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トヨタ・スープラ・プロトタイプ初試乗 完成度90%、既にケイマンに肉薄

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トヨタ・スープラ・プロトタイプ初試乗 完成度90%、既にケイマンに肉薄

もくじ

どんなクルマ?
ー BMWとの開発に7年
どんな感じ?
ー 車内に感じとれるBMWらしさ
ー 乗り味はすでに好印象
ー もう少し硬くしたいダンパー
ー 気持ち良いエンジンとパワーに勝るシャシー
「買い」か?
ー ケイマンの牙城を崩せるか
スペック
ー トヨタ・スープラ・プロトタイプのスペック

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どんなクルマ?

BMWとの開発に7年

ボディには偽装のラッピングが施され、ダッシュボードにも、地の厚い布がかけられ覆われている。生産までにはまだ8カ月もの時間があり、歴然とプロトタイプの様相だ。クルマに近づく時は必ず担当者も一緒に近寄って来るが、スペックなどの数字に関する質問には答えてはくれない。

彼らが主張するには、数字は重要なことではないという。 でも、重要でない情報なら、なぜ教えてくれないのだろうか。今時点で重要なことは、ドライビングフィールがどんなものなのか、ということだという。

そのドライビングフィールは、今思い返しても少し興奮する。想像以上に速かったのだ。試乗会には4台のプロトタイプが姿を見せていたが、多くのトヨタの関係者やマネージャーに対しても、デモンストレーションを行っていた。

BMWとトヨタが協働すると発表されたのが2012年。情報が限られる中、スープラにとっては、あまり好ましい情報には思えなかった。トヨタ単体だったとしたら、生み出すのに7年も必要だっただろうか。

確証の取れているスープラの情報は多くはない。3.0ℓの直列6気筒エンジンを搭載しながら、GT86よりも重心が低い。BMWを尊重してか、ZF製の8速ATを介して、後輪を駆動。BMW M製のアクティブ・リミテッドスリップデフも採用される。BMW Z4と同様に、前後の重量配分は50:50。正確な数字はわかっていないが、おそらく最高出力は344psあたりで、最大トルクは48kg-m前後だろう。車重は1500kg程度になるはずだ。

ボディパネルは鉄とアルミニウムが部位によって使い分けられ、レクサスLFA並みのボディ剛性を確保。ホイールベースはおよそ2440mmで、トレッドは1600mm前後だろう。グレードとしては、高性能版が先に発表され、低いグレードのモデルは後発となるはず。トヨタへの注目を保つため、生産が開始される来年の5月以降にも、情報が小出しに発表されることになる。偽装が外されたクルマは、2019年1月のデトロイト・モーターショーでお披露目される予定。

今回加える正確な情報があるとすれば、運転が楽しい、ということだけだ。だとしても、読者も気になるはず。

どんな感じ?

車内に感じとれるBMWらしさ

今回の試乗は、マドリード郊外での2時間。ルートには都市部もあり、高速道路も走り、田舎道も飛ばせたが、グリップをいっぱい効かせたサーキット走行も用意されていた。

試乗の契約上、ほかの雑誌の取材班と一緒の行動となり、しかもスープラにはトヨタの関係者も同乗していた。一方がスープラをドライブしている間、トヨタGT86でもう一方が追走するという状況で、仕方なく真面目に、時間通りにスタート地点に戻らなければならなかった。

はじめに、わたしがスープラに乗る。厚手の布で偽装が施されているにもかかわらず、インテリアの雰囲気は明らかにBMWっぽい。スイッチ類はBMWの質感だし、足と腕を伸ばし気味に座るドライビングポジションも、シフトノブもBMWらしさを感じる。気になるのはわたしだけだろうか。

BMW製のiドライブ・マルチメディアシステムは、トヨタ製のものより操作性が優れているが、インスツルメントパネル周りはトヨタ風に変更されている。ステアリングホイールのリムの太さはBMWより細く、円形。それぞれ、メーカーなりのコダワリがあるのだろう。

スープラの着座位置は低い。長方形のフロントガラスの見切り位置は高く、弧を描いたボンネットが目前に広がり、距離感がつかみにくい。優れた視界でコーナリング時のラインも読みやすい、ポルシェ718ケイマンより、ボディサイズは大きく感じられる。エンジンがフロントに載っていることも、明確だ。

乗り味はすでに好印象

エンジンを含むドライブトレインは洗練されたものだった。

まだ細かな調整は残っていると思うが、現時点ですでに好印象。BMW製となる6気筒は常にスムーズで、ターボ過給されているのが信じがたい。ドライブモードはスタンダードのままでも走りはスムーズで、現代の自動車らしく、レスポンスも悪くない。しかし、低回転域からのトルクがやや強すぎる印象はある。アイドリングストップ機能は働いていなかったが、おそらくオフになっていたのだろう。

スポーツモードボタンを押すと、スロットルと変速のレスポンスが鋭くなる。シフトパドルが付いているから、自分で操作すれば、より望み通りのタイミングでの変速も可能。マニュアル・トランスミッションがラインナップされるかどうか明示はされていないが、トヨタは嫌いではないはずだ。

乗り心地は、同じタイヤサイズを装着したBMW M4よりも優れている。銘柄は特注のミシュラン・パイロットスーパースポーツで、フロントが255/35R19、リアが275/35R19。通常の固定式ダンパー(パッシブ)が標準装備となるが、テスト車両にはアダプティブダンパーが装備されていた。

