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新型メルセデス・ベンツGクラス試乗記 スパイス系の香りのなかに甘さも含んだ香水のよう

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新型メルセデス・ベンツGクラス試乗記 スパイス系の香りのなかに甘さも含んだ香水のよう


Gクラスは新型に変わる、変わると言われながら、メルセデスはなかなかモデルチェンジに踏み切らなかった。それは、従来モデルの人気があまりにも高かったから・・・というが、“裏”はとれていない。しかし従来モデルと概ねの印象を変えずに登場した新型Gクラスを見て「この手があったか」と膝を打つつとともに、感心と関心を抱くのは私だけではないはずだ。<レポート:飯田裕子/Yuko Iida>


従来モデルとは、一見あまり変わらぬように見えて、よく見ればボディサイズはベースモデル比で全長+53mm、全幅+64mm、全高は+15mm、ホイールベースは+40mm大きくなった。おかげで居住スペースはとりわけリヤシートの足元が広がっている。G550の全長は4817mm(スペアタイヤ込み)、全幅1931mm、全高1969mm、AMG G 63の全長は4873mm(スペアタイヤ込み)、全幅1984mm、全高1966mmとなっている。

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しかしテールゲートのスペアタイヤ搭載、ボタンを押して引っ張るタイプのドアハンドル、ボディサイドでクラシカルな存在感を強めるプロテクションモール、蓋形のボンネット、そのボディ面左右に配された突出したウインカーなど、Gクラス“らしさ”を漂わせるそれらを新型は継承している。

角ばったボディのシルエットもその一つであるが、スクエアに見せていたフラットなフロント、サイド、リヤウインドウもリヤウインドウを除いて微妙な曲面を描いているし、ウインドウスクリーンのゴムシールとウインドウの段差も極小でフラットに見える・・・。

これまでの印象を大きく変えずに最新のクルマづくりが施されているという点では、ボンネット左右のウインカーランプは歩行者保護の対策として、いまどきこの突起はありえないのだが、万一の際にはこの突起が下がる仕組みになっているという。「そこまでしてこの佇まいを守りたいのか」。そして、そのためにウインカーランプ一つにさえ、そのような細工を施すとは・・・と思うと、一層、新型Gクラスの開発への想いが伝わるようではないか。


車重は約170kgの減量をしている。ボディに軽量&高剛性の素材を適材適所に採用しているのはもちろんだが、このモデルで特筆すべき点としてフレームはやはり外せない。今どきのSUVはモノコック構造が主流だが、メルセデスは従来モデル同様のラダーフレームを新型Gクラスのために新設計。板厚3.4mmの鋼板を「ロ」の字に成型するなどして採用し、ねじれ剛性も55%アップしているという。

さらに新開発の専用サスペンションは、フロントがダブルウイッシュボーンで、リヤがリジッドアクスルを組み合わせ、フロントロアアームはラダーフレームに直付けされている。ダブルウイッシュボーンと言えば、乗用車のなかでもスポーツカーやスポーティな上級モデルに採用される、いわゆるマルチリンク式サスペンションだが、そんなものを高級でオフロード走行を得意とするこのモデルに採用して大丈夫なのか?と心配になるのはきっと筆者だけではないだろう。

が、AMG社と共同開発されたというこの専用サスペンションは、その取り付け位置の熟慮はもちろん、厳しい走行テストをクリアしたオフローダーである。まさにGクラスのために、開発されたダブルウイッシュボーンなのだ。メンテナンス性やそのコストを考慮すれば、よりシンプルでアナログチックな構造を選ぶことももちろん可能だろうけれど、新型Gクラスの新しい発想とチャレンジとして捉え、実際に走らせてみれば、これは新型の進化のハイライトの一つになることは間違いない。

インテリアも今昔融合

その点で言えば、インテリアはより“今”のメルセデスの世界観や思想を惜しまずに投入されていると言っていいだろう。いや、正確に言えば、“今昔の融合”。Gクラスのドア(銀色の丸いボタンを親指で押してノブを引く)を開け、そして「ガ(バ)チャンッ!」(決して誤字ではありません、本当にそんな音がとても大きく響くのです 苦笑)と閉めるそのスタイルと感触は従来モデルの雰囲気を踏襲。

助手席前のグラブハンドルや3つのデファレンシャルロックを操作するスイッチなども継承。しかしインスツルメントパネルは、12.3インチの高精細ワイドディスプレー2枚が1枚のガラスカバーの下で、あたかも一枚もののように見え、センタコンソールはタッチパッド式でダイレクトな操作が可能。また、Gクラスのエクステリアのアイコンでもある、円形ヘッドライトの形状を室内左右のエアアウトレット(ヌメっとした触感と艶、操作感もいいっ!)に採用。


