994年まで生産されていた。ドイツのNSUプリンスにも似たこのモデルは、とうの昔に賞味期限切れになっていたが、安価で丈夫、修理もしやすかったこともあり、最後まで人気は高かったようだ。

2018年現在では、V4エンジンはバイクと、レーシングカーで見ることができる。ポルシェはルマン24時間レースで優勝した919ハイブリッドに、V4エンジンを搭載。レース専用のプロトタイプ・カテゴリーだが、後にニュルブルクリンクでも驚異的なラップタイムを出している。しかしポルシェは、量産車にV4エンジンを採用する予定はないようだ。

空冷式ポルシェ:993(1998年)

993型のポルシェ911は、ポルシェフリークにとっては夢のクルマかもしれない。空冷式の水平対向6気筒エンジンを搭載したモデルだからだ。丸いヘッドライトと、テールが下がったシルエットは、ポルシェ911の家系に属することが一目瞭然。1960年代、エンジンの位置が間違い(ロング・エンド)と批評されたクルマは、今でもポルシェファンに愛されている。

1997年に登場した996型の911は、水冷式の水平対向6気筒になったうえ、自動車評論家からも市場からも批判を受けることになった、ボクスターに似たフロント周りのデザインをまとっていた。最後の空冷モデルとなった993型は、2018年の今ではコレクター・アイテムになっている。

AUTOCAR JAPANの編集部にも、すっかり空冷ポルシェの虜になったひとがいることは、熱心な読者ならご存知だろう。

米国でカセットデッキを搭載していたクルマ:レクサスSC(2010年)

米国で販売されていた中で、最後までカセットテープ・デッキが選べたクルマは、プラスチック製のホイールキャップに布製のシートが付くような、安価なモデルではなかった。 それは、2010年のレクサスSC430。日本のメーカーがメルセデス・ベンツSLに対抗するために生み出した、高価で堂々としたコンバーチブルだ。

レクサスは2010年以降、カセットテープ・デッキの供給も止めている。ニューヨーク・タイムズは2011年に、もはやカセットテープ・デッキを搭載するクルマが、オプションとしてもなくなったと、報じたほど。

サーブ:9-4X(2010年)

サーブは生き残ろうと、限られた環境の中で最後まで奮闘していた。2010年、ロサンゼルス・モーターショーで、新しいモデル9-4Xを発表したのだ。生産は翌年、ジェネラル・モータースのメキシコにあるラモス・アリスペ工場で開始されたものの、同2011年末に、サーブは倒産してしまう。サーブの博物館によれば、800台以上がすでに生産されていたそうだ。

ポンティアック:G6(2010年)

深刻な経営難に堕ちいていたジェネラル・モータース(GM)は、2008年にいくつかのブランドを消滅させることを発表した。翌年、サターンをなくし、サーブは売却。ハマーも消えることとなった。しかし、当時のプレスリリースによれば、ポンティアックはニッチブランドとして生き残るとされていた。

しかしその後、ジェネラル・モータースは再生計画を立てたものの、ポンティアックは採算が合わないとされ、サターンと同様に消滅されることとなる。ポンティアックとして最後に生産されたクルマは、2010年1月、白のG6だったそうだ。

シャシーとボディが独立したアメリカ車:フォード・クラウン・ビクトリア(2011年)

1970年のはじめ、米国の自動車メーカーは、フレームとボディとが別々のセパレートフレーム構造から、軽量なモノコック構造(ユニボディ構造)へと変更をはじめる。1990年半ばには、ほとんどのモデルがモノコック構造となっていたが、フォードは粘った。可能な限り、既存モデルを活かしたかったのだろう。

最後まで残ったのはクラウン・ビクトリア。米国のパトロールカーやタクシーとして愛用されたモデルで、2011年まで生産された。

V8エンジンを積んだボルボ:XC90(2011年)

V8エンジンをボルボとヤマハが共同で開発し、XC90やS80などの大型モデルに搭載していたことをご存知だろうか。日本製の4.4ℓエンジンは、当初315psと44.1kg-m発生した。2005年に生産が開始され、ガソリン価格が安く大排気量のエンジンの人気が根強かった米国では好評だった。

中国のジーリーがボルボを買収し、小排気量化が進められる中で、V8エンジンを搭載したS80は2010年まで続いた。さらにXC90には、ヤマハが生産を終了する2011年まで搭載されていた。現在、ハイパフォーマンスモデルを生産していないボルボだが、もし社外製のV8エンジンを搭載したモデルが発表されたら、相当の衝撃が走るに違いない。

マニュアル・トランスミッションのフェラーリ:カリフォルニア(2012年)

フェラーリでマニュアル・トランスミッションを選択できたのは、エントリーグレードの2011年式カリフォルニアが最後。7速デュアルクラッチATに代わって、美しくシフトゲートが切られた6速マニュアルが選べた。しかし、実際に選択したひとは極めて少なかった。メーカーも定かではないようだが、マニュアルを搭載したカリフォルニアは3~5台のみだったらしい。

既存モデルとしては、もはやマニュアル・トランスミッションを搭載したフェラーリを注文することはできない。しかし、充分なお金があれば、話は別。開発に必要な資金を提供すれさえすれば、ペダルがみっつ並んだマニュアルモデルも、喜んで製造してくれるだろう。

後編へ続く。

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