スポーツモードに変えることで、ステアリングが重くなるのに合わせて、乗り心地も硬くなるが、日常的な走行には必要ないだろう。柔軟性は全般的に悪くはないものの、ボディ重量が軽くなるような印象は得られていない。

一般道での走りは安定性に優れ、才能の高さを伺わせてくれた。技術者によれば、一般道での開発段階は90%ほどの進展状況とのことだが、納得できる仕上がりだといえる。市街地や高速道路での振る舞いは、充分煮詰められたもので、あえていうなら、BMW M2コンペティションやアルピーヌA110より好印象だった。もしかすると、ケイマンに並ぶかもしれない。

もう少し硬くしたいダンパー

スピードを上げられる郊外の道でなら、標準のサスペンションが持つ限界領域にまで迫ることができる。

ステアリングはスムーズで、漸進的。しかし現時点では、シャープさに関して、幾つかのライバルと目されるフロントエンジン・レイアウトのクーペよりも穏やかなようだ。また、718ケイマンの持つ余裕のある俊敏性という部分にまでは至っていないと感じた。

コーナリングスピードが上がるごとにボディロールも増加するから、より硬いダンパーが欲しくなる。コーナーの出口でスロットルを踏み込んでいくと、ディファレンシャルが加速に構えるものの、マスのあるボディは外へ流れて行こうとしてしまう。ケイマンでは感じられない動きだと思う。

ダンパーを締め、サスペンション・スプリングへの負荷を軽くすることで、柔軟性を犠牲にすることなく、安定感があり楽しめるバランスが得られるはず。アンダーステアやオーバーステアが出はじめる感覚は、アストン マーティン・ヴァンテージに似ているように感じられる。しかし、BMW M2の方が、より素直でコントロールしやすいだろう。M2コンペティションはさらにその上を行くけれど。

スープラから追走車のGT86に乗り換えると、マスの小ささが生むアドバンテージを実感させられる。GT86のエンジンはスープラほどスムーズではないが、しっかり回せば充分なスピードも出せる。大きなマスを持ったクルマでは味わうことができない、ステアリングに伝わる繊細なレスポンスを楽しむことができる。

気持ち良いエンジンとパワーに勝るシャシー

もちろん、スープラにはスープラなりの楽しさもある。

エンジンは気持ちよくスムーズで、幅広い転域に渡ってレスポンシブ。しかも回りたがり。吸気音に関しては、まだ手を加えたいとトヨタの技術者は話していたが、人工的に車内に響かせるパイプなどを用いない、リアルなサウンドを狙っているのだろう。ケイマンとは異なり、追い越し場面などでの高回転域でのエンジン音は、すでに心地良い。スポーツモードでは、エグゾーストのフラップが開く。

加えてシャシーは明らかにパワーに勝っている。サーキットに出ると明確なのだが、スポーツモードの状態では、速度域が上がっても、一般道と同じバランスを示してくれる。サスペンションは優れたコントロール性を提供し、縁石やくぼみなどでの柔軟性も高い。BMW M2コンペティションなら底打ちするような場面でも、ケイマンのように、スープラはいなしてくれる。

コーナリングの俊敏さでは、ケイマンや、限られた記憶ながらアルピーヌA110ほどではないにしろ、エンジンの搭載位置はさほど関係ないということがわかる。

スタビリティコントロールは、完全なオフではなく、若干のスライドを許容する状態。ステアリングフィールは、情報量が豊富とはいえないもののスムーズで、アンダーステアに陥る感覚もわかりやすい。オーバーステアへ持ち込むことも難しくなく、機会が許せば深いドリフトアングルも決められそうだ。もちろん、トヨタの関係者が同乗しているから、今回のおふざけはほどほどにした。

わたしのお気に入りのハンドリングを備える、アストン マーティンV12ヴァンテージSやトヨタGT86などは、より生々しい感覚を持ってはいるが、スープラが披露してくれたバランスと共通すると感じた。

「買い」か?

ケイマンの牙城を崩せるか

まだクルマの完成度は90%。気温の高いサーキットでも充分に楽しめ、攻めた走りをしても、スチール製のブレーキディスクが音を上げることもなかった。本領を発揮すれば、ハンドリングバランスに優れた、楽しさに溢れたドライビグを一層味わえるだろう。

トヨタは、スープラを丁寧に仕上げようとしている。ドライバーが求めるだけ、答えてくれるロードカーとして。もしかすると、アルピーヌA110やBMW M2コンペティションの方が、答えは確かかもしれないが、スープラも悪くはない。加えて日常的な利用の面では、ポルシェ718ケイマンに近い優れたものを備えている。興味がわかない訳がない。

数年前、ポルシェ・ケイマンはライバルを寄せつけない存在だった。それに対し多くのひとが、読者もおそらく、立ち向かえるクルマの登場を待っていたはず。わずかな試乗ではあったが、その存在になれる可能性が一番高いクルマこそ、トヨタ・スープラなのではないかと、実感した1日だった。

トヨタ・スープラ・プロトタイプのスペック

■価格 5万ポンド(720万円・予想)
■全長×全幅×全高 –
■最高速度 273km/h(予想)
■0-100km/h加速 4.8秒(予想)
■燃費 10.9km/ℓ(予想)
■CO2排出量 225g/km(予想)
■乾燥重量 1500kg(予想)
■パワートレイン 直列6気筒3000ccターボ
■使用燃料 ガソリン
■最高出力 344ps/5500rpm(予想)
■最大トルク 48.3kg-m/2500rpm(予想)
■ギアボックス 8速オートマティック

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