他にもウインカーをイメージしたスピーカーなどにより、Gクラスらしさを室内でも感じることのできるデザインを取り入れていた。しかし、今昔融合ぶりはまだ続く・・・。運転席に座れば、フラットでスクエアなフロントウインドウ越しに見える風景は“The Gクラス”。ダッシュボードの奥行が極めて少なく、悪路走行ではボディの見切りも重要なのでボンネットがくっきりと見渡せる。コックピットからの視界が造る世界は変わらず、唯一無二の世界観が得られるのは間違いない。


走行フィールの進化

ドライブフィールの変化、いや進化がもっとも感じられたのはオンロード走行だった。何より、Gクラスの直進安定性と乗り心地の良さはラダーフレームを採用する“ヨンク”であることを疑いたくなるほど。


G550に搭載される422ps/610Nmを発揮する4.0L V8型直噴ツインターボエンジンは、9ATと組み合わされ、加速のマナーも良く、一方で欲しいトルクをドライバーのアクセル操作に応じてどこからでも思い通りに得ることができる。

シットリと野太い“音”も発するエキゾースト音も、従来モデル以上にトルクの厚みをより効果的に伝えてくれるだろう。おかげでアクセルワークが楽しいと思えるのだが、それは前述のような扱いやすさが得られるからだ。静粛性も非常に高く、オンロードを走行しているだけなら、クラシカルなムードが内外装で楽しめる最新のエクスクルーシブなSUVとしてドライブが楽しめる。

というのも、コーナリング中のボディの自然な動きはスポーツハンドリングにこだわるSUVのソレとは異なるが、ボディのロールやハンドルを切ったあとの応答遅れもほとんど無いレベルで、気にならない。むしろ、この大きなボディがドライバーの操作に対し、ゆったりと素直な動きをする。そうした一連の動きには大人の貫禄にも似た余裕と頼もしさが増していくのだ。

AMG

ちなみに今回同時に日本で発売を開始したAMG G63には、585ps/850Nmを発揮するAMG製4.0L V8ツインターボが9ATと組み合わされる。加速のマナーはドライバーのアクセル操作に忠実かつ正確に反応するといった感じだが、トルクの厚みにはベースモデルとは大きく異なる“張り”と“鋭さ”が一層加わり、エキゾースト音も吠えるという表現をしたくなる。


G550と同様、ドライブモードの選択が可能だが“コンフォート”モードでもステアリングフィールはやや重く、乗り心地も少々硬めだ。おかげでコーナリングの身のこなしは、ステアリングをニュートラル付近から切り始めたあたりからすでに“スッ”とノーズの向きを変える姿勢に変わり、よりフラットな安定感とともにコーナーを曲がる。が、車高の低いスポーツカーのそれとは違う点だけ申し上げておきたい。サスペンションはAMGライドコントロール スポーツサスペンション、AMG強化ブレーキを採用し、ボディ剛性感も走行安定性も格段に向上しており、よりダイナミックなドライブフィールとともに楽しめそうだ。

オフロード

そんなオンロード走行性能を新たに得た新型Gクラスだが、オフロード性能もさらに向上しているという。ふだんはなかなか走行機会のないシチュエーションだったが、試乗会では従来モデルとの比較ができた。

一番印象に残っているのは、コブがいくつも続くモーグルコースや岩場でハンドル操作を行なったときに、ステアリングに入る衝撃が極めて滑らかであったこと。それと同時に、目で見た状況を足元や腰に感覚として伝えてくれるものの、その当たりや突き上げ感は優しい。


相変わらず運転席からはボンネットの左右や鼻先を見渡せるのがいい。岩や木々など障害物の回避操作もしやすい。そんなシーンではドライブモードを“Gモード”に変更する。すると、低速ギヤになり、調整式ダンパーやステアリング、アクセル特製が専用モードへと切り替わるのだ。意図せず不要なシフトチェンジが行なわれることもなく、最適な制御のもと、悪路を走ることができたのは“Gモード”のおかげだ。このようなシーンでも快適性や操作性は向上していると感じた。


先進安全性能

従来のイメージはそのままに、より洗練と進化を遂げた新型Gクラスは、走行性能や快適性の向上はもちろん、先進の安全運転システム「レーダーセーフティパッケージ」も搭載される。大きなボディを扱うという点では“360°カメラシステム”や“アクティブパーキングアシスト”も心強い。加えてテレマティクスサービスの“メルセデスミー コネクト”も全モデル標準装備だ。

1979年から走り続け、見るからに“THE 4WD(ヨンク)”を露わに、しかしGクラス流の高級感を漂わせるこのモデル。まるで生地の風合い、仕上げ、細かな縫製やステッチにもこだわりが感じられるダメージジーンズのよう? ワイルドな中に精悍さとメルセデスが想うGクラス流の品と粋が絶妙なバランスで取り入れられている。それはスパイス系の香りのなかに甘さも含んだ香水のようだ。

最後に、ディーゼルエンジン搭載モデルは新型にラインアップされないため、従来モデルを併売することをお伝えしておく。

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