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「民主主義の高級車」キャデラックCT6は最もリーズナブルなハイエンドサルーン

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「民主主義の高級車」キャデラックCT6は最もリーズナブルなハイエンドサルーン

日本上陸からすでに2年が経過したが、まったく新鮮さを失わないどころか、デビューしたての如き鮮烈なイメージを放ち続けているキャデラックCT6。いま、あらためてCT6に乗ることで、その魅力を再確認してみたい。TEXT&PHOTO●小泉建治(KOIZUMI Kenji)

自分にも似合うかも知れない……と思わせてくれる

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 のっけから結論めいていて恐縮だが、とにかくいろいろと驚かされたクルマだった。発売から2年も経っているとはいえ、実は筆者はCT6に乗るのは初めてだった。好意的な評判はあちこちから耳にしていたから今回の試乗をとても楽しみにしていたのだが、予算1000万円でサルーンを買うのなら、もはやCT6の一択しかない、と確信するまでに至ってしまったのだ。

 まず見た目だが、全長5m越えの立派な体躯ながら、オッサン臭さとか、権威主義的な匂いがまったく感じられない。しっかり稼いで、オマエもいつかここまで来いよ、と言われているような気になってくる。
 
 GMジャパンの若松社長が「階級社会の欧州ではなく、自由と平等のアメリカならではの、いわば『民主主義が生んだ高級車』がキャデラックなのです」と仰っていたが、まさに言い得て妙だなと思った。

 個人的な話になってしまうが、メルセデス・ベンツSクラスやBMW7シリーズなどには、経済的な壁だけでなく、どこかしら精神的な壁というものを感じている。「仮に買えても、どうしたって自分には似合わない。自分ごときが買うべきではない」と。しかしこれだけのフルサイズ高級サルーンでありながら、CT6には「仮にお金持ちになったらこいつに乗ればいい。けっこう似合うかも、俺」なんて勘違いも甚だしい想像を膨らませてしまうのである。

 妄言はこれくらいにして、もう少し冷静に車両を観察していこう。

 まずディメンションだが、全長は5190mmとかなり長いが、全幅は1885mmと、今どきのハイエンドサルーンとしてはほどほどに抑えられている。かつて筆者が乗っていた(もちろん中古で購入)フルサイズ2ドアクーペのエルドラド(1995年式)は全長が5110mmで全幅が1920mmだったから、ほとんど変わっていない。つまり肥大化が著しい欧州車と違って、キャデラックは適正なサイズを守り続けているのである。

 そして「全長はそれほど長くないのに全幅はビックリするほど広い」ことが当たり前の欧州勢と比べると、わりと縦長なプロポーションであるとも言える。これが高級車らしい伸びやかなフォルムであると日本人である筆者に感じさせているのかもしれない。トヨタ・クラウンも全長4910mmに対して全幅1800mmと縦長プロポーションを守り通している。

 全長と全幅の比率に関して欧州と日米で考え方の違いがあるのは、それぞれの交通事情に大きな理由があるのだが、冗長になるのでここでは割愛させていただく。

 縦長のテールランプはキャデラックの伝統だ。1990年代に日本でも人気を博したフルサイズ2ドアクーペ、エルドラドの美しいリヤビューは今でもハッキリと脳裏に浮かぶ。

正確なハンドリングと、掴みやすい車両感覚

 室内に入ると、そこはまさにアメリカン・ラグジュアリーの世界である。レザーとウッドを多用するのは世の高級サルーンの常かもしれないが、キャデラックのそれは陽気さを伴うというか、乗り手を身構えさせることがない。もちろんロールスロイス、ベントレー、ジャガーなどの、座った瞬間に思わず姿勢を正してしまうような佇まいも素敵だし、ドイツ製サルーンの「さぁ、乗ったるぜ!」と気合いが入る雰囲気も捨てがたい。だが、ドライバー自身がリラックスできることもハイエンドサルーンの大切なファクターであると考えれば、CT6の開放的なイメージは大きなアドバンテージになり得るだろう。

 走り出すと、見た目の実にアメリカ車らしいイメージとはいい意味で裏腹の、スポーティで快活な身のこなしに驚かされる。「巨体を感じさせない走り」とは近ごろ多用されるフレーズだが、CT6のためにとっておくべきだったとひとりで勝手に反省してしまう。ステアリングも重めで手応えがあり、かつての片手でクルクル……なハンドリングとは隔世の感がある。

 試乗会場となった河口湖の周辺はタイトでツイスティなコーナーが続き、ときおりすれ違いにも気を遣う箇所が現れるが、とにかくストレスを感じない。前述の1885mmに抑えられた全幅の恩恵もあるだろうか、それよりも正確なハンドリングと、エッジの効いたボディによって車両感覚が掴みやすいことのほうが大きく影響していると感じた。

 それでいて、直進時にはヘビー級らしくしっかりと落ち着いたマナーを見せる。できれば高速道路を走ってみたかったが、直進安定性はかなりのものだろう。まぁ、そうでなければ北米でプレミアムブランドを名乗ることなどできないだろう。
 
 乗り心地はかつてのボワンボワンした柔らかさではなく、当たりこそソフトだがしっかりとダンピングの効いたもの。路面のゴツゴツは乗員に伝わってくるものの、しっかりと雑味が濾過されているから不快には感じない。

 途中、同行したライターに運転を代わってもらってリヤシートにも短時間ながら座ってみたが、こちらの乗り心地も良好で、路面の悪い道をけっこうなスピードで楽しんでいたようだったが、リヤシートの筆者は携帯電話で話しながらメモを取るのも楽勝だった。

 そうそう、オーディオがやけに充実しているのもキャデラックの隠れた伝統だ。CT6にはBOSE社のいちブランドである「PANARAY」のシステムが搭載されているが、34個(!)ものスピーカーが奏でるサウンドはゴキゲンとしかいいようがなく、ノイズキャンセル機構も手伝って、まさにライブ会場にいるような臨場感を味わうことができる。キャデラックとBOSEのコラボレーションの歴史は古く、昔からファンの間では評判だった。

 フロントシートのみならず、リヤの左右2席にもマッサージ機構がついているのも、安楽さをトコトン追求してきたアメリカ車ならではだ。また、後方視界をデジタル映像でルームミラーに映し出すリヤカメラミラーも標準装備されている。通常のミラーの3倍の視野をカバーするスグレモノだが、直前まで50~100mくらい先を見ていた目の焦点を瞬時に30~40cmほどの距離にあるルームミラーに合わせるのが難しく、通常のミラーモードに戻してしまった。これはCT6の問題ではなく、 リヤカメラミラーという商品そのものと筆者の好みとの問題だが。

 そんなこんなでCT6、アメリカを代表する高級ブランドに相応しい上質さ、現代のプレミアムサルーンに求められるスポーティさ、そしてキャデラックならではの人間味をすべて高次元で兼ね備えていたことが今回の試乗でしっかり理解することができた。

 もともと筆者がキャデラック贔屓ということは差し引きしなければならないのかもしれないが、これで1000万円を切る価格というのはやはりリーズナブルと表現するべきだろう(筆者の懐具合はまた別の話……なんてわざわざ説明する必要はありませんね)。価格ももちろんだが、多くの点においてドイツ勢とは違った魅力に溢れたプレミアムサルーンだと感じたのだが、みなさんの判断はいかがだろうか?

キャデラックCT6 プラチナム
全長×全幅×全高:5190×1885×1495mm ホイールベース:3110mm  車両重量:1920kg エンジン形式:V型6気筒DOHC 総排気量:3649cc ボア×ストローク:95.0×85.8mm 最高出力:250kW(340ps)/6900rpm 最大トルク:386Nm/5300rpm トランスミッション:8速AT サスペンション形式:Ⓕダブルウィッシュボーン Ⓡマルチリンク  ブレーキ:ⒻⓇベンチレーテッドディスク タイヤサイズ:ⒻⓇ245/40R20 車両価格:999万円

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